50代おひとり様、5%の希少乳がんに。左胸全摘でも「再建しない」を迷わず選んだ理由とは【経験談】
漫画家のナヲコさんは、今まで大きな病気をせずに生きてきて、健康への関心は高いほうではありませんでした。ある日、胸のしこりに気づき、病院に行ったところ、5%しかいない「浸潤性小葉がん」の診断を受けます。『50代おひとり様、5%の希少乳がんになりました』(KADOKAWA)は、ナヲコさんの入院や治療、お金や生活の経験が描かれたコミックエッセイです。本作に関連して、詳しく話を伺いました。
左胸が全摘出に
——ナヲコさんは、お母様もがんサバイバーで回復の姿を見ていたということもあって、ご自身が「乳がんの疑いあり」と言われたときに冷静だったことを描いています。胸の手術については、ショックを受ける方も少なくない、と聞いたことがありますが、ナヲコさんが左胸が全摘出になることについて、あまり衝撃を受けなかったのはどのような気持ちからだったのでしょうか。
「思いがけない病気」ではなかったからかな、と思います。
がんの家系であることは認識があったので……日頃から絶えず意識していたというわけではないけど、言われれば「あ、そうですよね、そうなりますよね」とすぐに受け入れてしまいました。
——再建手術をしない選択についても、あまり迷いがなかったように感じましたが、なぜでしょうか?
自分に胸があったりなかったりすることで、自分の生き方に影響がないなと感じたからです。
それより、再建するとなればまた手術が必要なのは嫌だな、手術は最低限にしたいな、悪いところを取ってもらえたらじゅうぶんだな、と思いました。
再建される方々は、再手術の煩わしさを厭わず再建を選ばれるわけなので、胸の存在を保つことに対してそれほどの強い思いなのだな、と理解しています。
入院・手術を経験して
——手術については、早く日程が決まったことが描かれていました。ただ、手術をすれば全て完了するわけではなく、術後も色々と大変なことも伝わってきました。入院生活や退院後の生活、また体調面など印象に残っていることを教えてください。
人生初手術だったので、術後の大変さを甘く見ていたと思います。
手術の目的である「悪い部分を取ってもらう」は滞りなくできましたが、切り開いた身体の傷の治りがとにかく大変だったと思います。
体力的にがんばりがきかなかったり、傷以外の部分も不調が多かったりして、身体が傷を治そうと毎日頑張っているのは実感できました。
——本書には入院の持ち物リストを載せていらっしゃいましたが、「これがあってよかった」と感じたものや、準備しなかったものの欲しくなったものはありますか?
特にあってよかったと感じたものは、やはり推しのぬいぐるみです。メンタルを支えてくれるものが、一番の助けになりました。
準備しておけばよかったなと思ったものは、わたしは特になかったです。準備万端だったのかもしれません(笑)
体の一部分を切除した後の一週間は、とにかく安静にして身体を休めることが仕事、みたいなところがあったので、あれこれとすることがなかったせいかもしれないです。歩き回れるようになってからも、病院の売店で用が済んだりもしました。
——手術後には、放射線治療を受けていらっしゃいますが、いかがでしたか。
事前に耳にしていたような「疲労感」「ごはんが食べられない」等の体調面の不調はほとんどなかったので、その点ではかなり楽に過ごせた気がします。
もともと皮膚が弱いので、皮膚が焼けてしまうのはすごく大変でした。それも数ヶ月でおさまってくるものなので、全体的にはうまく治療を受けられたのではないかと思います。
——その後、ホルモン療法を受けていらっしゃいますが、大変なことはありましたか?
ホルモン療法に使われる薬は様々なのですが、わたしの薬は「アロマターゼ阻害薬」という種類で、男性ホルモンを女性ホルモンに変換する「アロマターゼ」を阻害して、エストロゲンの生成を抑える薬です。
私はホルモン受容体が「強陽性」という、女性ホルモンにとても反応して増えるタイプのがん、という検査結果でした。そのため、更年期の年代には不調を改善するためにむしろエストロゲンを補充したりするものなのに、あえて削る薬を服用しています。ただでさえ大変な更年期の症状が、さらに強く出ているのが本当に大変です。
薬の副作用として関節痛や骨密度が下がる等があるので、骨密度は定期的に測定してもらっています。
関節痛は日常的にずっとあるので、「いててて」と言いながらも痛みがあることに慣れた暮らしになってしまっています。
——治療そのもの以外にも専用の下着(着てみないと合う合わないもわからない)や、皮膚の痛みへの対策として工夫が必要だったり、家の片付けのために業者を頼むことになった……などお金が必要になる印象を受けました。実際、支出の負担の重さを感じる瞬間はありましたか?がん保険に入られていたとのことで、ある程度はまかなえたのでしょうか。
がん保険は本当に助かりました。申請後すぐに送金してくださったことも大きいです。
一連の治療をスムーズに進められたのは間違いなくがん保険のおかげです。
——治療が進んでいく中で、胃炎のご経験も描かれていました。直接的に心理的なつらさはあまり感じないものの、身体的ストレスは無意識にダメージになっている感覚があったのでしょうか。
「直接的なつらさを感じられないからこそ、無意識に心身のストレスが積み上がっているようだ」ということに対しては、術後すぐよりも1年2年と経つごとに理解が進んでいっているように思います。
最初は表面の意識が元気なだけで押し切れたものが、徐々にがんばりが効かなくなってきたり、自分では元気なつもりなのに物事をやれなくなっていたり。ストレスで起こる困り事に対応するための動きは、現在進行系で大きくなっています。
そもそも、「その困り事の原因はストレスだ」と意識できるようになったのも最近です。
——どう対応されているのでしょうか?
とにかく意識的に癒やしを増やすようにしています。推しのアイドルを見たり、おいしいものを食べたり、どこかに泊まりにいったり、好きなゲームをやったりします。
ぼんやりではなく、意識的にやります。サボりではなく必要なやつ!と考えて、盛大に楽しむようにしています。
※後編に続きます。
【プロフィール】
ナヲコ
漫画家。乳がんサバイバー。
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