【メンタル不調を改善する食事法】医学博士が教える、鬱・落ち込みを撃退する「最強野菜」トップ3
うつ病などのメンタル不調で医療機関を受診している人の数は、増加傾向にあります。メンタル不調が脳と関係していることはすでに解明されていますが、根源的な原因は内臓にあることが明らかにされつつあります。そこで、メンタル不調の原因に迫りながら、内臓の健康を維持する食事法と最強野菜について医学博士の岩崎真宏さんに語っていただきました。
海外の論文で明らかに!メンタル不調を引き起こす新常識とは
――メンタル不調の原因は、ストレスと片づけられることが多いですが、最近になってどんなことがわかってきましたか?
「メンタル不調は脳の健康と関連していますが、実は肝疾患が脳に障害をもたらすこともわかってきました。どういうことかというと、アルコール性肝炎や非アルコール性肝炎、脂肪肝、肝硬変といった肝疾患がある人は、肝臓と脳をつなぐ迷走神経に炎症が生じます。すると脳神経も炎症を起こして中枢神経機能障害が起こるため、肝疾患が原因でメンタル不調を発症する可能性もあり得ると考えられます。また、2023年7月に発表された論文(※)では腸・肝・脳の関係に言及し、肝臓と腸内環境は密接な関係にあり腸内環境の乱れが肝疾患、さらには中枢神経の炎症を引き起こす可能性があると指摘しています」
※Frontiers in Neuroscience「Avenues within the gut-liver-brain axis linking chronic liver disease and symptoms」(https://doi.org/10.3389/fnins.2023.1171253)
――どのような研究によって、腸と肝臓の関係性が立証されたのでしょうか?
「興味深い研究の一つに、アルコール中毒と肝疾患の患者さんに、健康な人から採取した便を大腸に移植する糞便移植があります。移植後、アルコール中毒の患者さんは飲酒欲求が減り、認知能力も改善されたと報告されています。肝疾患の患者さんも病状が良くなり、腸内環境の改善が肝機能および脳機能の改善につながることがわかってきたのです。
メンタル不調の改善策として、マインドフルネスのようなメンタルコントロールが良いと言われていてそれは間違っていませんが、肝臓が健康な状態であれば効果があるというのが正しい見解と言えます。今後はメンタルコントロールに加えて、腸や肝臓が脳神経に与える悪影響を取り除くことに目を向けていく必要があります。腸・肝・脳の関係が明らかになったことはメンタル不調を抱える患者さんにとって救いであり、病気の改善に一歩前進したと言えます」
実は、メンタル不調と密接だった食事の「質」
――腸と肝臓がメンタル不調に関わっているなら、食事に気をつけることで内臓の健康を維持できそうですね。どのような食事を心がけるべきですか?
「食事内容の質と精神医学的障害リスクの関係を調査した研究があり、質の高い食事をしている人ほどうつなどのメンタル不調の発症リスクが下がることがわかっています。質の高い食事とは、脂肪のなかでも特に飽和脂肪の摂取量が少なく、食物繊維、様々なビタミンやミネラル、果物、魚、野菜、全粒穀物製品などの摂取量が多い、地中海食に近い食事です。一方、発症リスクを高める質の低い食事とは、おかずが肉中心で様々な野菜や果物を食べられていない、魚の摂取量が少ない、主食がパンや麺類。そして菓子類、揚げ物、加工肉、パイ、精製穀類、高脂肪乳製品などの加工食品や、化学調味料と食品添加物を含む食品が多いことも当てはまります。これらを踏まえると、和食は食事内容として最適ではないかと思っています」
――肝臓にピンポイントでダメージを与えるとわかっていて、控えたいのはどんなものですか?
「まず、肝臓にダメージが生じる要因はおもに4つあります。一つ目は血液中にある酸化物質が中枢神経に悪影響を及ぼす、二つ目は酸化物質など中枢神経に害を与える成分が神経細胞に蓄積する。さらに、炎症性物質が血液中に多く存在する、肝臓の解毒作用などが低下するという点です。このような状態は、アルコール、添加物、果糖が多い食事や、サプリメントの乱用によって生じる可能性が高く、脂や糖質の摂り過ぎも要注意です。
サプリメントの正しい用法を知らない人は多く、本来サプリメントは単体で飲むものであり、数種類を一緒に飲むことを前提に作られていません。数種類を一度に飲むのは乱用にあたり副作用が出る可能性があるので、使用するなら1日1種類に抑えましょう」
――メンタル不調のリスクを下げる「質の良い食事」には、果物も含まれています。一方で果物には肝臓の炎症を引き起こす果糖が含まれますが、食べる量に気をつける必要があるということですか?
「そうですね。果物でフィトケミカルの機能性を獲得するにはたくさん食べる必要があり、そうなると糖質が気になって摂取量に限界が生じます。果物が体にいいと言われるのは、ジュースやお菓子に比べると糖質量が少ないためです。お菓子を食べるより天然の糖である果物を食べるほうがいいという意味で摂取が推奨されていますが、食べ過ぎはNGです」
肝臓を守る栄養が豊富「メンタル不調のリスクを下げる野菜トップ3」
「うつ病発症リスクと野菜摂取量を調べる研究で、野菜の摂取量が多いほど発症を抑えられることが立証されました。しかし、別の研究では一種類の野菜だけだと結果にバラツキが見られ、”様々な野菜”を食べることで効果が明確になるとわかっています。次に紹介する野菜を中心に、幅広い種類の野菜を食べるように心がけてください」
1位 紫ニンジン
紫ニンジンに含まれるアントシアニンは肝臓の炎症を抑え、血液中の炎症性物質も減らす働きがあります。天然の植物色素であるアントシアニンはナスにも含まれていますが、皮の部分に限定されます。芯まで紫色をした紫ニンジンは、アントシアニンの宝庫と言える野菜の一つ。蒸して柔らかくすると食べやすく、レンジではなく蒸気を使って蒸すと旨味が増します。
2位 赤ピーマン
抗酸化作用のあるビタミンCの含有量が、野菜の中でナンバー1。野菜スティックにして生のまま食べたり、パウダー状のものは肉料理やパスタにかけたりして幅広く使えます。赤ピーマンが手に入らなければ赤パプリカでもOK。ちなみにピーマンは本来、赤色です。未熟な緑の状態で出荷されているので緑のイメージですが、完熟で栄養満点まで育ったら赤色なので、見つけたら“買い”です。
3位 トマト
リコピンをはじめ肝臓を保護する成分や、炎症を抑える成分が豊富。お酒のつまみとして食べれば、アルコールによる肝臓の炎症を防ぐ作用が認められていて、トマトジュースでも同様の働きが期待できます。生で食べるのもいいですが、油と組み合わせると栄養の吸収率が高まり、カプレーゼのように脂質を含む乳製品と一緒に食べるのもおすすめ。
お酒を飲んだ翌日は、野菜を食べて肝臓を集中ケア
――毎日野菜を食べるのが理想的ですが、外食などでは十分に摂れないときもあります。その場合はどうすればいいですか?
「確かにそうですね。抗酸化作用や抗炎症作用のあるトップ3の野菜を毎日食べるのがベストですが、難しい人は多いと思います。その場合、お酒を飲むなど肝臓に負担をかけた際、翌日に肝臓の保護・修復を目的に野菜を積極的に食べるようにしましょう。ただし、健康診断で肝機能の低下が明らかな人は、なるべく毎日野菜を食べることをおすすめします。血液検査のALT、γ-GTPという項目に注目し、検査結果が基準値より高ければ野菜を食べることが改善につながり、問題がない人は予防策として野菜中心の食事を無理のない範囲で心がけてください」
教えてくれたのは…岩崎真宏さん
医学博士、管理栄養士。病院で管理栄養士として働き、食事を変えると治療薬の効果が上がることを実証。その後、医学的根拠のある栄養学を実践するために独立。運動指導者、医療スタッフ、保育士、介護士、アスリートなどを対象にヘルスケア人材の育成と雇用創出、コンテンツ開発を行う教育事業を開始し、病気になってからではなく、健康なうちから使いこなせる栄養学を発信している。2017年には一般社団法人日本栄養コンシェルジュ協会を設立し代表理事に就任。栄養学からみた野菜の健康価値と野菜不足の社会課題のギャップ、廃棄野菜などの農業課題を解決するため、ヘルスケアと農業の循環型事業に取り組むベジタブルテック株式会社を創業。近著『野菜は最強のインベストメントである』(フローラル出版)も話題。
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ヨガジャーナルオンライン編集部
ストレスフルな現代人に「ヨガ的な解決」を提案するライフスタイル&ニュースメディア。"心地よい"自己や他者、社会とつながることをヨガの本質と捉え、自分らしさを見つけるための心身メンテナンスなどウェルビーイングを実現するための情報を発信。
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