ADHD疑い夫の困りごとを周囲に話すほど孤立…。ADHD傾向のパートナーを支える側の本音とは?【経験談】

『もしかして、うちの夫はADHD?』(はちみつコミックエッセイ)より
『もしかして、うちの夫はADHD?』(はちみつコミックエッセイ)より

「夫が何度言っても話を聞いてくれない」「やる気がないだけでは?」——ADHDの特性を持つパートナーとの暮らしに悩む女性は少なくないとのこと。『もしかして、うちの夫はADHD?』(はちみつコミックエッセイ)の作者・はなゆいさんに、本作の制作背景や、パートナーを支える側が抱える困りごと、周囲への相談の難しさについてお話を伺いました。当事者ではなく「隣にいる人」の視点から、ADHDとの向き合い方を考えます。

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女性から夫に関する悩みを聞くことが多かった

——前作『ただのぽんこつ母さんだと思っていたらADHDグレーでした。』では、はなゆいさんご自身がADHD当事者としての困りごとを描いていました。本作では、ADHDの夫がいる女性にスポットを当てていらっしゃいますが、ADHDのパートナーがいる女性から困りごとを聞くことが多かったのでしょうか?

そうですね。前作では、私自身の体験をもとに“当事者としての困りごと”を描きました。それに対するレビューやコメントで、「まさにうちの夫がこういう状態でどうしたらいいですか?」というパートナー側(主に妻)から質問をたくさんいただいたんです。

それを受けて、実際に色々な方にお話を伺いながら、AmazonでKindle版として独自連載を始めることにしました。有難いことにそれら連載についてSNS等での反響が大きく、今回追加インタビューや専門家の先生の監修、はちみつコミックエッセイの編集部と一緒に内容を詰めながら書籍としてまとめることにしました。

——妻側から見たADHD(傾向含む)夫の言動の困りごととは、どんな内容が多いのでしょうか。

それぞれの困りごとは誰にでもあるようなもの(物忘れ、遅刻、やりっぱなし)から、深刻なもの(依存症や鬱、逃避癖)など、さまざまなものがありました。そうした日常の困りごとに加えて、「つらい」という声が多かったのが、本人に自覚がないことでした。

どれだけパートナー側が強く伝えても、真剣に話しても、なかなか聞き入れてもらえない。そのたびに、「やる気がないだけなのでは」と感じてしまい、諦めとイライラが積み重なっていく……そんな声もとても多かったです。

「正しいこと」が正解?

——「男性ってそういうもの」「悪い人に見えない」など、女性側が周囲に相談しても真剣に受け止めてもらえないことも少なくないと存じます。周囲の人たちは相談されたら、どう話を聞いたらいいと思いますか?

周囲の人も相談相手をないがしろにしようと思っているわけではなく、本人が深刻になりすぎてしまっていると感じるから、親切心や励ます気持ちで、そういった発言をしている場合も多いと思います。

実際に、同じ親子の話をそれぞれの立場から聞いたことがあります。娘さんは、夫の言動にどうしても納得がいかず、母親にその気持ちを訴えていました。一方で母親は、「夫婦の問題に口出しして、火に油を注いではいけない」「自分が同意することで、かえって夫婦関係を悪くしてしまうのではないか」と悩みながら、「夫さんだって悪い人じゃないでしょう」と言葉を選んでいたのです。

けれど、その言葉を受け取った娘さんは、「わかってもらえない」「夫の味方をされた」「突き放された」……そう感じてしまい、結果として親子関係までギクシャクしたというケースがありました。

その後、あるきっかけから、お互いの返答の裏にあった理由や思いを知ることができたとき、二人とも「そういうことだったんだ」と、腑に落ちた様子でした。

このやりとりから、「正しいことを言う」ことと、「その人が今ほしい関わり方」は、案外かみ合わないことが多いのかもしれない、と感じました。相談された側にできることは、正直、それほど多くないのかもしれません。

相手を思うあまりに「どう言えば丸く収まるか」を先に考えてしまうと、かえって気持ちがすれ違ってしまうこともある。まずは、「そう感じているんだね」と受け取るところで止まってもいいのだと思います。それだけで、すべてが解決するわけではありませんが、その後の話し合いの形が、少し変わることはあるのかもしれません。

『もしかして、うちの夫はADHD?』(はちみつコミックエッセイ)より
『もしかして、うちの夫はADHD?』(はちみつコミックエッセイ)より

男女で悩みの声にギャップがあるのはなぜ?

——ADHDの妻の言動に困っている男性の話はあまりないのでしょうか?もし少ないのであれば、なぜ男女で差があると思いますか?

実際には、そうした男性もいます。私自身、何人かのお話を聞いたことがあります。ただ、女性に比べると、男性はそもそも配偶者の愚痴を口にしにくいというか、そういう話をできる場が少ない、という背景もあるのではないかと感じています。

また、これは監修の司馬理英子先生ともお話ししたのですが、男女それぞれに求められる「男性像」「女性像」のイメージも関係しているのではないかと思っています。たとえば、ADHDの特性としてよく挙げられる「うっかりしている」「おっちょこちょい」「そそっかしい」といった面は、どこか女性像と重なりやすく、場合によっては「それもその人らしさ」として、まだ受け入れられやすいことがあります。

一方で、男性の場合、とくに結婚後は「一家を支える大黒柱」「しっかりしていて頼れる存在」といったイメージを強く求められることが多いように思います。その像とADHDの特性がかみ合わないとき、妻側が戸惑いや苛立ちを感じやすくなる――そんな構図もあるのではないでしょうか。

さらに、男性は外では気を張り、家に戻ると気が緩んでしまう、ということ自体はADHDに限らずよくあることだと思います。ただ、ADHDの男性の場合、その「気の緩み」が特性としてより強く表れ、とくに家庭内で目立ってしまうことが、妻側のイライラを募らせる一因になっているのではないかと感じています。

※後編に続きます。

『もしかして、うちの夫はADHD?』(はちみつコミックエッセイ)
『もしかして、うちの夫はADHD?』(はちみつコミックエッセイ)

【プロフィール】
はなゆい

「笑う母には福来る」をテーマにクスッと笑えて時にウルっとする育児漫画をブログやSNSで投稿。家族の「笑い」と「感動」を漫画にしてます! 

■X:@hanayuistudio

■Instagram:@yuihanada7

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