体を壊して声が出なくなった。生き急いでいた抹茶ブランド起業家が「休む」と向き合うまで【体験談】

体を壊して声が出なくなった。生き急いでいた抹茶ブランド起業家が「休む」と向き合うまで【体験談】
Adobe Stock

茶道に出会い、生き急ぐ日々から抜け出したなまっちゃさん。しかし経営者として走り続ける中で、余裕を持つことと成果を出すことの「綱引き状態」は今も続いているといいます。体調を崩した経験、好きな抹茶を純粋に楽しめなくなった葛藤、そして人間関係での後悔——。『余裕はつくれるものでした。』(淡交社)の著者である株式会社千休CEOのなまっちゃさん(久保田夏美さん)に、余裕をつくるための習慣や心がけについて伺いました。

広告

茶道から学んだこと

——経営者という立場から、「成果を出し続けなければ」というモードをオフにするのは大変だと思います。お茶から学んだ考え方の中で、特に影響を受けたものについてお伺いできればと思います。

「即今」という考え方です。元々は「即今、当処、自己」がセットで「いま、ここ、わたし」という意味です。過去や未来のことを考えすぎると、不安になったり心配になったりしてしまうので、「今に集中する」という点が私には合っていました。無心になって仕事をしたり、遊んだりと、今この瞬間に集中することで、自分の人生がより楽しくなったと感じています。

——お茶で学んだ考え方によって休むことと、経営者のスイッチとで、綱引き状態のようにならなかったのでしょうか。

実は、今でも綱引き状態です。忙しいときは忙しくて、余裕なんて持っていられないと思う時期も正直あります。でも「余裕はつくれるもの」と思っておくだけでも違うと思いますし、繁忙期以外に余裕をつくって、バランスを取るようにしています。猪突猛進タイプの人は周りが見えていないので、一度体を壊したり何か失敗したりと、強制的に止まるタイミングが必要なのかもしれません。私自身、疲れを自覚しないまま走り続けて、繁忙期が一段落したタイミングで声が出なくなったり、目が角膜炎になったりして2週間ほど体調を崩したこともあって、改めようとしてきました。膝が痛くなったら痩せなきゃとか、腰が痛くなったときにストレッチをしなきゃなどとなるように、体の調子と向き合い、心身の調整をしているところです。

——余裕をつくるために行っている習慣はどのようなものがありますか?

月に何度か、強制的にスマホなどデジタルデバイスから離れる時間を作ることは続けています。茶道や15年以上前から通っているアイドルのライブもスマホを触るのが禁止ですし、イベントなどで終日立っている日も多く腰や足を痛めないために始めたピラティスもスマホから離れて目の前のことに集中できる時間です。また、忙しい時期にはお茶のお稽古をお休みする期間もあるのですが、朝に自分でお茶を点てて心をリセットする習慣は大切にしています。美味しい抹茶を飲むと気分も晴れやかになりますし、抹茶にはビタミンA・C・Eなどが入っているので、栄養を摂ることもできるんです。

「好きなこと」を仕事にすること

——「好きなことを仕事にしたい」と考える方も多いと思いますが、なまっちゃさんが好きなことを仕事にできた喜びについてお聞かせください。

もちろん仕事の過程では、大変なことや、やりたくないことも出てくるのですが、全部が「抹茶」という好きなことに繋がっているので、あまり苦を感じずに乗り越えられることです。難しいことも好きだからこそ頑張って取り組めます。

よく「忙しすぎてつらくないですか」「朝から晩まで仕事してるね」と言われるのですが、自分ではそれが当たり前なんです。仕事とプライベートが混ざり合っているような感覚で、だからこそ、山あり谷ありな7年間でも続けてこれたんだと思います。

——好きなことを仕事にした結果、好きなことがつらいものになってしまったとお話される方もいらっしゃいますが、なまっちゃさんはそういう経験はありますか?

唯一、好きなことを仕事にして困ったのが、抹茶が絡む体験が純粋に楽しめなくなったことです。抹茶スイーツを食べるときに、「これはどこの抹茶を使っているのかな」「この味は次の商品に活かせるかな」など、仕事に関連させて考えてしまうので、純粋にお菓子や抹茶を楽しむことがなかなか難しくなってしまいました。職業病というものですね。(笑)

——「嫌いなことリスト」を作成されているということで、どんなことを書いているのでしょうか。

たとえば「自分がやらなくてもいい仕事や苦手なことはやらない」です。経理や細かい数字のデータ入力など、苦手で他の人がやった方が早く上手にできることを書き出しています。ほかには「気を遣う人と時間を過ごさない」とも書いています。新しい人との出会いも大事ですが、すごく気を遣った人には2回目以降は会わないと決めています。

「適当にお菓子を選ばない」も大切にしていることです。自分がお菓子を作って販売している立場ですので、お客様の気持ちを想像するためにも、それなりの価格のお菓子を買って、楽しく味わって食べることにはこだわっています。

好きなこと
AdobeStock

生き急いでいた頃を振り返って

——コスパ・タイパを重視していた頃のご自身をどう振り返っていますか?

大きく体を壊したことは後悔しています。「目標達成したい」「成果を残したい」という思いで突っ走ってきましたが、自分のことを後回しにしすぎてしまったことで、社内だけでなく、外部の打ち合わせをリスケしていただくなど、結果的に周りにも迷惑をかけてしまいました。

ですがその経験があったからこそ、同じようなことがないようにしようと、休むことに向き合えるようになりました。

もう一つはせかせかして余裕がないときは、人に厳しく指示したり淡々と冷たい感じで言ってしまったりして、よくなかったと思っています。今は反省してコミュニケーションを大切にしようとしていますが、人間関係は一度こじれると修復が難しいこともあったので、もっとうまくできていたら、と思う部分はあります。

——「余裕をつくる」ために、お茶に限らず、第一歩として取り入れられることはありますか?

自分に余裕がないことに気づくことが第一歩だと思います。おそらく余裕がないときに余裕がないと気づくことは難しくて、誰かに言われたり、体を壊したりしてやっと気づけるのではないでしょうか。

気づけたら、余裕がなくなってしまうところから離れるような場所に行ったり、趣味の時間を持ったりすることが次のステップだと思います。

「趣味がない」という方もいらっしゃると思うのですが、何もないなら、日々メディアがつくりだしている「流行り」に乗り、新しい楽しみを開拓するのも一つの方法です。

『余裕はつくれるものでした。』(淡交社)
『余裕はつくれるものでした。』(淡交社)

【プロフィール】
なまっちゃ

本名:久保田夏美。神奈川県出身。
明治大学総合数理学部卒業後、IT企業にウェブ開発エンジニアとして就職。
2019年に株式会社千休を起業し、抹茶専門ブランド「千休」として数々の抹茶スイーツを開発。オンラインショップや百貨店などで、抹茶の商品を販売している。
自身が抹茶や茶道によって生活や心身が変わったことから、SNSなどでその魅力を発信。抹茶を飲んだり食べ歩いたりしたことをシェアすることで、抹茶本来の魅力に気づく人を増やす活動をしている。

広告

RELATED関連記事

Galleryこの記事の画像/動画一覧

好きなこと
『余裕はつくれるものでした。』(淡交社)