タトゥー大国のリアル|3人に1人が入れ、4人に1人が後悔?アメリカで広がるタトゥー文化の現在地

タトゥー大国のリアル|3人に1人が入れ、4人に1人が後悔?アメリカで広がるタトゥー文化の現在地
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36年前、初めて渡米した筆者は、当時の日本では刺青がごく限られた文脈で語られていた時代を生きてきた立場として、アメリカのタトゥー人口の多さにカルチャーショックを受けました。いま日本でも増える一方、米国では成人の32%が少なくとも1つのタトゥーを持つという調査も。入れる動機や職業による見え方、そして一部の人が語る「消したい」と感じる経験まで、最新データとNYの現場から、痛みも費用もかかる除去のリアルを含め、その実態をひもときます。いまの空気を見ていきます。

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筆者が初めて渡米したのは36年前。ホームステイプログラムの一環でやって来ました。アメリカの一般家庭でお世話になりたくさんの人々と交流しました。

さまざまなカルチャーショックを受けた中で、タトゥー人口には驚きました。90年代の日本では、刺青は社会的に強い偏見をもって見られることが多く、特定の文脈と結びつけて語られる時代でした。もちろん大多数の人に入っているわけではないけれど、日本と比べて多いなということです。感覚的には10人に一人はタトゥーが入っている印象でした。

タトゥーのデザインもさまざまで、何かしらのメッセージ性があるもの、キャラクター、花、動物などで、中には日本語や漢字で書かれたタトゥーも見かけます。顔に入れている人を初めて見かけた時は衝撃でした。

あるパーティーで、そのような日米の文化の違いをホストファミリーに話したところ「アメリカ人はおしゃれで入れていて、決して極悪というイメージではないんだよ」と説明されました。

今でこそ日本も若い世代でファッションとしてタトゥーを入れる人が増えているようです。芸能人がSNSなどで自身のタトゥーを披露することも珍しくありません。日本のタトゥー人口は2014年から22年まででほぼ倍増し、約140万人になったという情報もあります。

しかし筆者が初渡米した90年は、日本なら刺青=ヤクザ認定されるような時代でした。そんな日本からアメリカに来て、あまりにも多くの人が腕や脚などにタトゥーを入れているのを見て、筆者はカルチャーショックを受けたのです。

あるパーティーで、そのことをホストファミリーに話すと「アメリカでは、タトゥーはファッションや自己表現として入れる人が多く、日本で想像されがちなイメージとは違うんだよ」とのこと。これは筆者にとって当時、大きなカルチャーショックでした。

筆者が再渡米したのは2000年代に入ってですが、やはりアメリカ人のタトゥー比率は日本に比べて断然多いとその時も思いました。

アメリカのタトゥー人口は?

タトゥーの文化は人類の歴史と共にありました。APによると、確認されているもっとも古いタトゥーは紀元前3300年ごろにアルプス山脈一帯に暮らしていた新石器時代の男性のミイラから発見されています。古代エジプトのミイラにもタトゥーが確認されています。

現代アメリカでは、若い世代でタトゥー人口が増えているそうで、米ピュー研究所の調査を基にした2023年のCBSニュースの報告によると、アメリカの成人の32%、約3人に一人が少なくとも1つのタトゥーを入れていることがわかっています。複数のタトゥーを入れているのは22%、約4人に一人だそうです。

性別で見ると男性より女性が多く、年代では30〜49歳がもっとも多く、次に18〜29歳、そして50〜64歳と続きます。人種別の自己申告データでは、黒人、ヒスパニック系、白人の順にタトゥーを入れている割合が高く、アジア系は相対的に少ないという結果が出ています。

学歴や収入水準との相関を示すデータもありますが、同時に資料では「職場におけるタトゥーの存在は年々一般的になっており、政治家を含むさまざまな職業で見られるようになっている」と指摘されています。

筆者の実感として、政治・金融・法務など伝統的エリート職でタトゥーをしている人は少数派で(ヘグセス国防長官のように、入れていても普段はスーツなどで隠れている)、どちらかというとクリエーターやブルーカラー層にタトゥーを入れている人が多いようです。教師や警官であっても縛りがないのがアメリカらしく、小学校教師の筆者の友人は片方の腕にがっつりおしゃれタトゥーを入れていますし、NYPD(ニューヨーク市警察)の警官でもタトゥーを入れている人を時々見かけます。

どんな動機でタトゥーを入れたかについては、同研究所の資料によると、69%が大切な人を讃えたり思い出を刻むために、47%は信念の表明のために入れたと回答しています。

またタトゥーを入れていない人の85%は今後もタトゥーを入れる可能性は低いと答えています。

タトゥーの満足と後悔、その割合は?

先日、ニューヨーク市内の通りを歩いていて、興味深い路面店を見つけました。

タトゥー除去の専門店「リムーバリー」です。ここではレーザーでタトゥーを消して本来の自分の肌色に戻してくれるようです。

ビルの一室ではなく、大通りの路面店というのがポイントです。これにより、タトゥー除去は決してマイナーではないことが窺い知れます。

タトゥー
ブルックリンの街中で見つけたタトゥー除去店「リムーバリー」© Kasumi Abe

アメリカでは、アンジェリーナ・ジョリーやブリトニー・スピアーズ、ミーガン・フォックスなどの有名人がタトゥーを入れたり、除去&アップデートしたりするたびに話題になります。

米掲示板型SNSのReddit(レディット)を覗いてみると、入れたデザインから色、箇所などさまざまな後悔や修正希望がタトゥー体験者にあることがわかります。

アメリカではいったい何人がタトゥーを入れたことを後悔したり、修正をしたいと思ったりしているでしょうか?

統計データポータルサイト、Statista(スタティスタ)の報告によると、アメリカで行われた2021年の調査で、タトゥーを入れた人の88%は満足していると答えたものの、12%が少なくとも1つのタトゥーを入れたことを後悔していると回答しています。

冒頭で紹介したピュー研究所の調査結果ではさらに比率が多く、タトゥーを入れていると回答した人の約4分の1が少なくとも一つ以上のタトゥーについて後悔しています。

現代では気軽にタトゥーを入れられるのと同様にレーザーで気軽に消すことができる時代になったとは言っても、1回で消えることはほぼなく複数回の施術が必要といいます。また除去にも痛みが伴います。部位によって差はあるけど、タトゥーを入れる時より痛いと言う人も少なくありません。

料金は1回のレーザー照射・治療ごとに数百ドル(前述のリムーバリーなら、小さいタトゥーで221ドル=約3万5000円)。除去が可能な時代になったとはいえ、金銭的・時間的・身体的な負担は決して小さくありません。タトゥーは、入れる時点で慎重な判断が求められる選択のひとつと言えそうです。

参照:
Pew Research Center
CBSニュース
Statista
AP

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