「コーヒーは腎臓に悪い?」管理栄養士・カフェオーナーが最新ガイドと近年の研究から考える、腎臓と珈琲のつき合い方

「コーヒーは腎臓に悪い?」管理栄養士・カフェオーナーが最新ガイドと近年の研究から考える、腎臓と珈琲のつき合い方
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松田 真紀
松田 真紀
2026-08-25

腎臓は、機能が低下しても初期には自覚症状が現れにくい臓器です。「一度悪くなったら元には戻らない」「気づいたときには手遅れになる」――そんなイメージを持っている人もいるかもしれません。

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確かに、慢性腎臓病(CKD)は進行すると、失われた腎機能を元通りにすることが難しくなります。一方で、早期に発見し、原因に応じた治療や生活習慣の改善を行うことで、状態が改善したり、腎機能の低下を遅らせたりできることもわかっています。

では、日常的に口にする「コーヒー」は、腎臓にとってどんな存在なのでしょうか。

「コーヒーって、健康のためには飲みすぎないほうがいいんでしょうか」

カフェのカウンターに立ってドリップをしていても、栄養指導の現場にいても、こんな質問を受けることがあります。

私自身、日々たくさんの珈琲を淹れ、楽しむ一人です。その背景にある「好きなものを楽しみながら、身体も大切にしたい」という気持ちは、とてもよくわかります。

現在、日本では慢性腎臓病(CKD)の患者が約2,000万人、成人のおよそ5人に1人にのぼると推計されています。

だからこそ知っておきたいのが、「コーヒー=腎臓に負担をかける」というイメージは、現在の研究では必ずしも支持されていないということです。

1. 「コーヒーは腎臓に悪い」とは限らない

腎臓には「糸球体」と呼ばれる毛細血管の集まりがあり、血液から老廃物や余分な水分をろ過しています。

高血圧や糖尿病などによって、この細かな血管や腎臓の組織に長期間負担がかかることは、CKDの大きな要因のひとつです。

一方、コーヒーにはカフェインだけでなく、クロロゲン酸などさまざまなポリフェノールが含まれています。

日本腎臓学会の『CKD診療ガイド2024』では、疫学研究のメタ解析において、コーヒーを飲む人ではCKDの発症やアルブミン尿、末期腎不全への進行などが少ないという関連が報告されていることが紹介されています。

少なくとも現在のエビデンスを見る限り、「コーヒーは腎臓に悪いから控えるべき」と一律に考える必要はなさそうです。

ただし、ここには大切な注意点があります。

これらの研究の多くは観察研究です。

つまり、「コーヒーを飲んだから腎臓が守られた」と因果関係まで証明されたわけではありません。クロロゲン酸などの抗酸化・抗炎症作用が関係している可能性は考えられていますが、詳しいメカニズムはまだ研究途上です。

コーヒーは「腎臓の薬」ではない。けれど、健康な人が適量を楽しむことまで怖がる必要もない。

まずは、そのくらいの距離感で捉えるのがよさそうです。

2. コーヒーは「量」だけでなく「飲む時間」にも注目

近年は、コーヒーを「どれくらい飲むか」だけでなく、「いつ飲むか」に着目した研究も登場しています。

2024年に学術誌『Food & Function』に発表された研究では、米国の国民健康栄養調査(NHANES)に参加した糖尿病のある8,564人を対象に、コーヒーを飲む量や時間帯とCKDとの関連が解析されました。

その結果、朝の時間帯にコーヒーを飲む人ではCKDが少なく、昼以降に多く飲む人では逆の関連がみられるケースがありました。

興味深いデータではありますが、この結果をそのまま「午後3時までに3〜4杯飲めば腎臓にいい」と解釈することはできません。

研究対象は糖尿病のある人に限られ、生活習慣などの影響を完全に除くこともできないからです。また、コーヒーのカフェイン量は豆や抽出方法、1杯のサイズによって大きく異なります。

「腎臓のために、今日からコーヒーを3杯飲もう」と増やす必要はありません。

普段コーヒーを楽しんでいる人が、無理のない量を楽しむ。そのうえで、睡眠に影響を感じる人は遅い時間のカフェインを避ける。

そのくらいが、今のところ現実的な付き合い方だと私は考えています。

3. コーヒーを楽しむための「3つの引き算」

管理栄養士として、そして日々珈琲を扱うカフェオーナーとして提案したいのは、「健康のために何かを足す」より、余計な負担を少し引いてみることです。

① 夕方以降のカフェインを引いてみる

カフェインへの反応にはかなり個人差があります。

夕方以降にコーヒーを飲むと寝つきが悪くなる、眠りが浅くなるという人なら、午後遅い時間からデカフェに切り替えるのもひとつの方法です。

デカフェコーヒーにもクロロゲン酸をはじめとするポリフェノールは含まれています。ただし、含有量は豆や焙煎、カフェイン除去方法などによって異なり、「デカフェなら腎臓へのメリットだけを得られる」とまで言うことはできません。

大切なのは、珈琲を我慢することではなく、睡眠を邪魔しない形で楽しむことです。

② 「甘いコーヒー」が習慣なら、少しだけ引く

ブラックコーヒーでなければ健康効果がなくなる、というわけではありません。

ミルクを入れてもいいし、砂糖を入れて楽しむ日があってもいい。

ただ、甘いカフェラテや砂糖入りコーヒーを1日に何杯も飲んでいる場合は、知らないうちに添加糖やエネルギーの摂取量が増えていることがあります。

糖尿病や肥満、高血圧はCKDと深く関係するため、「コーヒーそのもの」だけを見るのではなく、普段どんな形で飲んでいるのかを振り返ってみましょう。

砂糖を半分にしてみる。甘くないラテを選んでみる。

それくらいの引き算でも十分です。

③ 朝一番の「空腹コーヒー」は、身体の反応を見ながら

朝起きてすぐ、空腹の状態でコーヒーを飲むことが習慣になっている方も多いかもしれません。

ただし、空腹時のコーヒーで胃の不快感や胸やけを感じる人もいます。これは個人差が大きく、「空腹時のコーヒーは腎臓に悪い」と一律に言えるわけではありません。

朝一番のコーヒーで胃が重くなる、動悸を感じるなど身体への負担を感じる場合は、先に水分をとったり、朝食をとってから楽しんだりするのもひとつの方法です。

大切なのは、「健康によい飲み方」を無理に決めるのではなく、自分の身体の反応を見ながら、無理なく楽しめるタイミングを見つけることです。

好きな珈琲を、必要以上に怖がらない

「腎臓は一度悪くなったら終わり」

「コーヒーは利尿作用があるから腎臓に悪い」

そんな一言だけで、大好きなものを手放す必要はありません。

研究が積み重なるにつれ、コーヒーと健康の関係は「身体にいい」「身体に悪い」と二択で判断できるほど単純ではないことがわかってきました。

腎臓のために無理にコーヒーを飲む必要はない。

けれど、健康状態に問題がなく、身体に合っているのであれば、必要以上に怖がる必要もない。

夕方以降はデカフェにしてみる。甘さを少し控えてみる。そして、年に一度は自分の腎機能を確認する。

そんな小さな調整をしながら、毎日の一杯を長く楽しんでいけたらいいのではないでしょうか。

※すでに慢性腎臓病と診断されている方、腎機能低下や高カリウム血症を指摘されている方、水分・カリウムなどの制限を受けている方は、コーヒーを含む飲食物の摂取について主治医や管理栄養士の指示に従ってください。

参考資料

日本腎臓学会編『CKD診療ガイド2024』

Tang Y, et al. The association between the amount and timing of coffee consumption with chronic kidney disease in diabetic patients. Food & Function. 2024;15:10504–10515.

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