座ったまま内ももを意識するだけ!内転筋が目覚めて「疲れにくい脚」になるエクササイズ
「夕方になると脚がパンパンに張る」「階段の上り下りがつらい」「立ちっぱなしや歩きっぱなしで脚が疲れやすい」——そんな悩みの原因は、内ももの筋肉「内転筋」が使われずに弱くなっているからかもしれません。座りっぱなしの生活で使われなくなった内転筋は、本来の力を発揮できず、太ももの外側ばかりに負担がかかって疲れやすくなります。座ったまま内ももを意識するだけの簡単エクササイズで内転筋を鍛えれば、疲れにくい強い脚づくりが期待できます。
なぜ内転筋が弱ると脚は疲れやすくなるのか
内転筋は、太ももの内側を縦に走る筋肉群の総称(大内転筋、長内転筋、短内転筋、薄筋、恥骨筋の5つの筋肉から構成)です。恥骨から太ももの骨(大腿骨)にかけて伸びており、主に脚を内側に寄せたり、骨盤を安定させるなど重要な働きをしています。
ところが、デスクワークで長時間座っていたり、運動不足が続いたりすると、内転筋はほとんど使われなくなります。脚を内側に寄せる動作は日常生活では意外と少なく、意識しないと内転筋は徐々に衰えていきます。実際に脚を閉じたまま立つ、座るというのができなくなるのです。特に40代以降は筋肉量が自然と減少しやすく、使わない筋肉はさらに弱くなりやすい傾向があります。
内転筋が弱ると、立つときや歩くときに骨盤をしっかり支えられなくなります。すると体は無意識のうちに、太ももの外側の筋肉(大腿筋膜張筋や外側広筋)で代償しようとします。本来は内側と外側の筋肉がバランスよく働くべきところ、外側ばかりに負担が集中してしまうのです。
すると、太ももの外側に体重をかけて立つ癖が無意識に起こり、太ももの外側は常に緊張し、疲労が蓄積します。ひどい場合には痛みを感じることもあります。さらに、内転筋は骨盤底筋群とも連動して働いているため、内転筋が弱ると骨盤全体の安定性が低下し、姿勢が崩れやすくなります。姿勢が崩れれば全身のバランスも悪くなり、余計な力を使って歩くことになり、結果として脚全体が疲れやすくなってしまうのです。
内転筋は「使える状態に戻す」ことで本来の力を取り戻す
弱ってしまった内転筋を改善するには、まず「使える状態に戻す」ことが大切です。長い間使われていなかった筋肉は、神経から筋肉への指令がうまく伝わりにくくなり、力を入れようとしても思うように働いてくれません。これは「神経筋コーディネーションの低下」と呼ばれ、年齢を重ね、運動不足になるとよく見られます。
そこで効果的なのが、座った姿勢で内ももを意識的に使うエクササイズです。座った状態なら、立っているときよりも体への負担が少なく、内転筋にピンポイントで意識を向けやすくなります。何かを内ももで挟んだり、内側に力を入れたりする動作を繰り返すことで、神経から筋肉への指令がスムーズになり、日常生活でも自然と内転筋が働くようになります。
内転筋が再び働き始めると、骨盤がしっかり安定し、立つ・歩く・階段を上るといった動作が楽になります。太ももの内側と外側がバランスよく働くようになるため、外側への過度な負担が減り、脚全体の疲れにくさが向上することが期待できます。
また、内転筋が働くと骨盤底筋群も一緒に刺激されるため、骨盤全体の安定性が高まり、姿勢改善にもつながります。姿勢が良くなれば、無駄なエネルギーを使わずに効率よく体を動かせるようになり、さらに疲れにくくなるという好循環が生まれます。
座ったままできる!内転筋トレーニングエクササイズ
それでは、実際に内転筋を鍛えて、疲れにくい脚をつくるエクササイズをご紹介します。
【基本の内もも挟みエクササイズ】
まずは内転筋に「働いている」感覚を覚えさせましょう。
- 椅子に浅めに腰かけ、背筋を軽く伸ばします
- 両膝の間にクッション、丸めたタオル、またはペットボトルを挟みます(厚さ10〜15cm程度が目安)
- 息を吐きながら、内ももでゆっくりと挟んだものを押しつぶします
- 内ももに力が入っているのを感じながら、5秒キープします
- 息を吸いながら、ゆっくりと力を抜きます
- これを10回繰り返します
ポイントは、力いっぱい挟むのではなく、「内ももが働いている」と感じられる程度の力で行うこと。このとき、下腹部にも軽く力が入るのを感じられると、骨盤底筋群も一緒に働いているサインです。上半身は力を抜いてリラックスした状態で行いましょう。
【内ももブレーキエクササイズ】
次に、動きの中で内転筋を使う感覚を養います。
- 椅子に座ったまま、両足を肩幅より少し広めに開きます
(photo by Minami Ito)
- かかとは床につけたまま、背筋を伸ばした状態でお辞儀をします
- 上半身を傾けた時に、内ももでブレーキをかけるように力が入っているのを確認します
- ゆっくりと元の位置に戻します
- 10回繰り返します
内ももでブレーキをかけたとき、下腹部にも軽く力が入るのを感じられると良いでしょう。腰に力が入らないように注意してください。
【内もも挟みスクワット】
最後に、内転筋および下半身の筋肉を使いましょう。
- 椅子に座り、両膝の間にクッション、丸めたタオル、またはペットボトルを挟みます。
(photo by Minami Ito) - 両足の内側でボトルを挟んだまま、内ももに力を入れて立ち上がります
- ボトルが落ちないように椅子に座ります
- 内ももの力を抜かずに、ゆっくりと10回繰り返します
膝を使って立ち上がらないように、内ももおよび下半身の筋肉を意識しましょう。慣れてきたら、椅子にお尻をつけずに行うと負荷を増すことができるでしょう。
【日常で意識するポイント】
- 座っているとき、膝が外に開かないように軽く内側に寄せる意識を持つ
- 立っているとき、内ももを軽く寄せ合うイメージで立つ
- 歩くとき、内ももの隙間ができないようなイメージでまっすぐ歩く
これらのエクササイズを1日2〜3回、仕事の合間や家事の合間に取り入れるだけで、内転筋は徐々に強化されていきます。続けるうちに、階段の上り下りが楽になったり、座り姿勢が楽になったり、長時間歩いても疲れにくくなったりする変化を感じられるでしょう。内転筋が働けば、骨盤も安定し、姿勢も美しくなります。ぜひ毎日の習慣にしてみてください。
※注意:痛みを感じる場合は無理せず中止してください。持続的な痛みがある場合は医療機関を受診しましょう。効果には個人差があります。
監修/伊藤みなみ(ピラティス講師)
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