その食べ方、整ってる? 老舗豆冨屋が教える夏の食養生|豆腐屋だから知っている最強夏やっことは

その食べ方、整ってる? 老舗豆冨屋が教える夏の食養生|豆腐屋だから知っている最強夏やっことは
石松佑梨
石松佑梨
2025-07-12

冷房と外気の寒暖差で、自律神経が乱れがちな夏。 「疲れやすい」「寝つけない」「食欲がない」……。そんな不調をやさしく整えるのが、実は〝豆冨〟なんです。 糖質過多になりがちな夏こそ、低糖質・高たんぱくの豆冨で「整う食卓」を。 今回は、どうしても7月に届けたかったこのテーマで、福島県棚倉町の老舗豆冨店「叶や豆冨 大椙食品」さんを取材。 〝豆冨は世界の健康食〟という想いをもとに、夏にぴったりな「最強のやっこ」と意外と知られていない〝豆冨が一番美味しい瞬間〟を教えていただきました。

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※本記事では、叶や豆冨 大椙食品さんの表記に合わせて「豆腐」を「豆冨(冨=豊かさや繁栄を意味する)」と記載しています。

明治34年創業、棚倉町の老舗豆冨店

大椙食品

叶や豆冨 大椙食品(かのうや おおすぎしょくひん)は、1901年(明治34年)、福島県棚倉町にて初代・大椙長次さんが桶売りの豆冨屋を始めたことから、その歴史をスタートさせました。

棚倉町は、江戸時代には城下町として栄えた地域。八溝山系と阿武隈山系に囲まれ、清流が流れる自然豊かな土地です。創業当時から変わらず、豆冨作りには地下から汲み上げた天然水を使用。この水が大豆の旨みを引き出し、味わい深い豆冨を生み出しています。

「豆冨は世界の健康食」を掲げ、百十余年にわたり技と心を受け継いできた同店。業界全体が機械化を進めるなかでも、木綿豆冨の水抜きに専用の重石を使うなど、多くの工程を今なお手作業で行っています。「おいしくなるための手間ひまは惜しまない」——そんな真摯な姿勢が、味わいの違いを生み出しています。

現在、家業を継ぐのは五代目・大椙 広さん。伝統を守りながらも、現代のニーズに応える商品づくりや発信に取り組み、豆冨の魅力を広げています。地元にとどまらず、全国にファンを持つようになりました。

2017年には、棚倉町が舞台の映画『豆腐の角に頭ぶつけて生きる ~#TANAGURA~』が公開されました。映画を通じて町の魅力が発信され、地域との連携も続いています。

「生豆冨」を日常に──まちの豆冨屋の特別な体験を

生豆腐

叶や豆冨 大椙食品の豆冨は、一般流通の豆腐とはひと味違います。最大の特長は、「加熱処理をしない〝生豆冨〟であること」。五代目・大椙広さんは、こう語ってくれました。

「通常、市販の豆腐は、70℃で40〜50分ほど加熱処理をすることで日持ちをよくしています。これは、廃棄を減らし、広域流通を可能にする合理的な方法でもあります。でも、加熱処理をすることで、どうしても豆冨本来の甘さや風味が損なわれてしまう。うちは、その甘みやできたてのなめらかさを何より大切にしたいので、あえて加熱をせず、賞味期限が短くても〝生〟のままで提供しています」

この「生豆冨」、食べてみると、確かに違いは歴然です。まるで豆乳をそのまま固めたような、やさしく上品な甘みととろける舌ざわり。冷ややっこというより〝なめらか豆冨〟と呼びたくなるような、やさしい口当たりでした。

「『賞味期限が短い』ということは、裏を返せば『常にできたての甘くて美味しい豆冨が味わえる』ということでもあります。

もともと、まちの豆冨屋でその日に作られた豆冨を、その日に食べる──そんな昔ながらの暮らしに根ざした贅沢。

この感動は、本来どのまちにもあった〝日常〟のひとつ。あなたのまちにも、きっとそんな豆冨屋があるはずです。できたての味を、ぜひ体験してみてください」

また、見学中に広さんのお母さまがふと話してくださったひと言が、心に残っています。

「棚倉町でも、今では豆冨屋はここだけになってしまったんです。昔はもっとたくさんあったんだけど……。跡継ぎの問題でね」

豆冨屋が特別な存在になってしまった今、町に1軒でも続いてくれていることが、どれだけ尊いか。

東京に住んでいた頃、近所にあった豆冨屋さんをもっと活用していれば……という後悔とともに、「今すぐ、生豆冨を買いに行きたい」と心から思わせてくれる味と空気が、そこにはありました。

豆冨屋だけが知る、朝3時のごちそう──「夜明け豆冨」の感動を広げたい

早朝豆腐

冷奴に醤油とねぎ——。ついワンパターンになりがちな豆冨の食べ方について、広さんに聞きました。

朝の3時から豆冨を作っているので、私たちは毎朝できたてを味わっていますが、これが本当においしい! やわらかく、ほんのり温かい豆冨を毎日食べられるのは、豆冨屋の特権です。ほんのり人肌程度に温かい状態の豆冨は、大豆の甘みと旨味が際立ちます。消化もよく、体にもやさしいんですよ」

「個人的には、塩だけで食べるのが一番好きです。子どもたちには、麺つゆと天かす、ねぎをかけたものが大人気。おいしいので、よく食べてくれます」

人の舌は30〜37℃の間で味覚が最も敏感になります。冷たすぎても熱すぎても、味覚の感度が落ちる傾向にあります。体温に近い40℃前後は、豆冨の甘みや旨味を最も感じやすい温度帯。これは科学的にも〝おいしい温度〟とされており、体にすっとなじむ感覚も納得です。

「できたて豆冨のおいしさを、もっと多くの人に届けたい」

そんな想いから誕生したのが「夜明け豆冨」です。

「早朝に行うワークショップでは、湯気立つ豆冨をその場で味わってもらっています。朝、かなり早い時間ですよ〜! でも、五感で味わう体験は格別です」

今後は、キッチンカーでの移動販売も視野に。イベントなどでも〝できたての感動〟を届けたいと構想が進んでいます。

自宅でも再現できる!人肌温の「できたて豆冨」

できたて人肌豆豆冨

「湯豆腐のように熱すぎず、〝できたての人肌温〟を目指すのがコツ。電子レンジや湯せんで、そっと温めてください」

ほんのり温めた寄せ豆冨は、冷たいものとはまるで別物。とろけるような食感とやさしい甘みが引き立ち、夏の整えごはんにもぴったりです。

電子レンジで温める方法

電子レンジで作る人肌豆腐

【用意するもの】

  • 寄せ豆腐(1パック、または適量)
  • 耐熱容器
  • ラップ(ふんわりかける)

【加熱の目安】※様子を見ながら、少しずつ加熱してください。

  •  少量(約100g):500W → 約10〜15秒 / 600W → 約8〜12秒
  •  1パック(約300g):500W → 約20〜30秒 / 600W → 約15〜25秒

 

管理栄養士・石松佑梨の【取材メモ】

叶やさんのアイス

暑さで冷たいものに手が伸びがちな夏。

そうめんやアイス、冷たいドリンクばかりだと、体が冷えて自律神経が乱れやすくなります。さらに、糖質過多やたんぱく質不足も夏バテを引き起こす原因に。

そんなときに取り入れたい〝整いめし〟が、「人肌に温めた豆冨」です。

大豆の栄養がぎゅっと詰まった豆冨は、高たんぱく・低糖質。喉ごしがよく、火を使わずに手軽に食べられる、まさに夏向きの食材です。

植物性でありながら、動物性に匹敵する栄養価をもち、アミノ酸バランスも優秀。脂質は控えめで、胃腸が弱りがちな季節にもやさしく寄り添ってくれます。

さらに、オリゴ糖による整腸作用や、にがりとの相乗効果で〝腸活〟にもぴったり。

「人肌豆冨」を習慣に、夏のコンディションを内側から整えてみませんか?

 

お話を伺ったのは…叶や豆冨 大椙食品(かのうやどうふ おおすぎしょくひん)

個人的にこちらの「青豆寄せ豆冨」の大ファンです。

福島県産の青大豆と、山形県産の秘伝大豆を、瀬戸内海の本にがりで寄せた逸品。鮮やかな緑色と、驚くほど濃厚な甘みが特徴です。平成28年8月に開催された「第2回全国豆腐品評会 東北大会」では、全出品商品の中で最高得点を獲得し、最優秀賞(東北1位)にも輝きました。塩をひとふりするだけで、甘みと香りがぐっと引き立ちます。

棚倉町の店舗では、市販されていない限定商品にも出会えます。例えば「おやさいがんも」は、ねぎやきくらげなどがざくざく入った大判サイズのがんもどき。自宅でオーブン焼きにし、大根おろしとともにいただいたら絶品でした。良質なたんぱく質と野菜の組み合わせは、まさに〝整えるおかず〟。

「近所にあったら、毎日でも通いたい」——そう思わせてくれるお豆冨屋さんです。こだわりの生豆冨は、通販でも購入できます。

住所 福島県東白川郡棚倉町大字棚倉字鉄炮町16番
TEL 0247-33-3403

インスタグラム: @oosugisyokuhin
公式ホームページ: https://oosugisyokuhin.com/

 

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※ウェルビーイングとは、1948年にWHO憲章により「病気でないことや虚弱でないことにとどまらず、身体的・精神的・社会的にすべてが満たされた状態」と定義されています。

〝心身の健康〟と〝ウェルビーイング〟が並んで語られる今、どちらも揃ってはじめて「真の健康」と言えるのかもしれません。

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