肝臓が疲れると、心まで疲れる!? “感情をためこむ臓器”の意外な真実とは|医師が解説

肝臓が疲れると、心まで疲れる!? “感情をためこむ臓器”の意外な真実とは|医師が解説
Adobe Stock
甲斐沼 孟
甲斐沼 孟
2025-11-16

「なんだか最近、ちょっとしたことで腹が立つ」「落ち込む日が増えた気がする」・・・。そんな心の不調、もしかしたら“肝臓の疲れ”が関係しているかもしれません。医師が解説します。

広告

最近、イライラしやすくなった? それ、肝臓のせいかも

肝臓というと、「お酒の飲みすぎで悪くなる臓器」というイメージが強いですよね。
でも実際のところ、肝臓はお酒だけでなく、ストレスや不規則な生活でも簡単に疲れてしまう臓器なんです。

肝臓の主な仕事は、血液中の毒素を処理したり、代謝を助けたりすること。

体の「解毒工場」と言われるほど、毎日フル稼働しています。

ところが、仕事・人間関係・睡眠不足などのストレスが続くと、この工場がオーバーヒートしてしまうんですね。

肝臓が疲れると、血流が悪くなり、体の中の“巡り”が停滞します。

すると、脳や神経にも十分な栄養が届かなくなり、

「やる気が出ない」「気持ちが落ち込む」といった心の疲れが出てくるのです。

実際、東洋医学では古くから「肝は怒を主る(かんはいかりをつかさどる)」と言われています。

つまり、肝臓が疲れるとイライラや怒りっぽさが出る、というわけです。

現代的に言えば、“ストレスの受け皿”が肝臓にあるともいえるかもしれません。

沈黙の臓器・肝臓が発する「小さなサイン」に気づこう

肝臓はとても我慢強い臓器です。

少しくらいの負担では悲鳴を上げず、自分が限界になるまで文句を言いません。
だから「沈黙の臓器」と呼ばれているんです。

とはいえ、完全に黙っているわけではありません。
ちゃんと、体を通して小さなSOSサインを出しています。

たとえば――

・朝起きたときに体が重い

・顔色がくすんで見える

・口の中が苦い

・食欲が落ちたのに、なぜかお腹まわりが太る

・イライラや不安感が増した

これらはすべて、肝臓が「そろそろ限界かも」と訴えているサインかもしれません。

肝臓
photo/Adobe Stock

たとえば40代男性のKさん。仕事のプレッシャーで毎晩遅くまで残業、ストレス解消に晩酌が日課でした。
ある日、ふと気づくと「寝ても疲れが取れない」「怒りっぽくなった」「集中力が続かない」。

健康診断では肝機能の数値(GPT、GOT)が上昇しており、医師から「肝臓を少し休ませましょう」と指導を受けました。

その後、夜のお酒を週2回に減らし、夕食後の軽いウォーキングを習慣にしたところ、1か月で気持ちの浮き沈みが落ち着いてきたそうです。「怒りっぽさが減って、家族との会話が増えた」と笑顔を見せていました。

肝臓を労わることは、単に“健康”のためだけでなく、心のバランスを取り戻すことにもつながるのです。

まとめ:心を整えるには、まず肝臓を整えよう

「心と体はつながっている」とよく言いますが、実際、肝臓はその“橋渡し役”のような存在です。

血液の質やホルモンのバランスを保つだけでなく、ストレスホルモンの処理にも関わっているため、肝臓が疲れると自律神経まで乱れやすくなります。

逆に言えば、肝臓が元気なら心も安定しやすいということ。では、どうすれば肝臓を元気にできるのか?

ポイントは3つです。

1)夜更かしを控える
肝臓がもっとも活発に働くのは夜10時~深夜2時。この時間帯にしっかり寝ることが、最大のケアになります。

2)アルコールと糖質を控えめに
お酒や甘いものは肝臓の負担に直結します。週に2日は「ノーアルコールデー」を作るのがおすすめ。

3)“ため息”を我慢しない
意外かもしれませんが、深呼吸は肝臓にいいんです。呼吸が浅いと血流が滞り、肝臓の働きも鈍ります。ゆっくり息を吐くことで副交感神経が優位になり、体も心も自然とリラックスしていきます。

心が疲れたとき、つい「気合いを入れなきゃ」と思いがちですが、実は肝臓に休息を与えることこそ、最高のメンタルケア。

「イライラしやすい」「落ち込みやすい」と感じたら、頑張りすぎているのは、もしかしたら“あなた”ではなく“あなたの肝臓”かもしれません。

※本記事は一般的な健康情報であり、診断や治療の代替を目的とするものではありません。気になる症状がある場合は、早めに医療機関にご相談ください。

広告

RELATED関連記事

Galleryこの記事の画像/動画一覧

肝臓