40代以降の「アンダーヘア(VIO)脱毛」「介護脱毛」を考える時に注意すべきことは?
性の健康に関するアクティビストでありメノポーズカウンセラーの小林ひろみさんに、40歳からの性生活や更年期をより良いものにするためのアドバイスをいただきます。
40代以降のアンダーヘア脱毛を考える時に意識したいこと
VIO脱毛というと、以前はビキニを着る若い世代が行うイメージでしたが、ここ数年、 40~50代をターゲットに、将来介護されることを想定して行う「介護脱毛」という言葉が出てきました。女性は介護される立場になっても迷惑をかけないように生きていかなければならないのか…とも受け取れる言葉。介護をした経験がないせいか悲しい気持ちになりましたが、ご家族の介護などを経験されている方は脱毛しておきたいと思われるのかもしれません。また実際に永久脱毛を検討している人のなかには、介護に関係なく「前からちょっと興味があった」「ずっと(ヘアが)邪魔だと密かに感じていた」などが、本音の方もいるではないでしょうか。私自身は過去に2度、医療レーザーのVIO脱毛を経験していますが、推奨、否定どちらの立場でもありません。ただ更年期世代は、デリケートゾーンがエストロゲンの減少で乾燥が始まりトラブルが起きやすい時期。レーザー脱毛を検討する際は、ご自身のデリケートゾーンが健康であるかも大切なポイントだと思います。
更年期のデリケートゾーンはトラブルが起きやすい
女性ホルモンであるエストロゲンは、肌の潤いや弾力を支える働きがあります。更年期に入ると、エストロゲンの分泌が低下し、全体的にお肌が乾燥傾向になります。腟や外陰部も例外ではなく、閉経前後から乾燥や萎縮が始まり、乾燥によるかゆみや下着があたる不快感、歩くと股がこすれる感じ、そして性交痛などのトラブルが起きやすくなります。レーザー脱毛の前は、レーザー照射を希望する箇所のアンダーヘアを剃る必要があるため、お肌にカミソリの刺激がある程度伴います。また、レーザー照射の刺激が人によっては感じるかもしれません。もし、乾燥でデリケートゾーンがセンシティブになっている場合は、慎重な判断が必要です。乾燥の自覚があり自己判断が難しい場合は、まずは婦人科の受診をおススメします。
40代以降、すでに体毛や頭髪が薄くなった、と実感している人がいるかもしれません。エストロゲンは毛髪にも作用しています。若い頃毛深くて悩ませた、腕や足にあったふさふさの毛は、すっかりなくなりました。私とは真逆で体毛が薄い同じく更年期世代の妹は、頭髪の量がグンと減り、脇の毛も少なくなったといいます。介護や看護職の知人たちは、個人差はあるが、全体的に高齢者のアンダーヘアは少ないといいます。もともと毛が薄い人は、もしかしたら、将来は排せつ介助の迷惑を気にするほど、ヘアが残っていないかもしれません。
閉経以降は骨粗しょう症に注意
女性が高齢になって介護が必要となる理由のひとつに骨折があります。骨の細胞は古い骨を壊して、新しい骨をつくる代謝を繰り返して、健康な骨を維持していますが、閉経によりエストロゲンの分泌が減ると、骨代謝のバランスが崩れて、急激に骨量が減少するので、骨粗しょう症に気を付けなくてはなりません。要介護になるのは、骨折だけが原因ではないですが、骨が弱くなるとわかっているなら、骨密度の維持が、骨折による介護リスクを下げられます。骨折というと、腕や足にギプスを数週間して完治するイメージがあるかもしれません。しかし、骨密度が下がり、骨がスカスカで脆くなっている状態だと、体を支えている場所の骨が折れる厄介な骨折も起こり得るのです。折れた骨は、くっついて完治できる場所とも限らない。骨粗しょう症は、カルシウムやビタミンDなどを摂取する食事や日光浴と運動、禁煙、禁酒などでの予防ができます。まずは、自分の状態を知るために、特に閉経前後の年代の方は一度医療機関で骨量の測定をお勧めします。
40代以降、急激に体の衰えや変化を感じ、将来が心配になるタイミングに、自分が介護される立場になるかもしれない現実を突き付けられると、意外な提案に心が揺れてしまうのかもしれません。しかし本来気にするべきことはアンダーヘアではなく、できるだけ長く介護を必要としない体づくりなのではないでしょうか。更年期や女性ホルモンの知識は、将来病気になるリスクを理解し、健康を維持するために具体的な行動ができる基礎知識です。骨粗しょう症は、高齢女性が介護になるリスクの一例であり、他にも予防対策を立てておきたい疾患もあります。ネットではなく、できるだけ女性ホルモンと更年期のことが書かれている本で学んでみて下さい。要介護になる不安ではなく、前向きに予防できることがきっとみえてきます。
もしアンダーヘアとお別れをしたい、とりあえず永久脱毛をトライしたいと考えている人は、ご自身のデリケートゾーンの肌の状態が良好か、もし乾燥などの違和感がある場合は、まずは婦人科で医師に相談してから、チャレンジしてみて下さい。
AUTHOR
小林ひろみ
メノポーズカウンセラー。NPO法人更年期と加齢のヘルスケア会員。日本性科学会会員。性と健康を考える女性専門家の会 理事。デリケートゾーンブランドYourSide、潤滑ゼリーの輸入販売会社経営の傍ら、更年期に多い性交痛について情報発信を行う。幅広い性交時の痛みに関する情報サイト「Fuan Free (ふあんふりー)」を運営。
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