「40歳を超えた女優は…」ナオミ・ワッツが憤慨した業界人の言葉と、年齢差別に見る女性の生きづらさ
昔から、40歳を超えた女優は仕事が激減すると言われてきたハリウッド。ナオミ・ワッツが30代のときある業界人から言われた言葉をテレビ番組「エンターテイメントトゥナイト」で明かした。
日本のホラー映画『リング』をリメイクした『ザ・リング』などで主演を飾ってきたけれど、実は遅咲き。デヴィッド・リンチの『マルホランド・ドライブ』でブレイクしたときすでに33歳になっていた。そのときある業界人に「40歳になるまでにありったけの作品に出ておいた方がいい」とアドバイスされたという。その人物は続けて「40歳になったらヤレる女じゃなくなる。そうなったら終わりだ」。
あまりにも失礼な言葉にナオミも思わず「何? どういう意味?」と聞きつつ「生殖機能が衰えたらセクシーではなくなる。だから雇ってもらえないんだってわかった。本当に頭にきた」。
ナオミは年齢に関する会話は性別を問わず、誰にとっても嬉しくない会話だと指摘する。「生まれたその日から老いていくから、居心地の悪い話になる。それでも男性より女性の方がその居心地の悪さは大きい」。なぜなら男性が年を取ることについてはほとんど会話に出ないから。「男性の白髪についてはほとんど議論にならない。それに年を重ねた男性に世間は『彼はハンサムになった、素敵になった、力がついた』と言う。なぜ彼に力があるのか? それは彼が経験を重ねたから。女性に対しても同じように考えるべき」。女性にとってだけ年を重ねることがネガティブな意味を持つことが多いと語っている。ナオミ曰く「この年齢になるまでに女性たちは重要でパワフルな経験を積んできている。それを私たちは誇りに思うべき」。
年齢差別は確実になくなりつつあるけれど、それでもなお40代、50代の女優の主演作品の数はまだ少ない。近年アメリカを中心に言われているのはマイノリティがテレビや映画などのストーリーに出てくることの大切さ。ジェンダーや人種、セクシャリティにおけるマイノリティがテレビ番組に出てくることでその人と同じ立場の人は「この世界には私の居場所がある」と認識できる。それ以外の人は「こういうアイデンティティの人がいる」と学べる。例えばアフリカ系の女の子は自分と同じルックスのキャラクターが出てくるアニメを見ることで「私には存在価値がある」と自然な形で思えるし、それ以外の子どもたちはアフリカ系の子の重要性を理解できる。だから40代、50代の女性たちの存在、パワーを改めて認識するためにも彼女たちを主役にした映画やドラマがもっと作られていいはず。ナオミをはじめとするこの年代の女優たちがこれまでのハリウッドに疑問を呈し、ノーを突きつけている。
AUTHOR
長坂陽子
ライター&翻訳者。ハリウッド女優、シンガーからロイヤルファミリー、アメリカ政治界注目の女性政治家まで世界のセレブの動向を追う。女性をエンパワメントしてくれるセレブが特に好き。著書に「Be yourself あなたのままでいられる80の言葉」(メディアソフト)など。
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