(5)なかなかうまくいかなかった、かかりつけ医や認知症外来の医師との連携

(5)なかなかうまくいかなかった、かかりつけ医や認知症外来の医師との連携
Saya
Saya
2025-10-28

親の老いに向き合うというのは、ある日突然はじまるものです。わたしの場合、それは父の“夜間の徘徊”というかたちでやってきました。これまでは京都での暮らしや移住生活のことを書いていましたが、その裏では東京にいる父の認知症が進行し、家族で介護体制をどう整えるかに奔走していました。介護というと、大変そう、重たそう…そんなイメージがあるかもしれません。でも、わたしにとっては、家族とのつながりを見つめ直し、人の優しさに心動かされることが増えた、そんな時間でもありました。 この連載では、認知症介護の体験を通して、わたしが出会った「幸せの秘密」を、少しずつ綴っていきたいと思います。

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ケアマネジャーが決まり、階段やトイレ、お風呂場の手すりなどのリフォームを済ませ、半日デイサービスへの週2回の通所をスタート。これらは介護の入り口だと思うのですが、何せ初めてのことなので、ここまでたどり着くだけでも突然の徘徊から8ヶ月近くが過ぎていました。なかでも、わたしたちの場合、遅れがちだったのが医師との連携でした。

まずは父のかかりつけの内科医。こちらも高齢で、あまり機能していなかったのです。看護師の三女は、初めから、かかりつけ医を変えたいと言っていたほどでした。それから、認知症外来の医師。アルツハイマー型認知症に進行するだろうと言われたのが徘徊から2ヶ月後。確定診断が降りたのが6ヶ月後でしたが、その頃になって、ようやくお薬をどうしよう、ということになりました。医師からはあまり詳しい話はなく、確かその翌月、徘徊から7ヶ月ほど経過してから、メマンチンという認知症薬と周辺症状向けの抑肝散という漢方をお願いすることになりました。

お薬が遅くなったのは、同行した母や上の妹と、外来の医師との間で、お見合いをしてしまったところもあったのかもしれません。わたしたちは、父の症状についてメールを書いていたのですが、それを診察前に医師が見ていなかったこともありました。

そう、徘徊から6ヶ月後の確定診断の段階で、「お薬はどうしましょうか」というのは、医師にとっては通常のペースだったのかもしれません。それくらい、父の進行が早かったのかもしれないですし、あるいは、認知症が進行している割に父がしっかりしていたので、家族がうっかりしていたとも言えるかもしれません。

ただ家族は、その時点で、「易怒性がひどいので、怒りを刺激するようなお薬はよくないと聞きますから、やわらげるものがいい」などと書いている。そのメールを見てくれていると思ったら、見ていなかった。医師は、家族が強く訴えないし、ようやくの確定診断だし、そこまでではないと思った……というような、コミュニケーションの齟齬があったように思います。初期の段階でも遠慮せず、もっと強く主張しないといけなかったんだろう、というのは反省点です。

野口さとこ

メマンチンと抑肝散がようやく処方されるようになり、半日デイサービスの週2回の通所も叶った。こうした対策で、一時的に落ち着いたように見えたのが徘徊から8〜9ヶ月後でした。易怒性が落ち着く日が増え、時には1週間くらい静かでいてくれる。その一方で、たまに発作のように怒りが起きると、母もパニックになって、わたしにもケアマネジャーにも連絡が来る。すると、ケアマネジャーからもわたしに連絡が来て……と言うように、電話が鳴りっぱなしというほどの大騒ぎになることもありました。連絡も、わたしの頭のなかも混線状態。まさに五里霧中といった頃でした。

→【記事の続き】(6)周辺症状である「易怒性」にクラシカルホメオパシーを使ってみた!こちらから。

文/Saya

東京生まれ。1994年、早稲田大学卒業後、編集プロダクションや出版社勤務を経て、30代初めに独立。2008年、20代で出会った占星術を活かし、『エル・デジタル』で星占いの連載をスタート。現在は、京都を拠点に執筆と畑、お茶ときものの日々。セラピューティックエナジーキネシオロジー、蘭のフラワーエッセンスのプラクティショナーとしても活動中。著書に『わたしの風に乗る目覚めのレッスン〜風の時代のレジリエンス』(説話社)他。
ホームページ sayanote.com
Instagram     @sayastrology

写真/野口さとこ

北海道小樽市生まれ。大学在学中にフジフォトサロン新人賞部門賞を受賞し、個展・グループ展をはじめ、出版、広告撮影などに携わる。ライフワークのひとつである“日本文化・土着における色彩” をテーマとした「地蔵が見た夢」の発表と出版を機に、アートフォトして注目され、ART KYOTOやTOKYO PHOTOなどアートフェアでも公開される。活動拠点である京都を中心にキラク写真教室を主宰。京都芸術大学非常勤講師。
ホームページ satokonoguchi.com
Instagram  @satoko.nog

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