中高年のセックス、なぜ痛い?「挿入時の痛みだけじゃない」性交痛の原因|専門医に学ぶ

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中高年のセックス、なぜ痛い?「挿入時の痛みだけじゃない」性交痛の原因|専門医に学ぶ

更年期障害にはさまざまな症状があらわれますが、性交痛もそのうちの一つ。40代より上は性に対してオープンに発信する世代ではなく、更年期の症状やセックスの痛みも我慢してきた世代です。セクシャルウェルネスを語るとき、なくてはならないのが女性としてのセックスの楽しみ方。更年期以降に多いセックス時に生じる性交痛の原因について、富永ペインクリニック院長・麻酔科医 富永喜代医師にお話をうかがいました。

あらゆる痛みを我慢してきた女性にオープンな「性交痛外来」

富永ペインクリニックは、日本でも珍しい「性交痛外来」を標榜し、オンライン診療なども取り入れ日本中の女性に門戸を開いています。院長の富永喜代医師は麻酔科が専門ですが、なぜ多くの痛みのなかでも、性交痛に注目しようと思ったのでしょうか。それには自身の更年期症状を乗り越えたときの気づきがきっかけだったと言います。

「私は自身の更年期障害に気づいて、治療を始めるまでに2年かかりました。多くの患者さんを診てきましたが、自分のことになるとわからなくって。更年期障害のホルモン補充療法を始めて、これまで悩んでいた症状、例えば、朝が起きられない、集中力低下、デリケートゾーンの臭いなどが更年期障害によるものだってようやく気付きました。

更年期障害の症状は主に不眠・ホットフラッシュ・発汗障害と言われていますが、本当に悩んでいる症状というのは頻尿やデリケートゾーンの乾燥、灼熱感、臭い、そして性交痛など多岐にわたります。これらの症状はなかなか声にして言い出しづらいですよね、特に昭和生まれの40歳代以降の女性は性に関する悩みをオープンにしない傾向にあります。

更年期障害についても、多くの女性は症状を我慢したり、性交痛も『もういいじゃないですか』という言葉でセックスを諦めさせられたり。でも、人には言えない痛みがあって困っている患者さんがいる。これは痛みの専門家の私の出番だと気づいたことが性交痛外来を開くきっかけでした」

性交痛にはさまざまな原因が絡み合っている

性交痛はいわゆるセックスに伴う性器の痛みで、産婦人科へ相談に行く患者さんもいます。性交痛の原因にはさまざまな要因が絡み合い、複雑を極めています。たとえば、セックスの挿入時に腟が不随意に攣縮して挿入を拒み、痛みを伴うことも原因の一つ(ワギニスムス)。一方で、心因的な要因で痛みを感じる場合もあるそう。

性交痛
性交痛は、挿入時の痛みに限らず、心因的な要因で痛みを感じる場合もある。
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「性交痛というのは、挿入時の痛みだけでなく、性行為に伴う痛み全般です。性交痛もそうですが、痛みは目に見えるものではありません。たとえば、前戯として触れ合ったときに痛むことも性交痛の一つ。デリケートゾーンには末梢神経がたくさん走っていて、痛みを常に感じているとすぐに脳がその痛さを覚えてしまいます。

性交痛は、他の要因が影響して悪化することもあります。たとえば、もともと更年期障害でデリケートゾーンが乾燥してヒリヒリした痛みがあったとして、その上に仕事や家庭、介護の問題がストレスとして重なるなど、痛みは悪化するんです。でも想像すると、そういうストレスがある中でセックスをしようとすると『そりゃ痛いよ』ってイメージできると思います。自分のことを後回しにしてしまう世代だからこそ、我慢してなかなか人に言えないんですよね。

中高年期に多いのが、久々にセックスをしようとして痛みを感じるケースです。加齢とともに性器は劣化する、が基本です。特に更年期以降の女性ホルモンが激減する世代では、性機能はお手入れしていないと、性交痛でセックスができなくなるのは自然なことなんです。だから、痛みが生じる前に機能維持として日々のルーティンにデリケートゾーンケアを取り入れることをおすすめしています」

性器の痛みは慢性痛になりやすく、早くて半年ほどで慢性的に痛みを感じるようになるそう。富永医師は、更年期以降はケアをせず、セックスもしないでいると2~3か月で腟の萎縮が始まると警告しています。

「たとえば、100メートル走のオリンピック選手が試合の時だけ100メートルを全力で走っているわけではありませんよね。日々何キロも走って練習しています。同じように、久々のセックスの時だけうまく濡れることなんてありません。なのでセックスをしなくてもデイリーケアで自分を潤わせてくださいね」

お話を伺ったのは…富永喜代先生
富永ペインクリニック院長。医学博士。日本麻酔科学会指導医。1993年より聖隷浜松病院などで麻酔科医として勤務、2万人超の臨床麻酔実績を持つ。2008年愛媛県松山市に富永ペインクリニックを開業。のべ23万5000人の痛みを治療し、性交痛外来では5000人のセックスの悩みをオンライン診断する。著書に『女医が教える性のトリセツ』(KADOKAWA、2022年)など。

参考:

大川玲子.ワギニスムス再定義の試み.心身医.38.1998.

YouTube「女医 富永喜代の人には言えない痛み相談室」

月刊TENGA45号『「フェムテック」「セクシャルウェルネス」「プレジャーギャップ」これひとつで丸わかり!』

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ヨガジャーナルオンライン編集部

ヨガジャーナルオンライン編集部

ストレスフルな現代人に「ヨガ的な解決」を提案するライフスタイル&ニュースメディア。"心地よい"自己や他者、社会とつながることをヨガの本質と捉え、自分らしさを見つけるための心身メンテナンスなどウェルビーイングを実現するための情報を発信。

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