「気持ちは元気でも体は大変」希少乳がん治療中の50代漫画家が実感したホルモン療法のリアル|体験談
漫画家のナヲコさんは、今まで大きな病気をせずに生きてきて、健康への関心は高いほうではありませんでした。ある日、胸のしこりに気づき、病院に行ったところ、5%しかいない「浸潤性小葉がん」の診断を受けます。『50代おひとり様、5%の希少乳がんになりました』(KADOKAWA)は、ナヲコさんの入院や治療、お金や生活の経験が描かれたコミックエッセイです。後編では治療の日々の苦労や、作品制作に込めた思いについて伺いました。
治療の日々の現実
——傷口がすれる、テープのかぶれ、体力の低下、便秘、治療のストレスなど、体験者でなければわからないことがたくさん描かれている作品でした。今回の作品を描くにあたり、気をつけたことはどんなことでしょうか。
今回の乳がん治療は、最初から文章で内容を記録してありました。
それを漫画に起こすという作業だったのですが、日々書き綴っていたことを全編通して漫画で読む、となった時に、「まだ同じ内容なの?」とダレてしまわないようにするのがとても難しかったです。
実際は「まだ同じ内容で大変」な日々だったと思うので……。その主観から「漫画で読めるようにする」ことが、今回はとても難しかったです。
——おっしゃるとおり、実際の生活としては、日々同じことが続くことの大変さがあると思います。生活における手間や、手間のかかることを続けなければいけない心理的な負担など、どういった面での大変さを感じましたか?
一番はやっぱり「痛みの軽減」が大変でした。術後の痛み、放射線治療後の痛み、ホルモン療法中の痛み、常になにかしらの痛みがあります。
いろいろと工夫してもどうやっても痛かったり、特に手術後は結局傷が治るまでは何をやってもどうしようもなくて、これはもう仕方ないんだな!?と思いました。
——2024年にヨガやマインドフルネスをやっていた、という描写がありましたが、ご自身で感じられた効果としてはいかがでしたか。
腹式呼吸や深呼吸などで「落ち着く」というのは確かにあった気がします。
自覚的に身体や意識を鎮めて呼吸に集中することで、不安や焦りのようなものは多少コントロールしやすくなるのではないかと感じました。
——生活を協力し合う男性の同居人の方がいらっしゃると描かれていましたが、タイトルに「おひとり様」と入れていらっしゃるように、「おひとり様」ならではのご苦労、もしくは「おひとり様でよかった」と感じたことはありますか。
同居人がいて困るわけではない(助かることも多々ある)のですが、自分では「ひとりの時間に自分が自由に自分をコントロールする」ことが重要なシーンが多く、配偶者やこどもがいない、おひとり様の自由の中で術後の対応ができているのは正直助かっています。
私の場合、同居人は出勤していて日中は不在でしたが、たとえば、術後に服を着ていると傷に触れるので服に袖を通さない、などという過ごし方は、家族が一緒にいると難しいときもあるだろうな……と感じていました。
——日常生活や仕事を続ける中で大変だったことや、やってよかったことはどんなことでしょうか?
ホルモン療法で削っているエストロゲンが、本来は身体の色々な部分の健康を保ってくれているということで、身体の調子は全体的に下がっていると実感しています。
気持ちが元気なので、ついついなんでもやろうとしてしまうのですが、がんばりきれないことも増えました。
「気持ちが元気でもホルモン療法でエストロゲンが削られているんだから身体は大変なんだ」ということを、大変すぎる!と思いすぎない程度に、適度に意識しながら暮らすことが必要だな、と今は思っています。
やってよかったことは運動(散歩)・減量です。ホルモン療法の影響で不調が増え、副作用の関節痛などがある中、減量して体が以前より軽くなったり、栄養を考慮した食生活にしたことで元々あった皮膚の悩みが軽減したりしました。
乳がんの治療がきっかけなので、がん自体は決して良いことではないんですが、基本的な健康状態が向上したことは良かったかもしれないです。
「きっかけ」を受信してほしい
——本作を制作された背景や思いをお伺いできますでしょうか。
漫画を描く身として「治療体験を漫画で記録を残したい」という気持ちがまずはありました。
しかし普段SNS等で目にする治療体験漫画は、珍しい病気や稀な体験であることが多かった印象なので、最初は「自分の体験が果たして参考になるのかな?」という思いがあり、踏み切れませんでした。
そんな時に、梅宮アンナさんの闘病についての発信を拝見して、やはり発信することでどなたかの不安に寄り添える可能性があるのではないか、ひとりでも参考にしてくださるかたがいれば、意味があるのではないか、と感じ、漫画にしました。
誰かの発信がきっかけで、ほんのちょっとでも興味を持って健康管理に関わっていけるように、という思いを込めています。自分が「誰かの発信にきっかけをもらう」ということを経験したことで「わたし自身の発信も誰かの健康のきっかけになりえるかもしれないし、そうだといいな」と思いました。
がんは早期発見で治療がしやすくなる病気ですので…とにかく見てくれた人が「きっかけ」を受信してくれたら、という一心で描きました。
——最後に、本作の読者さんや、本記事の読者さんにメッセージをお願いいたします。
インタビューや漫画を見て「治療大変そうだな」と感じたら、ぜひがん検診に行ってくれ!と伝えたいです。
早期発見で治療しやすく、何もなければ安心をもらえる、いいことしかないです。これを「きっかけ」に、ぜひ検診に行っていただけたら、と思います。
【プロフィール】
ナヲコ
漫画家。乳がんサバイバー。
■Xアカウント:@worldsend24
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