「高血圧は血管の細胞の働きが原因?」新たに発見された血圧調節の仕組みと、今後の治療の可能性|医師が解説

「高血圧は血管の細胞の働きが原因?」新たに発見された血圧調節の仕組みと、今後の治療の可能性|医師が解説
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甲斐沼 孟
甲斐沼 孟
2026-10-17

健康診断で「血圧が高いですね」と言われたことはありませんか?高血圧というと、塩分のとりすぎや肥満、運動不足などが原因として思い浮かぶかもしれません。もちろん、こうした生活習慣は大切です。ただ、血圧が上がる仕組みは、それほど単純ではありません。医師が解説します。

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血圧は、血管の広がり方でも変わる

最近の研究では、血管の内側を覆っている細胞が、血液の流れを感じ取り、血管を広げる働きを調節していることが、改めて注目されています。2025年に発表された研究では、血管の細胞にある「HEG1」というタンパク質が、血圧の調節に関わる新たな仕組みが報告されました。

今回は、この研究で何がわかったのか、そして将来の高血圧治療にどのようにつながる可能性があるのかを、わかりやすく解説します。

血圧は、心臓が血液を送り出す力だけで決まるわけではありません。血管がどれくらい広がっているか、どれくらい縮んでいるかも大きく関係します。

血管が縮んで細くなると、血液が流れるときの抵抗が増え、血圧は上がりやすくなります。反対に、血管が適切に広がれば、血液は流れやすくなります。

ここで重要な役割を果たすのが、血管の内側を覆う「血管内皮細胞」です。

血管内皮細胞は、単なる血管の内張りではありません。血液の流れや刺激を感じ取り、血管を広げたり縮めたりするための信号を出しています。

代表的なものが、一酸化窒素(NO)です。NOには血管の筋肉をゆるめ、血管を広げる働きがあります。この働きがうまく機能しなくなると、血管が広がりにくくなり、血圧にも影響することがあります。

血液の流れを感じ取る「HEG1」に注目

2025年に発表され、2026年の学術誌に掲載された研究では、血管内皮細胞にある「HEG1」というタンパク質が、血圧の調節に関わることが報告されました。

少し不思議に感じるかもしれませんが、血管の細胞は、血液が流れるときに生じる力を感じ取っています。こうした力は「ずり応力」と呼ばれます。

血液が流れると、血管の内側には一定の力がかかります。血管内皮細胞は、その刺激を受け取って血管の状態を調節しているのです。

今回の研究では、HEG1がこの刺激を受け取る仕組みに関わり、血管を広げる働きを持つNOの産生を支えていることが示されました。

一方、HEG1の働きを失わせたマウスでは、血管が広がりにくくなり、血圧が上昇しました。研究では、HEG1が別のタンパク質の働きを調節することで、NOの産生を保つ仕組みも明らかにされています。

つまり、血圧を調節しているのは、心臓や腎臓だけではありません。血管そのものが血液の流れを感じ取り、血圧を調節する役割を担っているということです。

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高血圧は、血管の細胞の変化とも関係している

高血圧が続くと、血管には強い圧力がかかり続けます。その影響で血管の内皮細胞の働きが低下したり、血管の壁が厚くなったり、硬くなったりすることがあります。

さらに、血管が広がりにくくなると血圧が上がりやすくなり、上がった血圧がまた血管に負担をかける、という悪循環が生じることもあります。

近年は、こうした血管内皮細胞の機能低下や炎症、細い血管の構造変化などが、高血圧の発症や進行に関わると考えられています。

もちろん、高血圧の原因がすべて血管内皮細胞にあるわけではありません。塩分の摂取量、遺伝的な体質、加齢、腎臓の働き、ホルモンの影響、体重や運動習慣など、さまざまな要因が重なって血圧は決まります。

今回の研究は、高血圧を理解するうえで、血管の細胞そのものにも目を向ける必要があることを示しています。

将来は、新しい高血圧治療につながる?

では、HEG1の働きを利用すれば、高血圧を治せるようになるのでしょうか。

ここは、少し慎重に考える必要があります。

今回の研究では、HEG1に関わる仕組みを調節することで、血管の働きや血圧を改善できる可能性が示されました。ただし、研究の中心は細胞や動物を用いた実験です。人の高血圧患者に対して、この仕組みを利用した治療が有効で安全であると確立されたわけではありません。

今後、研究が進めば、血管内皮細胞の働きを改善する薬や、従来とは異なる仕組みで血圧を調節する治療法の開発につながる可能性があります。

特に、複数の降圧薬を使っても血圧が十分に下がらない方や、血圧が下がっていても血管への負担が残っている方にとって、新しい治療の考え方につながるかもしれません。ただし、実際に治療へ応用できるかどうかは、今後の研究を待つ必要があります。

今できることは、やはり血圧管理の基本

新しい研究を知ると、これまでにない治療法に期待したくなりますよね。

一方で、現時点で高血圧による心臓病や脳卒中、腎臓病のリスクを減らすために大切なのは、日々の血圧管理です。

  • 塩分をとりすぎない。 加工食品や汁物、調味料の使い方を見直してみましょう。
  • 無理のない運動を続ける。 ウォーキングなど、日常生活に取り入れやすい運動がおすすめです。
  • 体重や飲酒習慣を見直す。 できることから少しずつ取り組みましょう。
  • 家庭でも血圧を測る。 朝など、なるべく決まった条件で測定し、記録しておくと診察時にも役立ちます。
  • 処方された薬を自己判断で中断しない。 血圧が下がっていても、治療を続けることが大切です。

血圧が高い状態が続く場合は、症状がなくても医療機関に相談してください。高血圧は自覚症状が乏しいまま進むことがあるためです。

血管の働きを知ることが、未来の治療につながる

高血圧は、単に血液が強い力で流れている状態ではありません。心臓や腎臓だけでなく、血管の内側にある細胞も、血圧の調節に深く関わっています。

HEG1に関する研究は、血管が血液の流れを感じ取り、自ら血圧を調節する仕組みを明らかにした点で興味深い成果です。

こうした研究が積み重なれば、将来、高血圧の原因に応じた新しい治療法が生まれる可能性があります。

ただし、新しい治療を待つ必要はありません。今の段階では、家庭での血圧測定、生活習慣の見直し、必要に応じた薬物治療を続けることが、血管を守るための確かな一歩です。

血圧の数字だけでなく、その数字を生み出す血管の働きにも目を向ける。そんな視点が、これからの高血圧診療をさらに進歩させていくのかもしれません。

今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。

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