【心疾患のリスクを減らす食事法】医学博士が教える、血管の老化を防ぐ「最強野菜」トップ3
がんに次いで死亡率が高いのが心疾患。発症は日々の食事が影響しますが、ある野菜には発症リスクを下げる効果があるそうです。著書の『野菜は最強のインベストメントである』(フローラル出版)のなかで「野菜を食べることは体にとって最強の投資」と謳う、医学博士の岩崎真宏さんに詳しくうかがいました。
「悪玉コレステロール」と「血栓」は心疾患の大敵
――心疾患で亡くなる人の数は、年間20万人を超えています。他人事とは言えなくなってきていますが、発症原因について教えてください。
「心疾患は心臓に生じる病気の総称で、心筋梗塞、狭心症、心臓弁膜症などさまざま疾患があります。これらの疾患は心臓に血液が行かなくなることで発症し、血液循環が滞る背景には二つの原因があります。一つは、血液中のコレステロールが増加してプラーク(コレステロールの塊)ができて血管が狭窄・閉塞し、心臓に十分な血液を送れなくなる状態が考えられます。
コレステロールのなかでも心疾患に起因するのが、悪玉と呼ばれるLDLコレステロールです。最近になって、超悪玉コレステロールと呼ばれる小型タイプのコレステロールも心血管系疾患のリスク因子であることがわかってきました。LDLコレステロール値は正常でも、超悪玉コレステロールが増えることがあり、その場合、血管に炎症を起こしやすく心血管疾患の有病率が上昇するので注意が必要です。
もう一つは、血液の塊である血栓が原因で血管が詰まってしまうケースです。血液の凝固は子供でも起きる現象ですが、人の体には固まった血液を溶かす線溶という能力が備わっていて、血液の凝固と線溶のバランスが取れていれば血栓はできにくい。ですが、線溶の能力は加齢によって衰え、年齢を重ねるほど血栓ができやすくなります。食事で予防するには、血液の凝固を抑えて線溶を促す食品の摂取を推奨します。特におすすめなのが、カベルネ・ソーヴィニヨンという品種のブドウです。ほかには、紫色の食品に含まれるアントシアニン、玉ネギに含まれるケルセチンも血栓を防ぐ働きがあります」
コレステロールの調整役、「肝臓」にダメージを与える食事とは?
――悪玉コレステロールの増加は、食生活と深く関係していると聞きます。増やさないために食べ過ぎに注意したい食べ物とは?
「イカ、タコ、貝類、魚卵、ホルモン、カニなどは、食べ過ぎるとコレステロール値が上昇しやすいので注意しましょう。コレステロールは肝臓でも作られていますが、コレステロールが高い食事をした場合、肝臓で作る量を減らしてバランスを取っています。しかし、加齢で肝機能が衰えてコレステロールの調整能力が下がると、食事で多めに摂取したコレステロールに肝臓で作られたコレステロールが上乗せされて数値が上昇。その結果、心疾患を発症しやすくなります」
心疾患を食事で予防!「血管の老化を防ぐ野菜トップ3」
―― 著書のなかで、野菜不足は血管リスクを増加させると書かれています。では、どんな野菜を食べれば血管リスクを下げられますか?岩崎さんが選ぶ、野菜トップ3を教えてください。
「紫の色素成分であるアントシアニンを含む、紫人参と赤シソ、そしてブロッコリースプラウトは心疾患予防の最強食材と言えます。アントシアニンは肝臓や血管などの抗酸化作用に優れ、心疾患の予防効果が高いという論文が数多く発表されています。ブロッコリースプラウトは、血管の内皮機能を高める効果が期待できる食品です」
1位 紫人参
アントシアニンの含有量はトップクラス。悪玉コレステロールを抑え、コレステロール量を調整する肝機能を高める働きが実証されています。アントシアニンは水に溶けやすいので、蒸し料理などがおすすめ。
2位 赤シソ
アントシアニンに加えて、ポリフェノールの一種であるロスマリン酸が豊富。強力な抗酸化作用があり、血管の老化防止に効果を発揮します。薬味はもちろん、刻んで生春巻きの具材として使えば生のままたくさん食べられます。
3位 ブロッコリースプラウト
ブロッコリースプラウトはブロッコリーの新芽のこと。フィトケミカルの一種で抗酸化物質のスルフォラファンを豊富に含み、血管の健康維持に必要な血管内皮細胞の機能を維持します。鶏のささみと一緒にサラダにすればヘルシーでありながら食べ応えも十分。
血管の老化スピードを遅らせるには、食生活の見直しを
――野菜を食べること以外に、血管の老化を防ぐなど心疾患のリスクを減らす食事のポイントはありますか?してはいけないこと、気をつけることを教えてください。
飽和脂肪酸を減らす
「肉の脂質に含まれる飽和脂肪酸の摂り過ぎが、血管内皮を傷つけるのは明らかです。しかし、飽和脂肪酸は肉だけでなく植物油にも含まれています。飽和脂肪酸の摂取量を減らすには、油を動物性から植物性または魚類性に変えて、なおかつ摂り過ぎないことが大事。ナッツの油は体にいい印象がありますが、食べる量が多いと飽和脂肪酸の摂取過多になるので注意しましょう」
加工肉を減らす
「ハム、ソーセージ、魚肉ソーセージ、ナゲットなどの加工肉は、脂質が多く加工の過程で酸化が進んでいます。血管の炎症を引き起こすリスクがあるので、食べ過ぎないようにしましょう。食品を加工レベルでわけた『NOVA』という食品分類法によると、最も加工の程度が高い超加工食品に該当する炭酸飲料、スナック菓子、大量生産されたパン、ケーキ、クッキー、加工肉、インスタント麺などは、血管の炎症や内臓への負担が大きいと言われています」
アルコールの分解力を高める
「アルコールの飲みすぎは血管にダメージを与えます。飲むなら週に1回に抑えるのが理想的。それが難しければ、飲む前にトマトやウコンを食べるとアルコールの分解が促進されて、肝臓の炎症を抑える効果が実証されています。また、アルコールは体内で2段階にわけて分解され、最終的な分解を担うミトコンドリアの数が多いと体への害が少なくて済みます。その数を増やす効果が証明されているのは、玉ネギに含まれるケルセチンです。アルコールを飲む前に一時的に玉ネギを食べるのではなく、習慣的に献立に取り入れるのがポイントです」
飲んだ後は水分を補給
「お酒を飲むと体は脱水症状を起こしやすく、脱水は心疾患のリスクを高めます。飲んだ日の夜は最も脱水状態になりやすいので、就寝前と夜中に目が覚めたときも水分を補給しましょう。また、飲酒の有無に関わらず朝は心筋梗塞の発症率が高まるので、起床時も水分を取り、朝に体を動かす習慣がある人は運動前に水を飲むようにしてください」
4カ月以上の糖質制限をしない
「食事をして体に糖が取り込まれると、インスリンというホルモンが分泌されます。インスリンには血管をストレッチさせる役割があり、食事のたびに血管の柔軟性が保たれます。しかし、糖質を著しく減らす食生活をしていると血管が硬くなり、その生活を4カ月以上続けると心筋梗塞の発症率が高まると言われています」
教えてくれたのは…岩崎真宏さん
医学博士、管理栄養士。病院で管理栄養士として働き、食事を変えると治療薬の効果が上がることを実証。その後、医学的根拠のある栄養学を実践するために独立。運動指導者、医療スタッフ、保育士、介護士、アスリートなどを対象にヘルスケア人材の育成と雇用創出、コンテンツ開発を行う教育事業を開始し、病気になってからではなく、健康なうちから使いこなせる栄養学を発信している。2017年には一般社団法人日本栄養コンシェルジュ協会を設立し代表理事に就任。栄養学からみた野菜の健康価値と野菜不足の社会課題のギャップ、廃棄野菜などの農業課題を解決するため、ヘルスケアと農業の循環型事業に取り組むベジタブルテック株式会社を創業。近著『野菜は最強のインベストメントである』(フローラル出版)も話題。
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ヨガジャーナルオンライン編集部
ストレスフルな現代人に「ヨガ的な解決」を提案するライフスタイル&ニュースメディア。"心地よい"自己や他者、社会とつながることをヨガの本質と捉え、自分らしさを見つけるための心身メンテナンスなどウェルビーイングを実現するための情報を発信。
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