それ、ホントに筋力不足?【格闘技ドクターが解説】パフォーマンスが変わる「呼吸の使い方」とは

 それ、ホントに筋力不足?【格闘技ドクターが解説】パフォーマンスが変わる「呼吸の使い方」とは
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サッカーやバスケットボール、野球などのノンコンタクトスポーツであっても、やはりフィジカルの強さがモノを言います。ノンコンタクトスポーツの「ぶつからない前提」は、あくまでも「身体と身体が直接的にぶつからない」というだけであり、ボールの競り合いや陣地の奪い合いの局面ではフィジカルの強さが必要不可欠です。ぶつからない前提だけど、「もしぶつかったら危険だ」と相手に感じさせるくらいのプレッシャーは、現実場面において試合内容や勝敗に大きく影響します。レベルが高くなればなるほど「身体能力の高いフィジカルエリートどうしがしのぎを削る」ことになりますから、あくまでもレクレーションやコミュニケーション目的(それはそれで十分に意味があることで、スポーツの重要な側面です)ではなく、競技として勝ちたい場合には、フィジカルの強化は必須になるでしょう。

卓球やテニス、バレーボールなど、ルール上相手と直接的にも間接的にも接触する機会がない種目においては、「球威」が非常に重要な要素になります。相手の反応が追いつかないスピード、容易には打ち返すことができない威力をもって、「相手にとってコントロール不能な状態をつくりだせるかどうか」が勝敗に大きく関わってきます。

ダンス、バレエ、体操など、対人、対チームで直接的あるいは間接的に競わない種目でも、フィジカル強化は重要です。自分の身体のパーツを重力に逆らって、あるいは重力に順じて、自由自在に動かす。これ、言うのは簡単ですが、やるのは至難です。例えば「立ったまま片足が地面と水平になるように挙上して、そのまま動かさずに1分間ピタッと制止する」たったこれだけでも、しっかりやり込んでいないとできません。

ましてや「下肢を高く上げたまま静止する」、あるいは「つま先立ちで全身を支える」など日常生活動作のレベルを超えた動きは練習なしに出来るものではありませんし、このような動きを積極的に求め、継続すること自体が、重力の負荷に抵抗し続けているわけですから、必要な筋力とハードなパフォーマンスに耐えうるフィジカル強化になっています。ヨガにおいては競技ではないものの、ポーズをホールドするのにある程度のフィジカルの強さは必要とされます。

種目を問わずフィジカルの向上は身体活動における重要な要素であり、種目に応じた、また個人のスタイルに応じた適切な強化が「今以上のパフォーマンス」の核となります。逆に言えば、「動きだけ真似する普通の人」と、「動きを自分のものとして修得した人」の差はフィジカルに表れる、と言えるかも知れません。

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取材/北林あい

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二重作拓也

二重作拓也

挌闘技ドクター/スポーツドクター リハビリテーション科医師  格闘技医学会代表 スポーツ安全指導推進機構代表 「ほぼ日の學校」講師。 1973年生まれ、福岡県北九州市出身。福岡県立東筑高校、高知医科大学医学部卒業。 8歳より空手を始め、高校で実戦空手養秀会2段位を取得、USAオープントーナメント高校生代表となる。研修医時代に極真空手城南支部大会優勝、県大会優勝、全日本ウェイト制大会出場。リングドクター、チームドクターの経験とスポーツ医学の臨床経験から「格闘技医学」を提唱。 専門誌『Fight&Life』では12年以上連載を継続、「強さの根拠」を共有する「ファイトロジーツアー」は世界各国で開催されている。 またスポーツの現場の安全性向上のため、ドクター、各医療従事者、弁護士、指導者、教育者らと連携し、スポーツ指導に必要な医学知識を発信。競技や職種のジャンルを超えた情報共有が進んでいる。『Dr.Fの挌闘技医学 第2版』『Words Of Prince Deluxe Edition(英語版)』など著作多数。



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