米スタンフォード大学の心理学者が語る|誘惑に負けて後悔するループから抜け出す4つのステップ

 米スタンフォード大学の心理学者が語る|誘惑に負けて後悔するループから抜け出す4つのステップ
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衝動に従って甘いものを食べすぎたり、トレーニングをサボってしまったり...「ダイエットしよう」「ヨガを習慣にしよう!」「毎日走ろう」といった、最初の頃の強いモチベーションがどこかに行ってしまうことは少なくない。だけど、意志が弱い自分を責めるのはもうやめよう。体を鍛えるように、意志力も鍛えることができる。『スタンフォードの自分を変える教室』の著者としても知られる心理学者で、ヨガ指導者としても活動するケリー・マクゴニガル博士による「意志を貫く力の鍛え方」をご紹介。

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チョコレートや靴のオンラインショップを前にすると、自分の無力さを感じるかもしれない。だが、そんなことはない。普段は感じなくても、意志力は誰にでも備わっている、とマクゴニガルは言う。意志力が働く仕組みを理解すれば、それを利用し強化することができるのだ。「脳には、意志力をつかさどる3つのシステムがあります。私はこれらを、『やる力』、『やらない力』、『望む力』と呼んでいます」とマクゴニガルは説明する。「これらのシステムは、脳の実行機能の中枢となる前頭前皮質の役割の一部です。この3つの力によって、すぐに欲しい、あるいは苦痛を避けたいといったような、中脳でのより原始的な欲求を抑制することができるのです」

『やる力』『やらない力』そして『望む力』

「やる力」は、眠りたくてもヨガマットを広げるときなどに働くシステムだ。前頭前皮質の左側の領域がつかさどり、目標に向かうための行動をサポートする。前頭前皮質の右側の領域は「やらない力」をつかさどり、やるべきではないことをやりたい衝動—例えば2杯目のワインを飲むこと―を拒絶する。そして、内側前頭前皮質では、「望む力」が前頭前皮質全体と中脳との間で架け橋の役目を果たしている。「望む力」によって、私たちは長期的な目標をたて、健康で経済的に安定した自己像を描き、望む方向に物事が進むように「やる力」と「やらない力」を使い分けることができる。
「望む力」は、体を鍛えようとか、子どもにもっとやさしく接しようと誓ったことを覚えていて、なぜそれらの目的が今から1時間テレビを見るよりも大事であるかを思い出させてくれるのだ。

マクゴニガルは、これらの力がどのように働き合って恩恵をもたらすのか、例をあげて説明している。「例えば、今年はストレスとうまく折り合うことを目標にしたとします。そして、週2回、仕事帰りにヨガのクラスに通うと誓います。でも仕事が終わると、くたくたで、イライラしていて、お腹がすいていますよね」
欲望と嫌悪という、相反する本能をつかさどる原始脳である中脳が望むことは、食べ物をテイクアウトし、ソファとリモコンが待つ我が家にまっすぐ帰ることだ。「意志力があるからこそ、中脳が発するメッセージに気づくことができ、本質的にそれらを抑えることができるのです」とマクゴニガルは説明する。
「『望む力』は、ヨガクラスのあとの気持ちよさや、そもそもなぜクラスに出ようと誓ったのかを思い出させてくれます。『やらない力』は、ジャンクフードやソファを拒絶するように助けてくれます。そして、『やる力』が、スタジオに向かわせ、練習のスペースを見つけ、服を着替え、マットを広げさせてくれるのです」

意志力はトレーニングで身につけられる

これまでなかなか自分の行動を変えられず、結局はフラストレーションと挫折感でタオルを投げていた人たちに朗報がある。実践とトレーニングを積めば、これら3つの力を強化し、意志力を高めることができるのだ。「意志力という筋肉を意識的に使うほど、それは強くなります」とマクゴニガルは言う。「目標に沿った選択をするたびに、脳の選択力が向上することが脳科学で証明されています。正しく練習すれば、脳も体と同じように鍛えられるのです」
マクゴニガルは、練習で重要な4つのステップをあげている。それは、

1.真の望みを知ること

2.小さなことから始めること

3.困難を認識すること

4.達成感を得ること

この4つだ。各ステップでは、望まないことに単に「ノー」と言うだけでなく、自分が望むことにはっきり「イエス」と言うことも必然的に学ぶことにもなり、最も理想とする自分自身を反映し、その支えとなる生き方をつくり出すのだ。

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by Hillari Dowdle
translation by Sachiko Matsunami
yoga Journal日本版Vol.28

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