【認知症のリスクを減らす食事法】医学博士が伝授、脳へのダメージを予防する「最強野菜」トップ3

 【認知症のリスクを減らす食事法】医学博士が伝授、脳へのダメージを予防する「最強野菜」トップ3
AdobeStock

人生100年時代を迎えた今、認知症は老後の最大の不安と言っても過言ではありません。しかし、怖がるだけでいいのでしょうか。認知症の研究が進むなか、日々の食事で発症リスクを下げられることがわかってきています。そこで、認知症予防に効果的な食事法や、脳の老化を防ぐ最強野菜について医学博士の岩崎真宏さんにうかがいました。

広告

高血圧や肥満も、アルツハイマー型認知症のリスク要因に

――年齢が上がるにつれて認知症の発症リスクも上昇しますが、認知症は何が原因で発症するのでしょうか?

「認知症のなかで最も多いのが、おもに認知能力や記憶力、思考能力や情報処理能力などが低下するアルツハイマー型認知症で、2030年には65歳以上の高齢者のうち約12%が発症すると言われています。原因は、認知や随意運動などを司る大脳皮質と、記憶を司る海馬の脳神経細胞内にβアミロイドというタンパク質が蓄積し、長い時間をかけて脳神経細胞が死滅することで発症します。

生涯にわたり認知症を予防するためにβアミロイドの蓄積について調査し、2020年に発表された論文によれば、6歳から30歳までの間に6年~15年以上教育を受けていると将来的にβアミロイドの蓄積が少なく、認知症の発症リスクが下がるとわかりました。つまり、若いときにしっかり頭を使うのが重要なのです。また、ビタミンC、適度な減量、身体活動、健康的な食生活、認知活動もリスク低下につながります。脳神経細胞に蓄積されるβアミロイドは酸化物質であり、細胞が酸化すると炎症が引き起こされて最終的に細胞が死滅しますが、これらの要素には抗酸化作用があり炎症予防に効果があると考えられています。

50歳を超えるとリスク因子が増加し、そのなかで最も注意が必要な脳微小出血は、主に高血圧性細動脈症により、高血圧が原因で細い血管に負荷がかかってしまい、微小な出血が起こります。高血圧は血圧測定でひっかかるような慢性的な高血圧症だけでなく、質が悪い食事、免疫反応、ストレスや不眠など、さまざまな原因で高血圧状態になり、それらの蓄積によっても脳の微小出血の原因となってしまいます。ほかには睡眠障害、うつ、心血管疾患、糖尿病、肥満、脳卒中、喫煙、高血圧などもリスク要因になり得ます。糖尿病に関しては、高血糖になると血管に炎症が生じ、脳卒中や喫煙も同様ですが、脳の血管にも負荷がかかり認知症の発症リスクを高めます」

アルツハイマー型認知症を食事で予防。認知症と食事の関係とは

――岩崎先生は、食事で認知症を予防・改善できるという見解をお持ちですが、アルツハイマー型認知症にならないためには、どんな食事を心がけるべきですか?

「まず、野菜、果物、全粒穀物類、魚、鶏肉などを中心とした地中海食は優れた予防・改善効果があると言われています。野菜や果物に含まれるポリフェノールのようなフィトケミカルを摂取し、抗酸化作用を高めることは血管や脳神経細胞の保護につながります。ほかには人工甘味料、飽和脂肪酸、塩を減らすDASH食、地中海食とDASH食を組み合わせたMIND食。そしてベジタリアン、ヴィーガン、ケトジェニックなどが可能性として考えられています。このような食事を続けると、脳神経細胞の炎症やインスリンが効きにくい状態が改善し、アルツハイマー型認知症の予防・改善が期待できます」

AdobeStock
AdobeStock

――逆に食べるのを控えたほうがいい、アルツハイマー型認知症の発症リスクを高める食事はありますか?

「塩分が高く、脂肪分が多い食事は、アルツハイマー型認知症の大敵です。また、アルコールや、超加工食品に分類される炭酸飲料、スナック菓子、大量生産されたパン、加工肉、ハンバーガー、インスタント食品なども控えるべきでしょう。飽和脂肪酸を含む動物性油脂が多い食事を控えたほうがいいのは明らかです」

認知症リスクの低下は立証済み!「脳のダメージを防ぐ野菜トップ3」

――野菜のなかでも、特にアルツハイマー型認知症の予防効果が高いトップ3を教えてください。

1位 ゴボウ

ゴボウに含まれるアルクチゲニンというフィトケミカルは、脳神経細胞の死滅を抑える作用があります。βアミロイドが蓄積した認知症モデルマウスにゴボウ成分を与えたところ、与えていないマウスと比べて脳神経細胞の死滅を約60%抑制したという研究結果が報告されています。ゴボウは硬くて食べにくいと感じるシニア世代は、すりおろしてハンバーグやカレーに入れると食べやすくなり、甘さと香ばしさが増して味わいもアップ。

AdobeStock
AdobeStock

2位 赤シソ

フィトケミカルのロスマリン酸は、記憶力を改善する効果が立証されています。脂肪分が少ない鶏肉に挟んで焼いたり、千切りにしてごはんに混ぜたり、天ぷらや赤シソジュースにしても美味。

AdobeStock
AdobeStock

3位 ビーツ

抗酸化作用の高いベタシアニンやビタミンCを含みます。特にNO(一酸化窒素)を豊富に含み、血管を守り血液循環を正常化し、脳の認知機能や作業認知能力を高める効果が認められています。ビーツは生のまま食べられるので、薄くスライスしてサラダに混ぜたりするとシャキシャキとした食感を楽しめます。また、鶏肉やサーモンと一緒にホイルに包んでオーブンで蒸し焼きにしても柔らかくなっておいしいです。ホイルにローズマリーを入れておくと香りも良くて食欲がそそられます。

AdobeStock
AdobeStock

認知症の予防効果を逃さないために、知っておきたい野菜の食べ方

――野菜に秘められた認知症の予防効果が、研究を通して明らかになっていることはわかりました。効果的な栄養素を余すところなく摂取する方法や、気をつけたい食べ方はありますか?

「脳神経細胞の酸化を防ぐ野菜類は、加熱するとビタミンCが壊れてしまうのでサラダなど非加熱で食べるのがおすすめです。一方、フィトケミカルは加熱しても破壊されにくいものが多いですが、ヘルシーにいただくには油を使わない蒸し料理がベターと言えます。サラダにかける市販のドレッシングには飽和脂肪酸や添加物が含まれているので、ポン酢やシークワーサー、レモンなどを使うとより健康的です。

塩分の摂り過ぎは血管にダメージを与え、アルツハイマー型認知症のリスク因子である高血圧を招くため、焼き魚に醤油をかけたり、濃い味つけが好きだったりする人は見直す必要があります。また、食後血糖値の上昇度合を示すGI値が高い食品は、脳への悪影響が懸念されます。物忘れが気になる人などは、食物繊維を含むGI値の低い食品を献立に取り入れるようにしましょう。主食であれば白米より玄米のほうが適していますが、白米を食べたいときもあるはず。その場合、白米の前に野菜を食べるベジタブルファーストを実践すれば血糖値の急上昇を抑えられます。ベジタブルファーストに関しては、人参など糖質の多い野菜を最初に食べても意味がないという説もありますが、野菜に含まれる糖質量はほかの食品に比べると極めて少ないため、どんな野菜でもベジタブルファーストに適しています」

――ライフスタイルが多様化し、朝食抜きや一日一食など食事の回数も人それぞれです。食事の回数は、認知症の予防効果に影響しますか?

「脳は寝ている間も含めて24時間働いているので、認知症予防にいいと言われる栄養素の影響を脳が受ける時間が長いほうが効果は高くなります。したがって、脳への影響を考えると食事は1日1回より、朝昼晩の3回にわけて摂るのが望ましいです。必要な栄養素を1日何グラム摂るという摂取量目安の考え方を改めて、1日のなかで栄養素を分散させて摂るように食事の回数を見直してみましょう」

書籍
『野菜は最強のインベストメントである』(フローラル出版)

教えてくれたのは…岩崎真宏さん

医学博士、管理栄養士。病院で管理栄養士として働き、食事を変えると治療薬の効果が上がることを実証。その後、医学的根拠のある栄養学を実践するために独立。運動指導者、医療スタッフ、保育士、介護士、アスリートなどを対象にヘルスケア人材の育成と雇用創出、コンテンツ開発を行う教育事業を開始し、病気になってからではなく、健康なうちから使いこなせる栄養学を発信している。2017年には一般社団法人日本栄養コンシェルジュ協会を設立し代表理事に就任。栄養学からみた野菜の健康価値と野菜不足の社会課題のギャップ、廃棄野菜などの農業課題を解決するため、ヘルスケアと農業の循環型事業に取り組むベジタブルテック株式会社を創業。近著『野菜は最強のインベストメントである』(フローラル出版)も話題。

広告

取材・文/北林あい

AUTHOR

ヨガジャーナルオンライン編集部

ヨガジャーナルオンライン編集部

ストレスフルな現代人に「ヨガ的な解決」を提案するライフスタイル&ニュースメディア。"心地よい"自己や他者、社会とつながることをヨガの本質と捉え、自分らしさを見つけるための心身メンテナンスなどウェルビーイングを実現するための情報を発信。



RELATED関連記事

Galleryこの記事の画像/動画一覧

AdobeStock
AdobeStock
AdobeStock
AdobeStock
書籍