「肺の血管の血圧が高くなる病気」がある?普通の高血圧とは異なる肺高血圧症の症状と最新研究

「肺の血管の血圧が高くなる病気」がある?普通の高血圧とは異なる肺高血圧症の症状と最新研究
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甲斐沼 孟
甲斐沼 孟
2026-10-24

「血圧が高いですね」と言われたら、まず思い浮かぶのは、健康診断で腕に巻いて測る血圧ではないでしょうか。でも、実は血圧が高くなる場所は、そこだけではありません。心臓から肺へ血液を送る血管の血圧が高くなる「肺高血圧症」という病気があるんです。今回は、肺高血圧症とはどんな病気なのか、どんな症状に気をつければよいのか、そして最近の治療はどこまで進んでいるのかを医師がお話しします。

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肺の血圧が高くなると、何が起こる?

「肺にも血圧があるの?」と驚く方もいるかもしれませんね。一般的な高血圧とは少し違う病気ですが、放っておくと心臓に大きな負担がかかることがあります。

特に気をつけたいのが、階段を上ったときや、少し歩いただけなのに息が切れるといった症状です。

まず、血液の流れを簡単に整理してみましょう。

心臓は全身に血液を送り出していますが、その血液を肺へ送る役割も担っています。肺に届いた血液は酸素を受け取り、再び心臓に戻ってから全身へと流れていきます。

ところが、肺へ血液を送る血管の血圧が高くなってしまうと、血液を送り出すために心臓はいつも以上に頑張らなければなりません。

これが肺高血圧症です。

原因はいろいろあります。肺の血管が狭くなったり、血管の壁が変化したり、血栓が詰まって血液が流れにくくなったりすることなどが関係します。

こうした状態が続くと、心臓の右側にある「右心室」に負担がかかります。

最初は何とか頑張れていても、長い間負担が続けば、心臓も疲れてしまいます。やがて血液を送り出す力が弱まり、心不全につながることもあるのです。

普通の高血圧とは、どう違うの?

一般的な高血圧は、全身に血液を送り出す際の血圧が高い状態です。一方、肺高血圧症では、肺へ血液を送る血管の血圧が高くなります。

一般的な高血圧をそのままにしておくと、脳卒中や心筋梗塞、腎臓病などのリスクが高まります。

肺高血圧症では、肺へ血液を送り出す右心室への負担が問題になります。進行すると、息切れや足のむくみなどが現れ、心臓の働きが低下することもあります。

もうひとつ、知っておいてほしいことがあります。

肺高血圧症は、ひとつの原因で起こる病気ではありません。肺の血管そのものに問題がある場合もあれば、心臓の病気や肺の病気、血栓が関係している場合もあります。

つまり、同じ「肺の血圧が高い」という状態でも、原因は人によって違うんですね。

原因が違えば、治療法も変わります。だからこそ、まずは何が原因なのかを調べることが大切です。

「最近、息切れしやすい」は見逃さないで

肺高血圧症でよくみられる症状のひとつが、体を動かしたときの息切れです。

例えば、こんな変化はありませんか?

  • 以前は平気だった階段で、息が切れるようになった
  • 少し歩いただけなのに、疲れて休みたくなる
  • 動悸がしたり、胸が苦しくなったりする
  • 足がむくみやすくなった
  • 立ちくらみがしたり、気を失いそうになったりする

初めのうちは、運動したときに息が切れるくらいで、座って休んでいれば気にならないこともあります。

そのため、「最近、体力が落ちたのかな」「年齢のせいかもしれない」と考えてしまいがちです。

もちろん、息切れがあるからといって、すぐに肺高血圧症を疑う必要があるわけではありません。貧血や心臓の病気、肺の病気などでも、息切れは起こります。

ただ、以前より明らかに息切れしやすくなったり、少し休んでもなかなか回復しなかったりする場合は、一度医療機関で相談してみてください。

特に、突然の失神や強い胸痛、安静にしていても続く激しい息苦しさがある場合は、救急受診が必要です。

「たいしたことはない」と我慢し続けないことが大切です。

どんな検査でわかるの?

肺高血圧症が疑われた場合、まずは心臓や肺の状態を調べます。

よく行われるのが「心エコー検査」です。超音波を使って心臓の動きや大きさを確認し、右心室に負担がかかっていないかなどを調べます。

心エコー
イラスト/Adobe Stock

そのほか、血液検査や胸部CT、肺の血流を調べる検査なども行われます。血栓が原因になっていないかを確認することも大切です。

さらに、必要に応じて「右心カテーテル検査」が行われます。細い管を血管から心臓付近まで進め、肺の血圧などを直接測定する検査です。

心エコー検査は、肺高血圧症を疑うための大切な手がかりになります。ただし、それだけで確定診断できるとは限りません。検査結果を総合的に判断していきます。

治療は進歩している!新しい薬にも期待

肺高血圧症は、以前は治療が難しい病気とされていました。

でも、現在は薬の開発が進み、治療の選択肢が増えています。特に「肺動脈性肺高血圧症」というタイプでは、血管を広げる働きを助ける薬などが使われています。

病気の状態によっては、複数の薬を組み合わせて治療することもあります。最近は、これまでとは異なる仕組みに働きかける薬にも注目が集まっています。

肺高血圧症では、血管が狭くなるだけでなく、血管の細胞が異常に増えるなど、血管そのものに変化が起きていることがあります。こうした病気の仕組みに着目した治療薬が開発され、治療の幅が広がってきました。

また、血栓が原因の場合には、血栓を取り除く手術や、カテーテルを使って血管を広げる治療が選択肢になることもあります。

ただし、ここは少し注意したいところです。

肺高血圧症なら、誰でも同じ薬を使えばよいというわけではありません。心臓の病気が原因なのか、肺の血管そのものに問題があるのか、血栓が関係しているのかによって、適切な治療は異なります。

新しい薬や治療法の研究は今も進んでいます。これからさらに研究が進めば、病気を早い段階で見つけたり、患者さん一人ひとりに合った治療を選びやすくなったりすることが期待されます。

息切れを「年齢のせい」で片づけないで

肺高血圧症は、一般的な高血圧ほど知られていない病気かもしれません。でも、進行すると心臓に大きな負担がかかり、命に関わることもあります。

一方で、早めに見つけて原因に合った治療を受ければ、症状の改善や病気の進行を抑えられる可能性があります。

「最近、階段を上るのがつらい」「前より歩けなくなった」「少し動いただけで息が切れる」。

そんな変化が続いているなら、年齢や体力の低下だけが原因とは限りません。

もちろん、必要以上に心配する必要はありません。ただ、以前と違う状態が続いているなら、体からのサインかもしれないと考えてみてください。

肺高血圧症の治療は、少しずつ進歩しています。だからこそ、まずは症状を見逃さず、必要な検査につなげることが大切です。

毎日の生活の中で感じる小さな変化。つい見過ごしてしまいがちですが、自分の体を守るためにも、気になったときは早めに相談したいですね。

今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。

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