慢性ストレスが健康に及ぼす被害|ストレスを緩和するのに効果的な6つの方法とは
極度の疲労、ブレインフォグ(頭のもやもや感)、気分変動は、燃え尽き症候群や副腎疲労が原因だとされる話を聞いたことがあるかもしれない。だが専門家たちは、その正確な診断は難しいとしている。では、私たちを苦しめるその副腎疲労とは何だろうか。そして、なぜヨガが効果を奏するのか。慢性ストレスが健康に及ぼす影響について見直しながら、それらを見てみよう。
ストレスがもたらす危機
ぺースが速く、常にオン状態の私たちの社会では、「燃え尽き」「ストレス」「疲労」といった言葉が(控えめに言っても)常に飛び交っている。だから「副腎疲労」が流行言葉になるのも無理はない。だが副腎疲労とは何だろう?実際には「21世紀のストレス症候群」の別名であり、慢性的な疲労感による不調を指す。
では、副腎疲労とは何か?この漠然とした物議を醸す病気は、副腎が酷使されることによる慢性疲労や睡眠障害、消化器障害、認知障害、過食症などを含む全般的な症状を指す(副腎は腎臓の上部に2つある三角状の内分泌腺で、ストレス時にコルチゾールとアドレナリンという刺激性のホルモンを分泌する)。「人々が感じるストレスの度合いは高くなる一方です」とジェフリー・デュゼック医学博士は言う。博士はマサチューセッツ州ストックブリッジのクリパルセンター・ヨガ&ヘルスの統括研究官、心理学研究官であり、心身医学のパイオニアであるハーバート・ベンソンと共に身体のストレス反応について研究を重ねている。だが副腎疲労と診断されることはあっても(たいていは自己診断だが)、医学界の大半はそれを正式な病気と認めていない。内分泌学会やメイヨークリニックも、病気とする科学的な根拠はないと口を揃えている。また2016年に、『BMC Endocrine Disorders』誌上で発表された58の研究レビューにおいても「副腎疲労を内科的疾患とみなす実証はない」と結論付けられている。彼らは、各症状はうつや甲状腺機能低下症などの病状が原因である可能性が高いと考えており、副腎疲労と診断してしまうことで本当に必要な治療が遅れることを懸念している(誤解のないようにいうと、本当の副腎機能障害や自己免疫疾患はアジソン病と呼ばれ、非常にまれな病気である)。西洋医学者たちが副腎疲労をなかなか病気と認めない理由は、過敏性腸症候群や慢性疲労症候群、グルテン過敏症と同様に「診断しづらい症状」のためではないか、とデュゼック博士は推測している。また、「副腎疲労」という名前自体が混乱の元だと唱える医学者たちもいる。「副腎疲労というと、小さな副腎が疲労してコルチゾールもアドレナリンも分泌できなくなり、そのせいで元気がなくなるように聞こえてしまいます」と自然療法医で機能性医学の医師であるブルック・カラニックは言う。「そうではありません。実際は慢性的に続くストレスによって、脳と副腎が本来の関係を保てなくなるのです」
ストレスを受け続ける身体
ほとんどの専門家たちの間では、副腎が日々の活動レベルを維持するのにきわめて重要な役割を果たしているという点で意見が一致している。それを理解するために、少しだけ神経化学の話をしよう。コルチゾールとは主要なストレスホルモンだ。健康体の場合、コルチゾールは24時間周期で分泌されている。通常は午前5時頃に最も分泌量が増え、それから徐々に減っていって就寝時に最も低くなる、とカラニックは説明する。普段からよく休息し、ストレスケアもしている人なら、朝の一杯の青汁と数回の太陽礼拝で一日を気持ちよく始められるだろう。夜になればコルチゾールが自然に減ると同時に睡眠ホルモンのメラトニンが分泌されるので、寝付きもいいはずだ。コルチゾールは、脳が差し迫った危険を察知すると、アドレナリンというもうひとつのストレスホルモンと一緒に一気に大量分泌される。すると、視床下部—下垂体—副腎軸と呼ばれるシステムに沿って光の速さで化学反応が起こる、とカラニックは説明する。「まず視床下部(神経系とやりとりをする脳の一部分)から下垂体(オーケストラの指揮者のように体のさまざまなホルモンを取りまとめている)に信号が伝達され、そこで身体を行動に駆り立てるための闘争・逃走反応が引き起こされます」と言うのは、ワシントンD.C.在住の米国ストレス研究所の研究員でライフコーチでもあるシンシア・アクリル医学博士だ。それによって刺激された副腎からアドレナリンが分泌されるので、危険に対してすばやく反応できるというわけだ。最初の急激なホルモン分泌がおさまるにつれ、視床下部は2回目の連鎖反応を起こす。だが今度は警戒態勢を維持するために、直接副腎に対してコルチゾールを分泌するように命令する。そして危険が去ると、副腎は視床下部に対して鎮静するようにメッセージを送り、闘争・逃走状態とは反対の、いわゆる「休息と消化」という身体を回復する状態に入る。だが私たちは仕事、人間関係、介護、過度な運動、大量のやるべきことなど、ストレスだらけの世界に生きている。アメリカ心理学会が大統領選後に実施した調査によると、アメリカ人のほぼ半分がストレスのせいで夜眠れない状態にあることがわかった。絶えず警戒態勢にある私たちの脳はこれらのストレス要因をすべて危険物とみなし、その結果コルチゾールが分泌され続ける。数百万年前は、サーベルタイガー(剣けんしこ歯虎。ネコ科の食肉獣)から逃げる時に栄養ドリンク並みのエネルギーが必要だったので、コルチゾールが大量分泌される必要があった。だが、現代の賢い脳をもってしても「この間抜けなコンピュータが自分を困らせている」とは判断できず、「この虎は自分を襲っている」と認識してしまうのです、とマサチューセッツ州ニュートンの機能性医療の産婦人科医であるウェンディ・トゥルボウ医学博士、経営学修士は言う。
ストレスが深刻化すると……
習慣的なストレスは、気づかないうちに健康に長期的影響を及ぼす深刻なものになる可能性がある。クリパルセンター・ヨガ&ヘルスの統括研究官であるジェフリー・デュゼック医学博士は、慢性的にストレスを感じている人や、睡眠、認知、消化、人間関係に問題がある人は、医師に相談するように、と勧めている。特に機能性医療や統合医療の医師であれば、甲状腺機能低下症、貧血、うつなどによく似た症状を見極めながら、視床下部—下垂体—副腎軸に異常(HPAD)(詳細は102ページを参照)があるかどうかを判断してくれるだろう。HPA-Dは唾液に含まれるコルチゾール濃度を1日に4回測定して判定する。「コルチゾールが分泌されるタイミングやリズムに加えて、コルチゾールの分泌量もわかります」と機能性医学博士のブルック・カラニックは説明する。また、医療従事者ならプレグネノロンやDHEA(デヒドロエピアンドロステロン)などの主要な副腎皮質ホルモンや、女性ホルモンであるプロゲステロンとエストロゲンなどの甲状腺ホルモンの濃度も測定してくれるはずだ。診療の際には、自分の活力やストレス状態、栄養状態、食欲、カフェイン摂取状況、過食、睡眠習慣についても報告しよう。いわゆる「燃え尽き症候群」の症状があるなら、仕事に関わる状況に目を向けるべきだろう。症状としては、皮肉な考え方、無力感、極度の疲労の3つが挙げられる。これらの症状を抱えていたヨガセラピストでソマティック運動教育者のドナ・ブルックス(58歳)は、クラスではいつも完璧なアーサナに近づけることを追求し、神秘的な雰囲気づくりを心掛けていた。「ヨガの目的はリラクセーションのはずなのに、人々が考えるヨガらしい場をつくることがストレスになっていたわ」と彼女は言う。「多くのヨガティーチャーは、最高潮の状態でい続けることにプレッシャーを感じていて、それがものすごいストレスや緊張を生み出すの。生理的にも精神的にもね」。機能性医学の医師がブルックスのコルチゾールを測定すると、高い数値が出た。だが、コルチゾール値が高いからといって副腎機能不全というわけではない。彼女の治療計画はHPA-Dの治療とよく似ていた。アダプトゲン(ストレスを軽減するハーブ)の摂取によるセルフケアや、ソマティックヨガ(ゆっくりとしたシンプルな動きで神経系を鎮静化させるヨガ)、そして完璧主義をやめる努力をすることだった。
慢性ストレスの代償
イソップ寓話で最後には村人たちがオオカミ少年の言葉を無視し始めたように、視床下部も絶えずストレスがあると次第に副腎からの反応に鈍感になり、必然的にコルチゾール値も不安定になる。「するとコルチゾールが本来のサイクルのタイミングで分泌されにくくなり、その結果、適切でない時間にコルチゾール値が高くなったり低くなったりするのです」と、カラニックは言う。たとえば、夜にコルチゾール値が急上昇してしまい(本来は低くなる)、疲れてベッドに入っても目がさえてしまう人もいるだろう。または朝方にコルチゾール値が一気に下がり(本来は高くなる)、ベッドからなかなか起き上がれない人もいる。このようにコルチゾールが乱高下するようになると、最初に睡眠障害や活力低下の症状が現れる。だが回復睡眠の不足による頭痛、イライラ感や、ブレインフォグと呼ばれる認知障害などの危険信号もある。また「女性の多くに月経不順がみられます」と言うのは、西洋医学の産婦人科医として訓練を受けたのちに、機能性医療の道に進んだトゥルボウ博士だ。常にストレス状態にある脳は至る所に危険があると察知して過剰にコルチゾールを分泌するために卵巣機能が低下するのだ。「生存本能は生殖本能より強いのです。だから身体は逃走するために卵巣ではなく脚にエネルギーを送ろうとするのです」とトゥルボウは言う。消化器障害もよくある症状だが、過剰なコルチゾール分泌により胃酸の分泌が減ることが原因だ。「食べ物をしっかり消化できないため腹部にガスがたまったり、膨満感や下痢が起こるのです」とトゥルボウは説明する。コルチゾール値が高い状態が長期に及べば栄養欠乏症に至ることもある。また、過食症になる可能性も高い。塩分を欲するのもよくみられる症状で、これは副腎がアルドステロンという身体の塩分バランス(結果として血圧も)を維持するホルモンを生成するためだ。メイヨークリニックによると、副腎ホルモンの過剰分泌によって塩分バランスが崩れると、塩分をやたらと欲するようになったり、低血圧も引き起こす。また、過剰なコルチゾール分泌は体幹部の脂肪蓄積も引き起こします、とトゥルボウは言う。コルチゾール分泌の増加により血糖値が上昇し、最終的には脂肪として腹部に蓄えられるためだ。これまで述べた症状は一般的に副腎疲労が原因とされるが、専門家たちは正確には視床下部―下垂体—副腎軸の異常(HPA-D)である、と唱えている。「脳から副腎へとつながるHPA軸については、よく知られて広く研究がなされています」とアクリルは言う。HPA軸によって制御されていたストレスホルモンが過剰に分泌されると、エネルギー生成や睡眠、性ホルモンの生成、免疫システムの修復に至るまで、体中すべてのシステムが狂うことが数十年の調査により立証されている。HPA-D、副腎疲労、燃え尽き症候群、慢性ストレス……どのように呼ぼうとも、ひとつだけ確かなのは、神経系が神経質になりすぎた状態にあるという点だ。セルフケア(自己療法)は重要です、とアクリルは言う。「社会には、優れたセルフケアなんて利己的だと思わせる風潮があります。だから私たちは体のエンジン警告灯が点灯してもそれを無視し、体よりもヨガの道具を大事にしてしまうのです」今回紹介する練習はどれも治療プロセスにはずみをつけてくれるだろう。そして活力を蘇らせてくれるはずだ。ただし、一度にすべてをやらないようにしよう。「ストレスを感じるような辛い練習は必要ありません」とカラニックは言う。
1.道具を利用しよう
今必要なのは激しいヴィンヤサや速いペースの練習やホットヨガではない。それらはHPA-Dの症状がある人には負荷が高すぎる。だが症状が出ている人ほど、ヨガの練習が必要だ。カリフォルニア州デル・マー在住の睡眠研究者で、アイアンガーヨガの認定指導者のロジャー・コール博士は、動きが少なく、プロップで姿勢を補助するリストラティブヨガから始めることを勧めている。「伝統的な休息のポーズで、なおかつ補助具のサポートを得ることで、完全にリラックスできるからだ」とコールは言う。ヴィパリタカラニ(壁に脚を上げるポーズ)では骨盤の下にたたんだブランケットを、サーランバスプタバッダコナーサナ(支えのある横たわった合せきのポーズ)では頭、背中、膝の下にブランケットやボルスターを入れてみよう。
2.ヨガニードラを試そう
シャヴァーサナ(亡骸のポーズ)の時の、平安でありながらもエネルギーが湧いてくる感覚が好きな人は、ヨガニードラを行うと良いだろう。このシンプルな誘導瞑想によって、覚醒しながらも脳波が深い睡眠時と同じ状態になれる。「45分のヨガニードラの後は、まるで3時間寝たような気分になります」と、『Daring to Rest:Reclaim Your Power with Yoga Nidra Rest Meditation』の著者カレン・ブロディは言う。「科学的に裏打ちされた瞑想の効果のすべてを享受できて、さらに睡眠の効果も得られます。まさに21世紀のパワー・ナップ(昼寝)です」その効果の理由は、ヨガニードラで行う深い呼吸によってリラクセーション反応が起きるためだ。「脳はたくさんの活動で目覚めている状態から、リラックスした状態に入り、気分を落ち着かせるホルモンのセロトニンが分泌されます」とブロディは説明する。やがて回復のための脳波状態に入り、思考の速度が落ちて過剰なコルチゾールが減る。「常にエネルギー全開のスピード社会で、定期的にこの状態に入る人はほとんどいません。その結果、私たちの体は常にパワー不足で、回復する機会も得られないのです」
3.良いものだけを取り入れよう
不安を煽るようなニュースや暴力を叫ぶ見出しの数々。ソーシャルメディアは敵対し合う政治的な投稿でいっぱいだ。「悪いニュースを多く見聞きすると、脳内は危険信号で飽和状態になります」とアクリルは言う。気が滅入るようなニュースはできるだけ避けて、dailygood.orgやgoodnewsnetwork.orgのようなサイトでポジティブなニュースを日々見てみよう。
4.人とつながろう
幸せホルモンのオキシトシンは喜びを感じたときに分泌される。例えば授乳時や友人と過ごしているときでもだ。支えてくれると感じられる友人といると、特に女性はオキシトシンの分泌により満足感が得られる。有史以前の時代から女性たちは生存や子育てを互いに助け合ってきたからです、とデンバー在住の心理療法士、シェリル・ジーグラー博士は説明する。だから特に女性は、一緒に話したり、ストレスを発散したり、笑いあえる友人を見つけよう。「女性ホルモンのエストロゲンがオキシトシンを増幅させるので、女性は男性よりもオキシトシンの効果をより強く感じるのです」。大半の患者たちは、心身のストレスを軽減させるさまざまな方法や食事療法、治癒的な運動を組み合わせることにより、健康な状態を取り戻している。
5.アーユルヴェーダの効果を活用しよう
アーユルヴェーダでは、視床下部ー下垂体ー副腎軸の異常(HPA-D)は、3つの異なる生命エネルギー(ドーシャ)のひとつであるヴァータの乱れによるものとされている(他の2つはピッタとカパ)。「ヴァータには2種類のタイプがあります」と言うのは、認定アーユルヴェーダ・プラクティショナーでLifeSpa.com創立者のジョン・ドゥイラードだ。プラーナヴァータは頭に存在し、神経系機能をサポートしている。下に向かうエネルギーのアパーナヴァータは骨盤付近に位置し、副腎や生殖、排泄機能をサポートしている。「マインドと身体にストレスがかかると、下に向かうヴァータはそのストレスに対処するために上に向かい」副腎のエネルギーが枯渇する(多くの人がストレスで胃が痛くなったり、女性が月経異常を起こすのはこのためだ)。次のアーユルヴェーダ治療を組み合わせて行うと、HPA-D患者のほとんどが2週間以内に症状の緩和を実感する、とドゥイラードは言う。
旬の食物を摂取する
果物や野菜によって土壌のエネルギーを内臓に取り込むことで、ストレス時に低下する免疫力が高められる。
前屈を含むヨガポーズの練習
アパーナヴァータの流れが下向きに戻る。
瞑想
定期的な瞑想練習によって、サットヴァの状態や平安で穏やかな心の状態をつくる。
自分自身にアビヤンガやオイルマッサージを施す
アーユルヴェーダでは、マッサージは自分の体とのつながりを高めるだけでなく、ホルモンバランスを整えたり免疫を改善する働きもあるとされている。「肌の1平方センチメートルには少なくとも1000の感覚ニューロンがあります。片方の腕だけでもオイルでマッサージすると、百万以上のニューロンを鎮静できるのです」とドゥイラードは言う。また、マッサージによってオキシトシンが活性化し、オイルで皮膚微生物叢が健康に保たれ、その結果、免疫力が上がる。
アダプトゲンハーブを取り入れる
「素晴らしいことに、アダプトゲン(天然ハーブ)は、コルチゾール値が高くても低くても、体中に行き渡っていても利用できるのです」と機能性医学博士のブルック・カラニックは説明し、なかでもロディオラ(イワベンケイ)を勧めている。ロディオラはストレスによるアドレナリンの働きを抑制し、長期のストレスによる免疫低下を抑える。また、ホーリーバジル(トゥルシー)も血糖値を正常化し、持久力や幸福感を高めてくれる。
6.「闘争・逃走反応」を静める5つの坐位のポーズを習慣に
オハイオ州リンドハーストにあるクリーブランド・クリニック・ウェルネス・インスティテュートでヨガセラピスト、ヨガプログラムマネージャーを務めるジュディ・バーは闘争・逃走反応を静めるシークエンスを編み出した。「筋肉の緊張をほぐし、呼吸を安定させて、心を静めるのが目的です」と彼女は言う。「これらのポーズで、ストレスホルモンの分泌がスローダウンします」。そのすごい効果を聞きたい?体中のシステムに働きかけるので、各システムがより効果的に健康的に機能するようになる。このシークエンスを一度にすべて行ってもいいし(就寝前が効果的だ)、一日のうちで何回かに分けて各ポーズを練習してもよいだろう。
1.坐位の山のポーズ
安定した椅子の前のほうに腰掛ける。背骨を長くして、ややあごを引き、肩甲骨同士を無理なく寄せる。おへその中心を背骨のほうに引き込んで、腰を伸ばす。必ず足は腰幅に開き、膝は腰に対して直角に曲げる(足が完全に床につかない場合は、ブロックや本を置いて、足の裏がぴったりつくように調整する)。手のひらを上に向け、両手の小指と薬指の先をそれぞれつける。その手を腿の上に下ろしておへその下あたりに置く。できるだけ筋肉を使わないようにしながら、快適であれば目を閉じる。自然な呼吸を数回行った後、4つ数えながら息を吸い、少し止める。6つ数えながら息を吐いて、少し止める。このパターンを5回繰り返した後に自然な呼吸を数分間行う。この一連の呼吸をさらに5回繰り返す。
効果
支えのある坐位のポーズに、呼気を長くする穏やかな横隔膜呼吸とムドラを併せることで、リラクセーション反応を誘導できる。
2.坐位の支えのある子供のポーズ
坐位の山のポーズの姿勢から、背筋を伸ばして、おへそを背骨のほうに引き込み、足裏で床を押す。息を吸って上体を前に倒し、両肘と前腕をテーブルか机の上にのせる。ゆっくりと頭を下げていき、たたんだタオルか枕など柔らかいものの上に額をのせて休ませる。
効果
このポーズは腰椎まわりの血流を促進し、副交感神経系の主要な神経である迷走神経を調整する。
3.坐位の猫のポーズ
坐位の山のポーズの姿勢に戻り、手のひらを下にして両手を太腿に乗せる。大地とつながるように深い呼吸を5回行う。一度息を吸い、吐きながら背中を猫のように丸めて肩甲骨の間を広げ、あごを引いておへそを覗き込む。息を吸いながら背骨を長く伸ばして、坐位の山のポーズに戻る。次に息を吐くときに、ややあごを引いたまま上体を前に傾け、背中を反らせて手で太腿を押しながら体重をかける。この動作を3回繰り返し、終わったら坐位の山のポーズに戻って数回呼吸をする。
効果
坐位の猫のポーズは体の前面と背面の筋肉を和らげ、緊張をゆるめ、神経系をサポートしてくれる。上体の血流が促されることで、より多くの酸素が体内システムに行き渡り、活力が生み出される。
4.坐位で両脚を伸ばした前屈
坐位の山のポーズの姿勢から、お尻を椅子の座面の前方にずらす。両手を太腿の上に置いて、背中の筋肉をリラックスさせ、緊張をゆるめる。背骨を長く伸ばして、おへそを背中のほうに引き込みながら、片方の脚を前に伸ばし、もう一方の脚も伸ばしたら、かかとだけを床につけて足首を直角に曲げる。息を吸いながら、背骨を伸ばして、あごをやや引いて首を長くしたまま、脚の付け根からゆっくりと上体を前に倒していく。抵抗を感じたところで前屈を止め、息を吐く。そのまま一度深い呼吸をし、次に息を吐くときにさらに背骨を伸ばしてストレッチを深める。このまま数分間、あるいは自分で十分と思えるまでホールドする。
効果
この身体の背面のストレッチでは、息を吐きながら、身体や足裏にある緊張や刺激に気づくことができる。このポーズはマインドを静め、身体ストレスを和らげてくれる。
5.楽な坐位で行うナーディショーダナ(片鼻呼吸法)
坐位の山のポーズの姿勢から背中を椅子の背につけて、楽に座る。数回呼吸をしたら、片鼻呼吸法を始めよう。右手の親指で右の鼻孔を押さえて閉じ、左の鼻腔から息を深く吸う。次に中指と薬指で左の鼻腔を閉じて、右の鼻腔から息を出す。右の鼻腔から息を深く吸ったら親指で閉じ、左の鼻腔を開いて息を出す。これで1サイクルとなる。5サイクルを繰り返したら、自然な呼吸を数回行う。さらにナーディショーダナを5サイクル繰り返し、シークエンスを終える。
効果
この呼吸法は呼吸の速度を落とし、右脳と左脳のバランスを整えることにより、ストレスや不安を和らげてくれる。
ライター/レスリー・ゴールドマン
イリノイ州シカゴ在住のライター。
モデル/トレーシー・ガルシア
コロラド州コロラドスプリングスのIntegratedVinyasaのヨガティーチャー。Colorado School of Yogaの学生部長でもある。
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