「自分を魅力的だと思えなかった」元ヴィクシーモデルの告白から考える、ボディシェイミングの危険性
ランジェリーブランド、ヴィクトリアズ・シークレットでモデルを務めていた女性が、自身の過去を振り返るとともにボディシェイミング(体型批判)の危険性について語った。
かつて一世を風靡したランジェリーブランド、ヴィクトリアズ・シークレット(VS)。華やかなランジェリーに身を包んだスーパーモデルたちがランウェイを歩く毎年恒例のファッションショーは世界中の注目を集めた。広告塔の”エンジェル”を務めたミランダ・カーやアレッサンドラ・アンブロジオ、キャンディス・スワンポールらは女性たちの憧れの的だった。
でもその後世界は様々な体型の美しさを認め、個性を受け入れていく多様性が大切にされる時代へと変わっていく。若くてスリム、同じようなルックスのモデルばかり集めたVSに対する批判の声も高まっていく。また経営陣が性犯罪者と関係を持っていたこと、バックステージでセクハラが行われていたことなども告発され、VSは経営陣を一新する。今は新たな経営体制のもとバラエティに富んだ年齢、体型、さらにトランスジェンダーのモデルたちを起用し様々な美を表現するブランドを目指している。
「自分で自分を魅力的だと思えなかった」
そんな中、過去のVSがどれほどモデルたちや女性たちにネガティブな影響を与えていたかをしっかり追求しようとしているモデルたちも多い。2016年にVSのショーに出演したブリジット・マルコムもその1人。最近ポッドキャスト「Fallen Angel(堕ちたエンジェル)」に出演、VSモデルだった頃を回想している。ちなみにこの番組は女性ジャーナリスト2人がボディイメージやセクハラなどVSの問題点を追及するプログラムでアメリカマスコミからも注目を集めている。
ブリジットは「当時はいつもお腹を空かせていた」と告白。「エンジェルたちはみんなとても細くて同じサイズ。体型もルックスもそっくりだった。私もその1人になりたかった」と振り返っている。「だから私はワークアウトして寝る毎日を繰り返していた。お腹がとても空いていた」。寝ることで空腹を耐えようとし、眠れないときには抗不安剤を飲んでいたという。オーディションに合格するため3か月、口にするのはプロテインシェイクと蒸し野菜だけ。「自分がセクシーだと思えなかったし、自分がどんな気持ちなのかもわからなかった」。無感覚な状態に陥ってしまっていたと語る。
2016年のショーに出演後、彼女は自分の生活が「ヘルシーでもないし、続けることもできないということがわかった」。食事をするようになった結果、2017年のオーディションでは不合格の通知を受け取る。「そのとき私のヒップは85センチだった」。一般的な基準では太くないどころか細いが、VSの基準には合わなかったとブリジットは語る。
VSのステージから去ることになった彼女はその後パニックの発作などに苦しめられる。医師に診てもらった結果、複雑性PTSDだと診断されたそう。「VSのボディサイズの基準やファッション業界が原因だったとは言わない。でも私が心の病に苦しんでいたこととVSで働いていたことの間に関連性はあると思う」と分析している。ブリジットは「当時はVSに自分の身体をコントロールされているように感じていた」とコメント、自分のボディイメージを自分で認められないこと、他の人の評価に左右されてしまうことが心に及ぼす危険性について指摘している。
あらゆる体型の美しさを認める動きが広まっているとはいえ、人の体型を批判し中傷のネタにするボディシェイミングは後をたたない。ブリジットの告白から改めてボディイメージとの向き合い方を考えたい。
AUTHOR
長坂陽子
ライター&翻訳者。ハリウッド女優、シンガーからロイヤルファミリー、アメリカ政治界注目の女性政治家まで世界のセレブの動向を追う。女性をエンパワメントしてくれるセレブが特に好き。著書に「Be yourself あなたのままでいられる80の言葉」(メディアソフト)など。
- SHARE:
- X(旧twitter)
- LINE
- noteで書く