「寝ても寝足りない…」朝すっきり起きられない人が不足しているものとは?【管理栄養士が解説】

起きるのがつらい女性の写真
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朝起きるのがつらい、寝ても疲れがとれない、目は覚めているのに体が動かない。そんな経験はありませんか。 “朝起きられない”原因のひとつとして、体内で不足している栄養素や、睡眠の質自体が落ちている可能性があります。 今回は、管理栄養士の目線で、朝起きられない人に不足している栄養素や生活習慣を解説します。

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朝の立ち上がりを支える「フェリチン(貯蔵鉄)」

鉄分+ビタミンCのイラスト
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眠っても疲れが抜けない人に多いのが、フェリチン不足です。

フェリチンは体内の「鉄の貯金箱」であり、鉄が足りないと脳や筋肉に酸素を送る力が弱まり、朝からガス欠のような状態になってしまいます。

また、血液検査でヘモグロビン値が正常でも、実はフェリチンが不足している人は少なくありません。
この状態は「隠れ鉄欠乏(潜在性鉄欠乏)」と呼ばれ、特に女性では月経や食事制限、ダイエットなどが原因で起こりやすいといわれています。

フェリチンが減ると、朝のだるさや集中力の低下、髪や爪のもろさ、動き始めの息切れなど、ちょっとした不調が積み重なります。

効率よく摂るためのポイント

フェリチンを上げるには、鉄を含む食材と吸収を助ける組み合わせがポイントです。

赤身の肉やあさり、かつおなどの動物性食品に多い「ヘム鉄」は吸収率が高く、ブロッコリーやピーマン、いちごなどビタミンCを一緒にとると、さらに効率が上がります。

反対に、食後すぐのコーヒーや紅茶は吸収を妨げるため、少し時間をあけるとよいでしょう。

フェリチンが回復すると、睡眠中の酸素供給も整い、結果として朝のだるさが軽くなることがあります。

体内時計の調整役・ビタミンD

ビタミンDイラスト
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「寝ても寝足りない…」、「朝すっきり起きられない…」、そんな人はビタミンD不足かもしれません。

ビタミンDは、脳内の体内時計の調整にも関わる栄養素で、血中のビタミンD濃度が低い人は、睡眠時間が短く昼間の眠気が強い傾向があることが報告されています。

現代人は屋内で過ごす時間が長く、日光を浴びる機会が少ないため、慢性的に不足しやすいと言われています。

ビタミンDを多く含む食材と効率よく摂るポイント

ビタミンDは、鮭、しらす、卵黄、干ししいたけなどの食品からとることができます。

とくにきのこ類は、日光に当てて干すことでビタミンD量が増えるため、料理に上手に取り入れたい食材です。

例えば、買ってきたきのこを冷蔵庫に入れる前に、窓際で15分ほど日光に当てるだけでもビタミンDは増えます。

ただし、ビタミンDは脂溶性ビタミンのため、サプリメントでの過剰摂取には注意が必要です。毎日の食事や日光から自然に取り入れることを心がけましょう。

適度な日光浴もおすすめ

また、15〜30分ほど日光を浴びることで、体内でのビタミンD合成も促されます。

天気のよい日は、ベランダや通勤途中で光を浴びるだけでも十分に効果があります。

朝の光は体内時計をリセットし、メラトニン(睡眠ホルモン)の分泌を止めて、体に“朝が来た”ことを知らせてくれるスイッチになります。

「夜の眠り」をつくる朝の栄養素・トリプトファン

メラトニン生成
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意外に思われますが、夜ぐっすり眠るための準備は朝に始まります。

朝に摂ったトリプトファン(必須アミノ酸)は、体内でセロトニンへ、そして夜には睡眠ホルモン・メラトニンへと変わります。

この変換には10〜14時間ほどかかるため、朝にトリプトファンをとることが「夜に自然に眠れる体」をつくるカギになるのです。

トリプトファンを多く含む食材

トリプトファンは、良質なたんぱく質を含む食品に多く含まれています。

卵、納豆、ヨーグルト、チーズ、ツナ(水煮缶など)が代表的で、 トリプトファン+炭水化物の組み合わせで脳への取り込みが促されるため、朝食で少しでも食べることが効果的です。

睡眠の質が上がれば、朝も変わります

理想的な朝食
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栄養が整うと、体のリズムも自然と整っていきます。

フェリチンがエネルギーを支え、ビタミンDが体内時計を合わせ、トリプトファンが眠りの質を高めます。

この3つのバランスが取れていると、夜の休息が深まり、朝の目覚めも軽くなっていきます。

起きられない朝を変えるのに、特別なことをする必要はありません。体は、少しの「光」と「栄養」で変わり始めます。

その変化に気づくことが、心地よい毎日への第一歩です。

ぜひ、できることから始めてみましょう。

【参考文献】

厚生労働省. 日本人の食事摂取基準(2025年版)

厚生労働省. 健康づくりのための睡眠ガイド2023〜生活習慣病予防のために〜. 2023年改訂版.
Yan S. et al. “A meta-analysis: Does vitamin D play a promising role in sleep disorders?” Food Science & Nutrition. 2020;9:5696–5709.

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