【研究結果が示唆】1日1万歩も歩かなくてよい?目標にすべき「1日の歩数」と運動不足が招くリスク
歩数を見直すのも良いかもしれません。
Fitbitを紛失したのは最高の出来事でした。真面目な話。
大学一年生の間、私はずっとFitbitを腕につけていました。そしてある土曜日の夜、Fitbitがいつの間にか外れてしまっていたのです。その瞬間、私が動揺した理由は、Fitbitを失くしたことや、夜にダンスフロア中を何時間も探し回らなければいけなかったことではありません。−時計を探す際の歩数がカウントされないことに動揺したのです。そんなことは重要ではないのに。このとき私は、健康的な習慣を追い求めるがあまり、強迫観念に駆られていることにふと気づいたのです。
その1年間、私は自分の歩数を細かく記録していました。夜の11時になると、その日の目標である1万歩を達成するために、何度も往復しました。実際にはその一万歩という数字が何の意味もなさないにも関わらず。私は比較的活動的な人間で:ジムに通い、ヨガをし、キャンパス中を歩きまわっていました。なぜ私は一万歩を達成することにこだわっていたのでしょうか?
1日1万歩の目標はどこから来たのか
「1日1万歩」の理念は、意外なことに(あなたは既にご存知かもしれませんが)、医師や健康研究から生まれたものではありません。その起源は、一般向けに歩数計の新商品を販売するため、1960年代に日本で行われたマーケティングキャンペーンに起因しています。そう、60年前の広告キャンペーンが、少なくとも部分的には、現代の歩数への執着に関係しているのです。
Fitbitは、ユーザーの歩数目標を自動的に一万歩に設定します。TikTokやInstagramなどのSNSアプリのユーザーは、度々1万歩の目標を達成したビデオをシェアしています。 (例えば、TikTokのハッシュタグ「#10000steps」は1000万回以上再生されています)。これらのクリエイターは、目標を達成するためのヒントや、1日1万歩が有益な理由を説明することがよくあります。確かに1日1万歩歩くことは悪いことではありませんが、全ての人にベストな数字ではないかもしれません。
なぜ1万歩に設定されているのか
1日の歩数が少なくても、健康に同様の影響を与える可能性があることが研究によってわかっています。
2019年の研究では、高齢の女性において、死亡率の低下と1日の歩数の増加との間に関連性があることがわかりました(参加者は7500歩を達成)。平均年齢72歳のこれらの参加者の間では、1日1万歩を歩いても、1日7500歩を歩くよりも良い結果は出ませんでした。このテーマに関する15の研究の最新のメタ解析は、これらの2019年の研究結果を反映しています。分析の中で、研究者は、1日6000~8000歩が60歳以上の成人にとって最適な数値であり、8000歩~一万歩が若年成人にとって重要な数値のようだと指摘しています。
この研究からは、1万という数字は完璧な数字とは言えません。しかし、そこには何かがあるのです。まず、私たちは切りの良い数字に惹かれる傾向があります。9574よりも10000の方が魅力的なのです。2010年に行われたある研究では、参加者は、自分の歩数が切りの悪い数字だと、より努力をする傾向があることがわかりました。
また、それとは別の理由もあります。−私たちがずっと慣れ親しんできたコンセプトを覆すのは難しいのです。「最新の機器であろうとテクノロジーであろうと、フィットネス関連のことに関しては、残念ながら、本気で科学に立ち戻って、『うーん、これって本当に意味があるのかな?』とは言えない傾向があります」と、ジャクソンビル大学の運動学教授、ヘザー・ハウゼンブラス博士は言います。人々は、自分の健康目標や年齢に合った歩数を考えるよりも、1万歩の法則に執着しがちなのです。
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ヨガジャーナルアメリカ版
全米で発行部数35万部を超える世界No.1のヨガ&ライフスタイル誌。「ヨガの歴史と伝統に敬意を払い、最新の科学的知識に基づいた上質な記事を提供する」という理念のもと、1975年にサンフランシスコで創刊。以来一貫してヨガによる心身の健康と幸せな生き方を提案し続けている。
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