自分自身に変化を起こす「意志力筋」を鍛えるために必要なこと
「強い意志と根性があれば、目標を達成できる。スムーズに進めないのは自分に問題があるからだ」―こんなふうに、私たちは知らずしらずのうちに、なかなか目標を達成できないことについて、自分を責めてしまう。これは目標を達成しようとするときには誰しもが経験するということは、あまり知られていない。ヨガ指導者であり、ベストセラーとなった書籍『スタンフォードの自分を変える教室』の著者としても知られる心理学者のケリー・マクゴニガル博士と、同じくヨガ指導者で心理学者のリチャード・ミラーに話を聞いた。
葛藤が起きるのは、前に進んでいる証
変化をしようとする際には必ず抵抗が起きる。それは、同じ状態を保とうとする自我が働くだけでなく、原始脳(今この瞬間、一番容易で楽しいことを望む部分)と、前頭前皮質(物事の全体像や未来の成果を見通す部分)が対立するためだ。
あなたは心のどこかで、すぐに満足感を得ようと思ったり(「クッキーが食べたい!」)、不快なことを避けたいと思ったり(「運動したくない!」)することがあるだろう。これらの感情は、変化の過程で必ず起きることだ。また、こうした内面の葛藤に向き合うたびに、本当の望み(「健康な体で、最高に幸せな自分になりたい」)を再確認するチャンスが得られる。脳には人間の持つ根本的な欲求を理解し、長い目で見て最良のものを選択する能力が備わっており、脳にその機会を与えればよい、とマクゴニガルは言う。とはいえ、こうした力が一夜で身につくわけではない。
「朝目覚めれば物事が簡単になっているはずで、そうなっていないと自分に問題がある、というように、混乱した考えを持つ人がたくさんいます。後退や失敗もある、と思わなくてはいけません。それらも目標に向かうプロセスの一部として受け入れ、認識し、あきらめずに前に進むことによって、『意志力筋』を鍛えることができるのです」
力ずくで進むより、自分を育てることが大事
さらにマクゴニガルは、何がどううまくいかないのか、じっくり考えることをすすめている。「前もって後退や失敗を予測しておけば、無事に切り抜けることができるからです」。
どのゴールへの道のりにも後退はつきものだ、と分かったら、自分自身にやさしくなってほしい、とマクゴニガルは言う。意志力を鍛えるときは、力ずくで変化に突き進もうとするのではなく、自分を育てる気持ちが重要な要素となるからだ。
「挫折しそうになったら、自分を許し、人間として当然起こるべき葛藤であると考えましょう」とマクゴニガルは提案する。「成功した誰もが同じ経験をし、耐えてきたのです。すべてのサクセスストーリーは、失敗のストーリーでもあるのです」 変化し続ける秘訣のひとつは、真我の声を見つけることだ。ネガティブな自分が声をあげはじめたら、真我をポジティブに反論してくれる内なるチアリーダーにしてしまうのだ。そうするためには、自分の好きな部分について考えたときのポジティブな感覚を思い出してほしい。その声に耳を傾けて、関係を深めていこう。「何があっても自分を愛し、サポートしてくれる自分の一部を大きく育てるのです」とミラーは言う。
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