「また立ちくらみ…」放置してはいけない、危険な〈立ちくらみ〉とそこに隠された疾患とは|医師が解説

 「また立ちくらみ…」放置してはいけない、危険な〈立ちくらみ〉とそこに隠された疾患とは|医師が解説
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甲斐沼 孟
甲斐沼 孟
2024-08-27

立ちくらみはすぐ収まるから大丈夫、と考えがちですが、症状が続く場合は重大な疾患が隠れている可能性があります。医師が解説します。

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注意したい危険な〈立ちくらみ〉と隠れた疾患とは?

日常生活でふらつきやめまい、吐き気などを含めて貧血や立ちくらみ症状に陥った経験はありませんか。

貧血や立ちくらみの症状が出現する背景には、再生不良性貧血など注意したい疾患の存在が考えられます。

再生不良性貧血とは、造血幹細胞と呼ばれる血液細胞が減少することで、白血球、赤血球、血小板などの血液成分が減少する病気であり、特に赤血球の減少に伴って貧血症状を呈することが知られています。造血幹細胞が障害される原因にはいくつかありますが、生まれつきの先天的な染色体異常によって引き起こされる症例も認められます。

赤血球による酸素運搬が障害されて、全身的にめまい、頭痛、倦怠感、息切れや動悸などが自覚されることが多いです。

立ちくらみ
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危険な立ちくらみ。対処法とは?

再生不良性貧血の基本的な治療手段としては、重症度に応じて免疫抑制療法、造血幹細胞移植、タンパク同化ステロイド療法などが検討されます。

再生不良性貧血の治療は、重症度に応じて免疫抑制療法、造血幹細胞移植、タンパク同化ステロイド療法、トロンボポエチン受容体作動薬、支持療法といった治療が行われます。

軽症で汎血球減少が進行していなければ治療をせずに様子を見ることもあります。

免疫抑制療法

造血幹細胞を攻撃しているリンパ球のはたらきを抑えて血液細胞をつくる機能を回復させる治療法であり、抗ヒト胸腺細胞ウサギ免疫グロブリンとシクロスポリンと呼ばれる治療薬があります。

造血幹細胞移植

健康な人の造血幹細胞を点滴投与して、患者の造血力を再生する治療であり、移植は体への負担が大きいため、重症の場合やほかの治療法による効果がない場合に行われます。通常、HLA(ヒト白血球抗原)と呼ばれる白血球の型が合うドナーが家族内や骨髄バンクにいることが条件となります。

タンパク同化ステロイド療法

赤血球を増やすはたらきや造血幹細胞の増殖を促す効果があるともいわれています。

トロンボポエチン受容体作動薬

造血幹細胞に作用し、造血力を回復させる治療です。

支持療法

病気の症状を改善する治療のことであり、貧血や血小板減少に対する輸血や、白血球を増やすホルモン(G-CSF)の使用、感染症に対する抗菌薬治療などがあります。

日常生活で立ちくらみの症状が続く際には、再生不良性貧血など危険な疾患を除外するためにも、血液内科など専門医療機関を受診して早めに相談するようにしましょう。

まとめ

これまで、放置してはいけない、注意したい危険な立ちくらみ症状と侮ってはいけない隠れた疾患などを中心に解説してきました。

貧血や立ちくらみの症状を自覚した場合には、内科、血液内科、消化器内科、婦人科、脳神経外科などで対応することがあります。

特に「再生不良性貧血」という重大な疾患が隠れている可能性もありますので、症状が悪化する際には早めに血液内科など専門の医療機関を受診しましょう。

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甲斐沼 孟

甲斐沼 孟

大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センターや大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センターなどで消化器外科医・心臓血管外科医として修練を積み、その後国家公務員共済組合連合会大手前病院救急科医長として地域医療に尽力。2023年4月より上場企業 産業医として勤務。これまでに数々の医学論文執筆や医療記事監修など多角的な視点で医療活動を積極的に実践している。



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