感情的な議論から「建設的な対話」への4つのヒント|非暴力コミュニケーション(NVC)を学ぼう

 感情的な議論から「建設的な対話」への4つのヒント|非暴力コミュニケーション(NVC)を学ぼう
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難しい議論は避けられなくても、それをエスカレートさせる必要はない。今回は2人の非暴力コミュニケーショントレーナーが建設的な対話をするためのヒントを共有してくれる。

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非暴力コミュニケーション術を学ぼう

いまアメリカじゅうの友人や家族や見知らぬ者同士の間で、長年の問題である人種主義と特権についての会話がなされている。なかには初めてこの話題の議論をし、人種主義の根深さに気付き始めたという人もいる。このような会話は、多くの人にとって決して簡単ではない。防衛反応が起きたり、感情が刺激されたり、相手への理解よりも感情的な反応が勝る場合もある。会話が一気にヒートアップして、気づいた時には憤り、傷つき、意固地になって、何も進展しないこともある。

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非暴力コミュニケーション術は、会話の重要性を見直し、前に進む道を見つけるための強力なツールとなりうる。非暴力コミュニケーション(NVC)とは「意識」である、と Nonviolent Leadership for Social Justice のトレーナー、オーガナイザーのロクシー・マニングは言う。「それは世界観であり、人間だけでない全ての生命との関わり方です。あらゆる行為はニーズを満たすためのもの、という観点に基づく意識です」

マニングの同僚で、トランジショナル(変容)・トレーナーを務めるジハン・マクドナルドも彼女に同意する。「静寂を見出すために瞑想で心を整えるのとよく似ています。特定の方法で聞く、聴く、話す力を磨くことで、NVCは頼れる手段となります。客観的に観察する練習を積むので、意識が変わり、物事をより創造的に明確に見られるようになります。それが根本的な変容へとつながるのです」

本記事のために、マニングとマクドナルドが、家族や友人や仲間との会話のためのNVCの概略と活用のヒントを紹介してくれた。

1. NVCの基本

非暴力コミュニケーションでは、観察、感情、ニーズ(大事にしていること、欲求、価値観)、リクエストの4つの要素を意識しながら自己表現をし、他者の話に耳を傾ける。また初心者は、マニングがNVCトレーニングホイールと呼ぶ教材を用いて、その対話法に慣れていく。だがそれらの手段を通じてNVCの要素や対話法を理解することは、ほんの始まりにすぎない、と彼女は言う。 「それは私たちを意識に結びつけるための仕組みであって、「意識」そのものではありません。もし私たちが、”自分”対”他人”、”私たち”対”彼ら”、”正しい” 対 ”正しくない”、という支配構造から成るこの世界を理解するための方法をすべて捨て去り、その代わりに、ニーズを満たすものと満たさないものがあるという理解を深められれば、私たちは互いにつながり、世界全体をよりよく機能させるための和解法を見つけることができます」それが身につくと、私たちはまずニーズを明確にし、ある特定の人やグループに特権を与えずにニーズを満たす方法を求めるようになる。

2.個人の成長から社会の成長へ

非暴力コミュニケーションは個人の成長のツールとして体系化されたものではない、とマクドナルドは述べている。NVC意識とそれに伴う変容は、より大きな社会変革に繋がるものなのだ。「単独で起きるものではありません。人は全体の一部だから成長するのです。あなたの成長も全体の一部です。それは一人の成熟した人間として世の中に示すべき責任の一つです。その繋がりが確立できた時こそ、NVCは単なる個人的な成長ツールを超えて、実際に社会文化を変えるものとなるのです。社会文化は様々な面で人間のすべてを表しています」

NVCが個人の成長のためだけに用いられた場合、それ自体が抑圧に変わってしまう可能性がある、とマニングは言う。実際に、NVCは白人以外のコミュニティで苦痛の元にもなっている。例えば自分を落ち着かせるため、あるいは自分の人生や世の中の出来事との関わりに満足するためだけにNVCを用いると、他の人々に起きていることを悪化させることがある。もしあなたが、この世を生き抜く方法に影響を与えるシステムの存在や、それらのシステムが各自に及ぼす影響の違いを認識せずに、誰に対しても「このように思考を変えれば、心が安らぐ」と言ったら、すべての人に有効でないシステムへの異論を打ち消すために、その考え方が利用される可能性がある。「快適さや安らぎだけを得るためではなく、多くの人にとって機能していない、より大きなシステムを変える手段としてNVCを用いることが重要です」とマニングは言う。

3.痛みに気づく

「NVCでは、加害者と被害者の間の壁が壊され、誰もが傷ついているという理解に至ることがよくあります。これは多様なアイデンティティを持つ人々にとって、とてもパワフルな瞬間です」とマクドナルドは言う。特に自分たちが被害者の場合、それを実行するのは簡単ではないが、突発的に反応するよりも痛みに気づくことで非暴力コミュニケーションへの道が開かれる。「それは受動的に起きることではありません」と二人は付け加える。「自分の神経系を調整するには多くの労力を要します。ですが、神経系自体が根本的に変わる、という全く異なるオプションが生まれるのです。私たちが暮らす支配的な文化の影響としてよく見られるのは、想像力の欠如です。人は他の何かを想像することがとても苦手です。でもまず自分自身で思い描けなかったら、どのように他者に対する想像ができるでしょう?」一歩下がって、他の人が感じている痛みがわかれば、それを取り巻く状況が明らかになる。そこから共感が生まれ、様々な形で創造的な戦略を立てられるようになる。

4.好奇心を持ち続ける

「好奇心と攻撃性を司る神経回路は、実は同じです」とマクドナルドは言う。質問のやり取りによってその場の状況が緩和され、より害の少ない結果に至る可能性が高まるという。ここで鍵となるのは、真の好奇心だ。他の人と繋がりを築くことに重きを置くと、意見の相違があっても相手の背景を理解しようとするため、親近感が生まれる。マクドナルドによると、質問を投げかけることで相手の神経系の機能にも変化が生じる。例えば帰属意識のような生存を左右する何かが脅かされた時に引き起こされる生理反応、つまり本能的な怒りから離れて、好奇心に満ち、思慮深く、かつ開かれた状態に変わるという。「大抵の場合、自分自身や相手について学ぶことができます」

自分自身と他の人々に好奇心を持つと、自然と傾聴するようになる。そこから理解が生まれ、自分の思いを出し合うことで癒しが起こる。相手に率直に表現してもらう際には、相手がそれを望んでいて、なおかつ、あなたの満足感のためだけに相手に強要しないことが重要です、とマニングは語る。相手が自身について話してくれる時、私たちは彼らの痛みを認め、それに共感し、膠着していた議論から離れて解決への真の一歩を踏み出す機会を得ることができる。

質問は、相手の根底にあるニーズだけでなく、自分自身についての発見にもつながる何かを明らかにする。それが明確になれば、互いの間に橋を架けて関係を築き始めることができる。マニングは自分自身に質問を投げかけ、なぜ自分がそのように感じるのかを分析する実践を行っている。例えば、彼女はジョージ・フロイド(2020年5月にアメリカで白人警官に殺された黒人男性)について自分に質問をし、自分自身のニーズの層をはがしながら大元にあるニーズへとつながっていく。「私は何を必要としている?」と、彼女はまず自分に問いかける。「何かを認めてもらうこと。 こんなことは許されない、という世の中への怒りかもしれない。”なぜ私にはそれが必要? 私にとってどう役立つ?” ”最終的には自分たちが立ち上がって黒人に起きている暴力に終止符を打ちたい”、という具合に、私は自分に対して延々と質問できます。そして最後には、自分を支える思いにたどり着きます。”私はすべての人の価値が尊重され、評価され、大切にされる、人種の影響を受けない世界に住みたい” 」

ヨガジャーナルアメリカ版/「4 Ways to Communicate Effectively This Week

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by Hannah Lott-Schwartz
translation by Sachiko Matsunami



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