「更年期の悩み」は"恥ずかしい"?更年期の変化をポジティブに伝える海外ブランドの取り組み

 「更年期の悩み」は"恥ずかしい"?更年期の変化をポジティブに伝える海外ブランドの取り組み
Photo by Priscilla Du Preez on Unsplash

更年期に悩むことは恥ずかしいことじゃない。そんなメッセージを発信するスターや海外ブランドをご紹介します。

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2025年までに、世界で10億人以上の人々が更年期障害を経験するといわれ、これは世界人口80億人の12%に相当します。(北米更年期学会調べ

更年期障害は、生活の質の低下や、医療費の増加など誰もが経験し得る症状にもかかわらず、スティグマ(恥)とされオープンに語られてきませんでした。しかし近年は偏見を持つことを終わらせ、オープンに語って課題を解決していこうというメッセージや、解決するための手段が増えてきています。

年齢を重ねることはネガティヴではない

52歳ジェニファー・ロペスや、58歳デミ・ムーアなど、50歳以上のスターが年齢を隠さず、昔ながらの「年相応」を"わきまえない"姿は、年齢を重ねることがネガティヴなことではないという力強いメッセージとして話題になっています。

 

デミ・ムーアは2019年に出版した回顧録で、女優として監督から厳しい体型管理を要求されボディシェイミングされてきた過去を語りました。
デミは20代後半の娘たちとともに、自身が投資している水着ブランドAndieSwimのキャンペーンでモデルをつとめています。

 

女優のナオミ・ワッツは、NASDAQに上場しているバイオテクノロジー企業Amyris Inc.とともに更年期障害ケアのウェルネスブランドを立ち上げることを発表しました。50代のナオミは自身の経験から更年期にまつわる偏見と孤立を無くすためにAmyris Inc.とともに女性の健康をサポートするブランドを2022年に立ち上げる予定です。

 

更年期を前向きに打ち出すブランドたち

多くの女性たちを悩ませる更年期障害を解決するためのフェムテック企業が増えており、2025年までに世界中で10億人の女性が閉経する予測では、オンライン診察、ヘルスケアデバイス、関連サービスで6,000億ドル市場といわれています。このムーブメントは健康課題を解決するだけではなく、これまで語られてこなかったスティグマ(恥)の概念を変化させる社会的意義があります。

更年期の女性向け膣の乾燥用のエストロゲンソフトジェルのブランドImvexxyは、映画『マリー・アントワネット』のような世界観で、「あなたのアソコは女王様です。Imvexxyは彼女の味方。彼女の支配が長く続きますように」というインパクトあるメッセージで女性のケアを応援しています。
更年期の性交痛の悩みという話題にしづらい課題を、ユーモアを交えて明るい映像で伝えています。

 

健康食品店チェーンのHolland&Barrettは「Me.No.Pause」プロジェクトで、更年期障害は多くの女性が経験するにもかかわらず語られてこなかった「最後のタブー」であるとして、子宮筋腫で子宮摘出、子宮頸がんの化学療法など、様々な理由で早期に更年期障害になったり、病気と併発している女性たちにスポットライトを当てています。

現代のジェンダーは多様化しているため、更年期障害は「女性」だけの問題ではありません。「Me.No.Pause」のキャンペーンではジェンダーニュートラルの俳優バニー・クック氏がキャンペーンに登場し、これまでLGBTQコミュニティの人々が一般的な更年期障害のイメージやメッセージから排除されていたことに気づきを与えています。

 

美容の分野でも年齢を重ねることに抗うアンチエイジング(anti-aging)より、プロエイジング(pro-aging)という年齢による変化を受け入れて個人の美を重視する方向に変わってきています。
40歳以上の女性のためのヘアケアブランド「Better Not Younger」は、その名の通り「若さよりも良い状態」を追求するブランドです。創業者のソンソレス・ゴンザレス氏はP&GやL'Orealなどの大企業を経て、50代で起業した女性です。「Better Not Younger」は、40代から増える女性の髪にまつわる悩みを解決するための商品開発を行っています。加齢を解決すべき問題とは捉えず、人生の次の段階を楽しむ女性たちを応援しています。

 

パンテーンは、女性が自然なグレイヘアを受け入れることを奨励する#PowerofGreyキャンペーンを実施しました。
無理な若作りよりも、年齢を重ねた自分に自信を持ったグレイヘアの女性の美しさを祝福しています。これまで、多くの人が隠したがっていた白髪についての固定概念をなくし、パンテーンの理念である「Power of Hair」に基づいて「白髪は恥ずかしいことではない」というメッセージを伝えています。

 

生理時に使える吸水型サニタリーショーツで有名なフェムテックブランドTHINXは、エイジインクルーシブ(age-inclusive)な姉妹ブランド「Speax by Thinx」で尿もれ時に使えるショーツを展開しています。
産後や加齢で生じる尿もれの悩みを世代で分けることなくあらゆる年齢の人が使えるブランドです。

 

年齢を重ねる良さに目を向けること

女性の健康はホルモンに左右ことも多く、ホルモンバランスが変化する更年期は、さまざまな「不調」があらわれることがあるといわれています。
そして更年期障害に対する職場の理解不足が、女性のキャリアに悪影響を及ぼしていることが国内外でも語られはじめました。
年齢を重ねることは課題だけではなく、自信や視野の広さ、謙虚さ、経験、アイデンティティの確立など、ポジティブな要素がたくさんあります。

さまざまなブランドがエイジズム(年齢による偏見や差別)よりも、ありのままの自分を誇る女性たちを応援し、率直に課題解決を伝えていることは、更年期障害のスティグマ(恥)を終わらせる前向きな時代の変化を感じます。

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AUTHOR

中間じゅん

中間じゅん

イベントプロデュースや映像制作を経て、ITベンチャーに。新規事業のコンセプト策定から担当。テクノロジーとクリエイティブをかけ合わせた多様なプロジェクトの設計に参画。社会課題やジェンダーの執筆活動を行う。



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