「かゆみ・湿疹」はただの乾燥肌じゃない?一見そうとはわからない「肝臓のSOS」とは|医師が解説
「最近、肌がかゆい」、「湿疹が出やすい」といった症状を、「年齢的に肌が乾燥してきたのかも」、「アレルギー反応かな」と自己判断して、放置していませんか?それらの症状は、肝臓からの異常のサインかもしれません。医師が解説します。
「肝臓のSOS」とは
肝臓は、解毒や代謝、胆汁の生成などを担う“沈黙の臓器”です。
自覚症状が出にくいことで知られていますが、皮膚のかゆみや湿疹という形で体のサインを出すことがあります。
肝臓異常が皮膚に現れる理由として、例えば、胆汁うっ滞が原因の場合には、胆汁の流れが滞って、胆汁成分が血中に逆流して、皮膚の神経を刺激して、かゆみ症状につながることが知られています。
また、肝機能低下に伴って、代謝異常が起こり、老廃物や毒素の分解が不十分になると、皮膚炎や湿疹の原因になります。
肝臓が障害を起こして、ビタミン代謝障害に陥ると、ビタミンAやEの吸収や貯蓄も滞り、皮膚のバリア機能が低下します。
単なる乾燥ではなく、皮膚のかゆみが夜間に強くなる、湿疹やかゆみが長期にわたり治らない、肌に黄色っぽい変化(黄疸)があらわれる、慢性的な疲労感や倦怠感が続く、食欲不振や体重減少などがあれば、一度肝機能をチェックしてみるとよいでしょう。
専門医療機関においては、血液検査で肝機能(AST、ALT、γ-GTP、ALPなどの項目)を確認することができます。
内臓疾患が皮膚に出る例
内臓疾患が皮膚症状として現れるケースは少なくありません。
特に、肝機能異常や胆汁うっ滞などの肝・胆道系の異常は、皮膚に明確なサインを出すことがあります。
例えば、胆汁うっ滞による胆汁酸の蓄積に伴い、血中に増えた胆汁酸が皮膚の神経を刺激して、かゆみ症状を呈することがあります。
胆汁うっ滞に伴う皮膚異常のサインとして、発疹がないのに強いかゆみがある、特に夜間や入浴後にかゆみが悪化しやすい、手のひらや足の裏などに出やすいなどの特徴があります。
関連疾患としては、原発性胆汁性胆管炎(PBC)、肝硬変、胆石症、肝内胆汁うっ滞などが挙げられます。
次に、ビリルビンの血中濃度上昇(肝機能障害・胆道閉塞などによる)に伴う黄疸(皮膚や白目の黄変)の特徴としては、皮膚や眼球結膜が黄色くなる、尿が濃くて便が白っぽくなるサインなどがあります。
関連疾患は、肝炎(ウイルス性、薬剤性)、肝硬変、胆管がん、閉塞性黄疸などです。
慢性的な肝疾患によるホルモンバランスの乱れや代謝異常に伴う皮膚の色素沈着(褐色〜灰色)をきたす疾患としては、肝硬変(特にアルコール性)、ヘモクロマトーシス(鉄過剰症)などが知られています。
特にアルコール性肝障害などで見られる、エストロゲン分解機能低下により毛細血管が拡張するクモ状血管腫(spider angioma)の場合には、中心から放射状に広がる赤い小さな血管の集合が主に顔面・胸部・腕に出現します。
肝・胆道系以外で皮膚に症状が出る内臓疾患の一例としては、糖尿病や腎不全、甲状腺異常、膠原病などが挙げられます。
まとめ
「皮膚がかゆい」「湿疹が続く」などの皮膚トラブルの背景には、肝臓の不調が隠れている可能性があります。
皮膚の症状については、見逃されがちなサインだからこそ、早めのチェックで身体の声に耳を傾けてください。
皮膚症状はときに「体の内側の不調の鏡」であり、特に「治りにくいかゆみ」、「原因不明の肌の色調変化」などがある場合は、肝機能・胆道系を含めた内臓機能のチェックが重要です。
心配であれば、消化器内科など専門医療機関を受診しましょう。
今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。
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