「血圧を下げても心臓病のリスクが残る」のはなぜ?血圧以外に注目したい心血管リスクとは
健康診断で血圧が高いと言われ、食事に気をつけたり、薬を飲んだりして、ようやく数値が落ち着いてきた。「これでひと安心!」と思いたいところですよね。もちろん、血圧をきちんと管理することは、とても大切です。脳卒中や心筋梗塞などのリスクを減らすことにつながります。ただ、ここで知っておいてほしいことがあります。それは、血圧が正常になったからといって、心臓や血管の病気のリスクがゼロになるわけではない、ということです。血圧を下げてもリスクが残る理由と、血圧以外に気をつけたいポイントについて、医師がお話しします。
血圧が下がったのに、なぜ安心しきれない?
「えっ、血圧を下げても、まだ気をつけないといけないの?」と思うかもしれませんね。
実は、心筋梗塞や脳卒中などの発症には、血圧だけでなく、コレステロール、血糖値、喫煙、腎臓の状態、年齢など、さまざまな要因が関係しています。
まず、血圧が高いと何が問題なのか、簡単に整理しておきましょう。
血圧が高い状態が長く続くと、血管の壁には強い負担がかかります。その結果、血管が硬くなったり、動脈硬化が進んだりすることがあります。
心臓も、血液を送り出すために余分な力が必要になります。こうした負担が積み重なることで、心筋梗塞や心不全、脳卒中などのリスクが高まるのです。
では、薬などで血圧を下げれば、これまでの影響もすべて元に戻るのでしょうか。
残念ながら、そうとは限りません。
長年の高血圧によって血管や心臓に変化が起きている場合、血圧が改善しても、その影響がすぐになくなるわけではありません。
また、血圧以外の要因によって動脈硬化が進んでいることもあります。
例えば、血圧は正常でも、LDLコレステロールが高かったり、糖尿病があったり、たばこを吸っていたりすれば、血管には別の負担がかかります。
つまり、血圧の管理は大切ですが、それだけですべてのリスクを管理できるわけではないのです。
見落としたくないのが「悪玉コレステロール」
血圧以外で、ぜひ気にしてほしいのがLDLコレステロールです。
いわゆる「悪玉コレステロール」と呼ばれるもので、血液中に多い状態が続くと、動脈硬化の進行につながります。
血管の壁にコレステロールなどがたまると、少しずつ血管の内側が狭くなったり、血管の壁にプラークと呼ばれるかたまりができたりします。
このプラークが破れると、血液のかたまりができて血管をふさいでしまうことがあります。心臓の血管で起きれば、心筋梗塞につながる可能性があります。
ここで注意したいのは、コレステロールが高くても、通常は自覚症状がほとんどないということです。
胸が痛いわけでも、息切れがするわけでもない。本人は元気そのもの、ということも珍しくありません。
「血圧は正常だから大丈夫」と思っていても、LDLコレステロールが高い状態を放置していれば、動脈硬化のリスクは残ります。
健康診断では、血圧だけでなく、LDLコレステロールやHDLコレステロール、中性脂肪なども確認しておきましょう。
血糖値が高い状態も、血管には負担になる
もうひとつ気をつけたいのが、血糖値です。
血糖値が高い状態が長く続くと、血管の内側にある細胞などがダメージを受け、動脈硬化が進みやすくなります。
特に糖尿病のある人は、心筋梗塞や脳卒中などのリスクが高くなることが知られています。
しかも、糖尿病は初期には自覚症状が乏しいことがあります。「特に体調は悪くないから」と放っておくうちに、知らないところで血管への負担が積み重なっていることもあるのです。
血糖値を確認するときは、健康診断の空腹時血糖だけでなく、過去1〜2か月ほどの血糖の状態を反映するHbA1cも参考になります。
血糖値が少し高いと指摘された段階で、食事や運動などを見直しておくことが大切です。
すでに糖尿病と診断されている場合は、自己判断で治療を中断せず、医師と相談しながら血糖値を管理していきましょう。
たばこは血管にとって、やはり大きなリスク
血圧やコレステロールの数値を気にしていても、喫煙の影響を見落としている人は少なくありません。
たばこに含まれる有害物質は、血管の内側の細胞にダメージを与え、血管の働きを低下させます。また、血液が固まりやすくなることなども、心筋梗塞や脳卒中のリスクに関係します。
ここで覚えておきたいのは、たばこのリスクは血圧の数値だけでは評価できない、ということです。
例えば、血圧が正常で、健康診断の結果もそれほど悪くない人でも、喫煙を続けていれば心血管疾患のリスクは高まります。
「血圧もコレステロールも正常だから、たばこくらいは大丈夫」という考え方は危険です。
禁煙は、年齢にかかわらず、健康を守るために取り組む価値があります。自力でやめるのが難しい場合は、禁煙外来などを利用する方法もあります。
腎臓の状態も、心臓や血管とつながっている
意外に思われるかもしれませんが、腎臓の状態も心血管リスクに関係しています。
腎臓は、血液をろ過して老廃物や余分な水分を排出する臓器です。それだけでなく、体内の水分量や塩分のバランスを調整し、血圧の維持にも関わっています。
腎臓の働きが低下すると、血圧が上がりやすくなることがあります。反対に、高血圧が長く続くと、腎臓の血管が傷つき、腎機能が低下することもあります。
つまり、腎臓と血圧は、お互いに影響し合っているんですね。
慢性腎臓病がある人では、心筋梗塞や心不全などのリスクも高くなることが知られています。
腎機能の低下も、初期には症状が出にくいものです。健康診断では、血清クレアチニン値やeGFR、尿たんぱくなどの結果にも目を向けてみてください。
年齢や家族歴も、リスクを考える手がかり
ここまで、コレステロールや血糖値、喫煙、腎臓についてお話ししてきました。
そのほかに、年齢や家族歴も心血管リスクを考えるうえで大切な要素です。
年齢を重ねると、血管の弾力性が低下したり、動脈硬化が進みやすくなったりします。また、親やきょうだいなど近い血縁者に、若い年齢で心筋梗塞などを起こした人がいる場合は、遺伝的な体質などが関係している可能性もあります。
もちろん、年齢を重ねたからといって、必ず心臓病になるわけではありません。家族歴があっても、発症が決まっているわけではありません。
ただ、自分では変えられない要因があるからこそ、血圧やコレステロール、血糖値など、対策できる部分をきちんと管理することが大切になります。
大切なのは、ひとつの数値ではなく「全体を見る」こと
では、具体的に何をすればよいのでしょうか。
まずは、健康診断の結果をまとめて確認することから始めてみてください。
血圧だけでなく、LDLコレステロール、血糖値やHbA1c、腎機能、尿たんぱくなどもチェックします。喫煙しているか、運動する習慣があるか、体重が増え続けていないか、といった生活面も大切です。
そして、異常を指摘された項目があれば、必要に応じて医療機関で相談しましょう。
治療が必要かどうかは、検査値だけでなく、年齢や持病、これまでの病歴などによっても変わります。薬を使う場合も、血圧やコレステロールなど、それぞれの状態に合った治療を選ぶことが大切です。
もちろん、食事や運動などの生活習慣も欠かせません。
塩分をとりすぎない、野菜や魚を取り入れる、無理のない範囲で体を動かす、十分な睡眠をとる。どれも特別なことではありませんが、続けることで健康を支えてくれます。
血圧が下がったら、次の一歩へ
血圧が改善したことは、とてもよいことです。これまでの努力を、ぜひ続けてください。
ただ、血圧が下がったからといって、心筋梗塞や脳卒中のリスクが完全になくなるわけではありません。
血管の健康には、コレステロールや血糖値、喫煙、腎機能、年齢など、いくつもの要因が関わっています。
だからこそ、血圧だけを見て安心するのではなく、健康診断の結果を全体的に確認しておくことが大切です。
「血圧はよくなったけれど、コレステロールはどうだろう?」「血糖値は大丈夫かな?」
そんなふうに、少し視野を広げてみるだけでも、健康管理の質は変わってきます。
体調がよいと、つい健康のことを後回しにしがちです。でも、心臓や血管の病気は、自覚症状がないまま進んでいることもあります。
今の自分の状態を知り、できることを少しずつ続けていく。それが、将来の心臓や血管を守るための大切な一歩になります。
今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。
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