現在77歳の女優ヘレン・ミレンが語った「美という言葉を忘れなさい」その真意とは
舞台女優としてそのキャリアをスタートさせ、アカデミー主演女優賞を受賞したこともあるヘレン・ミレン。彼女が過去にインタビューで語った言葉を、今再び捉え直してみたい。
舞台女優としてキャリアをスタート、数々の映画やドラマに出演してきたヘレン・ミレン。現在77歳だがレッドカーペットに白髪で登場したり、インタビューで外見に対する世間の偏見を指摘したりと、「こうあるべき」という美や女性らしさの定義を書き換えようとしてきた。ちなみに30代のときあるテレビ番組で男性インタビュアーから「あなたはシリアスな女優だけど、そのことに胸は影響しない?」と聞かれたことが。マリリン・モンローがいい例だけれど、かつては-もしかしたら今も-女優たちはバストやヒップが大きいだけで演技派ではない、シリアスな女優ではないと思われがちだった。その男性もそういう偏見の持ち主だったということ。ヘレンはこれにカチンときたよう。「シリアスな女優は胸が大きくてはいけない。あなたが言っているのはそういうこと? 胸だかなんだかの大きさにこだわる人がいたら、それは演技がお粗末なのよ」と言い返した。女優たちがボディシェイミングに反論することは珍しくなくなりつつあるけれど、当時は1970年代。言い返したこと、女性に対する偏見をはっきりと否定したことに驚きと賞賛の声が上が上がった。
それ以来、ハリウッドだけでなく社会の変化、女性たちの変化を見てきたヘレン。あるインタビューで20代、30代の女性に対する美に関する助言を求められた。すると帰ってきたのは「美という言葉を忘れなさい」と意外な言葉。「自分に当てはまる他の言葉を見つけてほしい。私の場合は”威勢がいい”ね。もちろんあなたがとても美しい場合は別だけれど、そうでないなら他の言葉がいい」。
インタビュアーに「あなたは美しいし威勢がいいと思うけれど……」と言われると「私は美しくない」ときっぱり。「現実を見ましょう。世界には美しい人がいる。そういう人は誰が見てもひと目でそうわかる。例えばデヴィッド・ベッカムは華があって美しい。男性でも女性でも”絶対的に美しい人が存在するの。でも残りの私たち、95%の人はそのカテゴリーには入らない」と説明している。でも嘆くことはないとヘレンは語る。「私たちには他のカテゴリーがあるのよ。面白い。楽しい。賢い。勇気がある。人に感動を与える。つまりたくさんのカテゴリーがあるということ。もしあなたが20歳ならあなたのカテゴリーを見つけて。あなたと同じ人はこの世界には絶対にいない。本当に唯一無二なの。そこに誇りと安らぎを見出してほしい」。
「美しさ」という1つの言葉、物差しで捉えてしまうから自分らしさを受け入れられない、と語るヘレン。他の人と比べてしまうのも物差しが1つだから。彼女のような自信に溢れた女性になるため、まずは自分に当てはまる言葉を探してみたい。ヘレンは20代、30代の女性にアドバイスしているけれど、40代、50代でその言葉と出会っても遅くはない。だって彼女の域に達するまであと2、30年もあるのだから。
AUTHOR
長坂陽子
ライター&翻訳者。ハリウッド女優、シンガーからロイヤルファミリー、アメリカ政治界注目の女性政治家まで世界のセレブの動向を追う。女性をエンパワメントしてくれるセレブが特に好き。著書に「Be yourself あなたのままでいられる80の言葉」(メディアソフト)など。
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