疲れやすい40代女性に知って欲しい。毎日を支える“はちみつ”の秘密【管理栄養士レポ】

疲れやすい40代女性に知って欲しい。毎日を支える“はちみつ”の秘密【管理栄養士レポ】
石松佑梨
石松佑梨
2025-09-04

はちみつは糖質を中心とした速やかなエネルギー源であり、必須アミノ酸やビタミン、ミネラル、天然オリゴ糖も含む優れた食品です。薬膳でも便通改善や体調サポートに古くから用いられ、特に40代以降の女性の元気を支えます。ただし、その力を得るには選び方が重要です。ミツバチが巣房に蜜を蓄える過程で、ブドウ糖と果糖に分解され、栄養価と保存性を備えた食品へと変わるのです。今回は日本で唯一「有機はちみつ認証」を取得した〈松本養蜂総本場〉を訪ね、五代目蜂場主・松本高明さんにその秘密を伺いました。

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国産で唯一の有機はちみつ

国産で唯一の唯一の有機はちみつ

会津若松で昭和16年に創業した「松本養蜂総本場」は、令和3年12月に創業80周年を迎えました。ここで生まれるはちみつは、日本でただ一つ、JONA(日本オーガニック&ナチュラルフーズ協会)による有機認証を取得しています。

認証には以下の厳しい条件があります:

  • 巣箱から半径4km圏内に農薬や化学肥料を使った田畑が一切ない蜜源から採取
  • 有機認証基準に従って飼育したミツバチと蜂産資材の使用
  • 365日間通して有機認証基準に従って生産・管理

日本でこれらを満たせる環境は限られており、奥会津の手つかずの豊かな森があるからこそ実現できるはちみつです。ブナ、栃(トチ)、山桜、クリなど多様な木々が混在し、季節ごとに花が咲きます。ミツバチを長距離移動せずシーズンを通して採蜜できるのも、この土地ならではの恵みです。

花の蜜がはちみつになるまで

ハチミツ

「はちみつは花の蜜そのまま」__そんなイメージは実は誤解。

ミツバチは花の蜜に体内酵素を作用させることではちみつを作ります。このプロセスにより、保存性も高まり、人間の手では製造できない食品になります。

つまり、はちみつはミツバチがいて初めて成り立つ自然の恵みです。

ミツバチにとってはちみつは冬を越すための備蓄食料。水分を飛ばすために羽をせわしく動かし、濃縮した蜜を蜜蝋で封じ込めて保存します。この過程で、自然が作る究極の保存食が完成します。

ただし市販品には、水分調整のために加熱処理され、酵素や一部の栄養素が失われたものがあります。そのため、本来の風味や栄養を楽しむには「不適切な加熱処理がされておらず、適切な環境で管理・保管されたはちみつ」を選ぶことが望ましいとされています。

花の蜜にはないはちみつの特長

ハチミツ

はちみつは花の蜜とは異なる成分や働きを持ち、強い殺菌作用があるため、喉の不快感や風邪の引き始めを穏やかにサポートすることが期待できます。

また、ミツバチの酵素によってショ糖がブドウ糖や果糖に分解されるため、消化の負担が軽くなり、効率的にエネルギーとして利用できると考えられます。花粉由来のタンパク質もアミノ酸に変換されることで、消化吸収がスムーズになり、日常のエネルギー補給に取り入れやすい食品です。

さらに、はちみつには腸内環境を整える働きが期待され、便秘や肌の不調のサポートにもつながると考えられます。

はちみつの味は花によって変わる

花のみつ

「はちみつはどれも同じ」と思われがちですが、味わいは大きく異なります。

百花蜜(ひゃっかみつ)は、その名の通り、季節や環境によって咲くさまざまな花の蜜が混ざり合ったはちみつで、味や香りに幅広い奥行きがあるのが特徴です。

一方、単花蜜(たんかみつ)は、特定の花から集められた蜜で、花ごとの個性や風味をはっきりと楽しむことができます。

松本養蜂総本場が力を入れているのは、この「単花蜜」シリーズ。たとえば

  • はりえんじゅ(ニセアカシア):上品でクセがなく、お料理やドリンク等幅広い用途に

  • ぼだいじゅ(シナノキ):ハーブの香りが広がり、乳製品との相性抜群
  • 栃の花:濃厚でコクのある味わい。トーストや肉料理の照り出しに

同じ「はちみつ」でも、花によってこれほど違いがあると知ると、テイスティングの楽しみ方が広がります。

さらに、ソバの花のはちみつは黒蜜のようなコクがあり、鉄分を多く含むため色も黒め。「貧血気味の人が、ソバの花のはちみつを美味しいと言っている場面をよく見る」という松本さんの言葉も印象的でした。体が自然と必要な栄養を選んでいるのかもしれませんね。

取材を終えて|管理栄養士 石松佑梨の視点

自然を守る

はちみつは、人がつくり出すものではなく、ミツバチが小さな体で花を巡り、一滴一滴を集めて熟成させて生まれるもの。今回の取材を通して、その尊さとかけがえのなさを改めて感じました。

自然界からの贈り物であるはちみつは、40代以降の女性にとってまさに心強い味方です。薬膳でも古くから用いられ、胃腸を整えたり、疲労感や食欲不振を和らげたり、乾いた咳や便秘のケアに役立つと伝えられてきました。

近ごろは「どんなはちみつを選べばいいの?」と尋ねられることも増えています。実際、市販されているものは産地も製法もさまざまで、不適切な加熱処理がされているかどうかで風味や栄養は大きく変わります。だからこそ、生産者の声を直接聞きたいと思い、この取材に臨みました。

現場で出会ったのは、働き者のミツバチたち。花粉を運び、私たちの食卓を支えてくれる存在です。「もしミツバチがいなくなったら、人間も3年で…」というアインシュタインの言葉があるとか、ないとか──。真偽はさておき、それほどまでにミツバチは食物生産に不可欠な存在であることを実感しました。

松本養蜂総本場の松本さんは「森を守ることが養蜂を守ることにつながる」と語り、環境保全にも力を注いでいます。自然を守ることが、めぐりめぐって私たちの健康につながる。その循環を現場で体感できたのは、管理栄養士としても貴重な経験でした。

毎日の習慣に、スプーン1杯のはちみつを。自然からのやさしいケアとして、日々を支える力になってくれるはずです。

取材協力:松本養蜂総本場

ハチミツレストラン
「Boutique del miele」(ブティック・デルミエーレ)は、テイスティングを楽しみながらお好みの一本を選べるはちみつ専門店。「ビーガーデン」には、上溝桜や、栃、菩提樹(ぼだいじゅ)などの蜜源樹が立ち並び、ビーウォッチング(巣箱観察体験)も可能(要事前予約)。併設されたカフェレストラン 「b Kitchen」(ビーキッチン)では、はちみつを使ったランチやデザートも楽しめます。
 

住所:福島県会津若松市柳原町4-10-47
TEL:0242-26-1823
公式HP:https://www.buna-ki.co.jp

参考文献

  1. Mandal, M.D., Mandal, S. (2011). Honey: its medicinal property and antibacterial activity. Asian Pacific Journal of Tropical Biomedicine, 1(2), 154–160. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3609166
  2. Cianciosi, D., et al. (2024). Honey as a Source of Bioactive Compounds: Physiological Effects, Recent Advances, and Future Perspectives. Foods, 13(9), 1344. https://www.mdpi.com/2304-8158/13/9/1344
  3. Health.com Editors. (2023). The Health Benefits of Honey. Health.com. https://www.health.com/food/health-benefits-honey
  4. Kuś, P.M., et al. (2018). Mineral content of honey: Influence of different types of soil and plant origin. Food Chemistry, 241, 163–170. https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0308814618301304
  5. Bobiş, O., et al. (2018). Fagopyrum spp. honeys – A comprehensive review. Molecules, 23(8), 1877. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6208848
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