「鼻を整形しなさいと母に言われて」女優ジェニファー・グレイが振り返る整形手術、母との関係
80年代に映画『ダーティ・ダンシング』で大ブレイクしたジェニファー・グレイ。しかしその後彼女のキャリアは低迷、90年代以降はB級映画やテレビドラマで姿を見かけるだけになってしまった。その彼女が最近回顧録を出版、キャリアをつまずかせる一因になったのが鼻の整形手術だったことを語っている。
出版に合わせて雑誌『ピープル』のインタビューを受けたジェニファーはこう語る。「私は自分が何を間違ってしまったのか、なぜハリウッドから追放されたのかそれを突き止めようとして多大なエネルギーを費やしてきた。でもそれは嘘だった。私は自分で自分をハリウッドから追い出したの」。
ジェニファーの両親も俳優だった。父はアカデミー賞を受賞したこともあるジョエル・グレイで、母は元女優のジョー・ワイルダー。母は結婚して引退したが、ジェニファーのキャリアに干渉し続けた。鼻を整形したのも母のアドバイスだったという。「母にいつも鼻を整形しなさいと言われるのにとても腹が立った。手術をしたらそれは屈服することだと思っていた。敵に負けることだと。私はただ『私は今のままで十分素敵。そんなことをする必要はない』と思っていた」。
しかし母親も譲らなかった。「彼女はとても現実的だった。『(仕事が来ないのは)どうしてだと思う? あなたをキャスティングするのが難しすぎるから。彼らを楽にさせてあげなさい』と言っていた。決して『あなたはかわいくない』とは言わないの。『俳優になりたくないならそれでもいいわよ。でも俳優になりたいなら……』と言っていた」。
ジェニファーは結局整形手術を受ける。ほんの少し直すはずだったけれど2度の手術で彼女の顔はまったく変わってしまった。プレミアで彼女を見たマイケル・ダグラスがジェニファーだと気がつかなかったというエピソードもある。都市伝説のようだが本当だそう。ジェニファー曰く「人前に出たのはそれが初めてだった。それまでは見える存在だったのに、翌日にはまったく見えない存在になる。そういう経験だった。世界から見た私はもう私ではなかったの」。
ジェニファーは「母は私のことを愛していた。いつも愛してくれていた」とも。きっと娘のことを思っていたであろう母からのプレッシャーで手術を受け、結果としてキャリアを失ってしまったことは悲劇ではある。しかし彼女は「女性にとって人生は後半の方がいいものだと心から思っている。男性になったことがないから男性がどう思っているのかはわからないけれど、私の経験では後半の方がいい。それは間違いない。こんな気持ちになったことはないから。自分が書くことが好きなのもわかった。私はありのままの大きさの自分でいるのが好き」。ジェニファーは今62歳。60代を超えて新たな人生を見つけた彼女は同世代、そして後輩の女性たちに勇気を与えてくれる。
AUTHOR
長坂陽子
ライター&翻訳者。ハリウッド女優、シンガーからロイヤルファミリー、アメリカ政治界注目の女性政治家まで世界のセレブの動向を追う。女性をエンパワメントしてくれるセレブが特に好き。著書に「Be yourself あなたのままでいられる80の言葉」(メディアソフト)など。
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