女性器へのタブー視を問題提起する海外のムーブメント|広告表現からミュージックビデオまで

 女性器へのタブー視を問題提起する海外のムーブメント|広告表現からミュージックビデオまで
Photo by Anelya Okapova on Unsplash

女性器へのタブー視について問題提起するムーブメントが世界中に広がっています。

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女性の健康課題を解決するフェムテックやフェムケアという言葉が聞かれるようになり、生理、妊娠・出産期のケア、更年期障害にまつわる話題が増えてきました。

それにともなって、女性の身体で語られてこなかった女性器について、タブー視することをやめようというメッセージが企業やポップカルチャーで増えています。

生理用品スタートアップの問題定義

2021年6月、ロンドンの生理用品のD2CスタートアップCallalyは、女性の外陰部を石膏で固めた作品を使った"We Need to Talk About Vulvas"キャンペーンを実施し話題になりました。

「Vulvas」とは女性の外陰部を意味します。Callalyの調査では調査に参加した4分の1の女性が、外陰部に対してコンプレックスなど否定的な感情を抱いていることを示しました。また16〜24歳の若年層の5人に1人が、自分の外陰部を整形したり「美白」したいと考えていることを明らかにしました。
Callalyは誤った情報でコンプレックスを抱く人々に、外陰部は指紋のように人それぞれ違って多様性があることを伝えるためにキャンペーンを実施しました。

このキャンペーンでは、10名の外陰部を石膏で固めた作品をさまざまなストーリーや性教育の教材とともに紹介しています。

「女性器は男性に快感を与えるためだけのもので、自分のものではない」と感じていた女性、何年も性器の整形手術を受けような悩んでいた女性、トランスジェンダーの男性やバイセクシャルなど多様なセクシュアリティとストーリーを持つ人々が自分の過去を振り返り、多様性を受け入れるためのアドバイスを語っています。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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このキャンペーンのパートナーであるロンドンのヴァギナ・ミュージアムが画像を公開したところ、Instagramによって削除されてしまいました。

投稿が削除される前は、6,000件以上の「いいね!」と数百件のコメントが寄せられており、キャンペーンを称賛する声や、外陰部に関する不安や戸惑いなどの体験談が寄せられていました。Instagramが検閲したことで、かえってキャンペーンの意義や、外陰部に関する教育不足と偏見の存在が証明されました。 

外陰部もボディポジティブの一部

フェミニンケアブランドのLibresse(イギリスでのブランド名はBodyform)は、デリケートゾーン用のシャワージェルのCMで、外陰部を彷彿とさせるモチーフーーカキ、巻き貝の殻、人形、ボタンホール、カップケーキ、折り紙、財布などーーが「外陰部はそれぞれユニークであり、違いは称賛されるべき」という応援歌を歌います。

タブー視は自分自身に誤った抑圧を生み、女性にとって重要な婦人科検診から足を遠ざけます。外陰部のケアすることで自分の身体に関心を持つことを伝えています。

 

 

Libresseは他にも、"Viva La Vulva Bathroom Takeover"キャンペーンで、女性用の公衆トイレを鮮やかな外陰部のアートで彩りました。

これは、イギリスのすべての男性用トイレのほぼ半分に、少なくとも1つは男性器の落書きが存在し、男性器の表現は一般的なのに、女性の性器についてはそのような気軽な表現がされていないことに着目したものです。

 

 

フェミニスト・アーティストからのメッセージ

女性の生殖器に対しての抑圧と偏見は、女性の意思を無視した中絶禁止法、人権侵害として問題視されている女性器切除(FGM)、生理の貧困など深刻なものとつながっています。

これらはフェミニストが長年取り組んできたセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康と権利)の概念に含まれるものです。

近年、フェミニストであることを公言するアーティストが増えており、彼女たちは音楽やミュージックビデオを通じて女性の身体を祝福しています。

ジャネール・モネイ「PYNK」

ジャネール・モネイの「ピンク(PYNK)」のMVでは、外陰部を模した華やかなドレスを纏い、外陰部を賛美する歌を歌っています。フェミニストであるジャネール・モネイは、音楽業界や社会の女性差別について積極的に発言しています。

 

 

カーディ・B「WAP feat. ミーガン・ジー・スタリオン」

ラッパーのカーディ・Bが「濡れたアソコ(Wet Ass Pussy)」について語ったこの曲は、女性が主体的に性を語り、大きな反響を呼んで大ヒットしました。過激な表現から保守的な層から批判が起きましたが、そんな批判を跳ね返す「セックス・ポジティブ」なこの曲は世界でも一躍大ヒットしました。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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ミーガン・ジー・スタリオン

カーディ・Bと「WAP」でコラボしたラッパーのミーガン・ジー・スタリオンは、新曲「Thot Shit」のミュージックビデオで外陰部を扱った大胆な演出しました。女性蔑視的で偽善的な男性政治家を懲らしめるストーリーで衝撃的なオチが待っています。外陰部はただの身体の一部で、性的なものでも間違ったものでもないというパワフルなメッセージが込められています。

 

フェミニズムとセルフケアのためにもっと語ろう

グウィネス・パルトロウは女性のセクシャル・ウェルネスを発信し続けている代表的な存在です。ハリウッド女優から起業家に転身したグウィネスが手がけるライフスタイルブランド「goop」は、美容、ファッション、食、ウェルネスに関する商品を販売し、10年以上続いています。

  そんな「goop」についてのNetflixドキュメンタリー「The Goop Lab」で、女性のセクシャル・ウェルネスを取り上げたエピソードでは、外陰部の多様性を知り、受け入れることの重要性を描いて話題になりました。

グウィネスの提唱する健康法は独特なものがあり、批判されることも多いですが、性にまつわるタブー視を無くそうとする哲学は世界中の女性から支持され、グウィネスのブランド「goop」は現在2億5000万ドルの企業価値があると言われています。グウィネスがタブーを恐れず身体の課題に取り組み続けたことが評価につながっています。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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これまで、語らないことが良しとされてきたせいで、コンプレックスを抱えたり、異変があるときしか語れないという偏りがありました。 

しかし、ブランドやアーティストたちによる、タブー視をやめようというムーブメントが後押しして、恥じたり悩んだりするより、自分に合ったケアをしたり、トラブルを放置せず早めに病院に行くことが、以前よりも前向きに捉えられるように変化してきているように感じます。

偏った情報で自分自身が持っているものを恥に思わず、多様であることが理解され、表現され、尊重される文化が育ってきていることは喜ばしいことです。

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AUTHOR

中間じゅん

中間じゅん

イベントプロデュースや映像制作を経て、ITベンチャーに。新規事業のコンセプト策定から担当。テクノロジーとクリエイティブをかけ合わせた多様なプロジェクトの設計に参画。社会課題やジェンダーの執筆活動を行う。



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