「生理用品が原因で脚を失って」黄金の脚を持つモデル、ローレン・ワッサーが女性たちに伝えたいこと

 「生理用品が原因で脚を失って」黄金の脚を持つモデル、ローレン・ワッサーが女性たちに伝えたいこと
Getty Images
長坂陽子
長坂陽子
2022-11-22

ゴールドに輝く脚を持つトップモデルで活動家のローレン・ワッサー。「ピレリ」のカレンダーでジャンヌ・ダルクに扮し注目を集めている。

広告

「生理用品」が原因で両脚を失ったモデル

2012年、24歳のとき生理中にタンポンが原因でトキシックショック症候群を起こしたモデルのローレン・ワッサー。トキシックショック症候群とは黄色ブドウ球菌による感染症。男性でも女性でもかかる可能性がある。黄色ブドウ球菌は約20%の人が保持していると言われ、これを持っているから必ずしも感染症にかかることはないが、女性の場合タンポンを使ったとき腟内から感染する危険性がある。ローレンもタンポンを長時間換えなかったわけではないのに感染症を引き起こした。その結果、両脚が壊死。右脚を切断し、2017年には左脚を切断した。

一時期は生きる希望を失ったと語っているローレン。しかしその後フォトグラファーのジェニファー・ロベロとの出会いをきっかけに再び歩きたいという気持ちが芽生える。リハビリテーションを受け、義足でランウェイに復帰した。同時に自分のストーリーを世界に発信するように。ローレンはただ体験談を語るだけではなく自分と同じ苦しみを他の女性たちをなくしたいと、安全な生理用品の普及をアピールし続けている。

その彼女がイタリアのタイヤメーカー「ピレリ」のカレンダー、通称「The Cal」に登場した。「The Cal」は1964年から作られており、一流のフォトグラファーとモデルを起用した作品はカレンダーの域を超えたアート。近年はモデルたちの身体的な美よりも内面性にフォーカスした作品が増えている。かつては水着姿のモデルたちを美しく撮影したものが多かったが、2016年にはアニー・リーボヴィッツがセリーナ・ウィリアムズやオノ・ヨーコ、パティ・スミスら年齢も職業も多様な女性たちを起用、彼女たちの人生と功績を称えた。2017年にはピーター・リンドバーグがノーメイクでモデルたちを撮影。The Cal史上初、画像を修正せずに作品にし発表した。

今年のフォトグラファーはエマ・サマートン。「Love Letter to the Muses(ミューズたちへのラブレター)」というテーマで、モデルたちがモデル業と並行して行っているアクション、例えば俳優やライターをキャラクターで表現している。

ローレンが表現したのは「ウォリアー(戦士)」としての彼女。脚を失ってもランウェイを歩き、安全な衛生用品の普及や法整備を目指して闘うローレンを、サマートンはジャンヌ・ダルクの姿で表現した。ローレンは「この写真を見てみんなに勇気を感じてもらえたらと思う」と語っている。「私は脚を失い、自分のアイデンティティを再び築き直し自分が何者なのかをもう一度把握することになった。そのため私は自分の姿と影響力を使って私たちはこの世界で何を変えるべきなのかをアピールしてきた。女性がどのように力を発揮し自分たちの身を守り権利を持つために戦っているのかを訴えてきた」。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

Pirelli(@pirelli)がシェアした投稿

彼女は生理用品についての啓発活動を続けていきたいと話す。「望んでいるのは、生理用品についてもっと透明性を高めること。手足を失ったり命を落としたりすることのないような安全な製品を手に入れられる世界を望んでいる。私たちは自分自身について知らなくてはなりません。ここで大切になってくるのは知識。対話を続け、お互いを高め合っていかなくては」。女性たちが安全だと信じて使っている生理用品について知識を深めていこうと語る。

生理用品に関する知識の大切さに加え、ローレンの姿は私たちにさまざまなことを教えてくれる。ありきたりに聞こえるが不屈の精神、そして他の人のために闘う正義感や使命感を彼女の生き方から改めて学びたい。

広告

AUTHOR

長坂陽子

長坂陽子

ライター&翻訳者。ハリウッド女優、シンガーからロイヤルファミリー、アメリカ政治界注目の女性政治家まで世界のセレブの動向を追う。女性をエンパワメントしてくれるセレブが特に好き。著書に「Be yourself あなたのままでいられる80の言葉」(メディアソフト)など。



RELATED関連記事

Galleryこの記事の画像/動画一覧

「生理用品が原因で脚を失って」黄金の脚を持つモデル、ローレン・ワッサーが女性たちに伝えたいこと
「生理用品が原因で脚を失って」黄金の脚を持つモデル、ローレン・ワッサーが女性たちに伝えたいこと