単なる「目の病気」とあなどっていない?緑内障・網膜症・血管変化…目から見た全身血管状態|医師解説
緑内障や網膜症を単なる「目の病気」と思っていませんか?これらの病気は、その奥に全身の血管トラブルが潜んでいることが少なくありません。医師が解説します。
緑内障・網膜症・目の血管変化とは?
「最近、目がかすむ」「視野の一部が欠けている気がする」——そんなサインを感じて眼科に行くと、「緑内障」や「網膜症」と診断される人が増えています。
どちらも“目の病気”として知られていますが、実は単に目の問題ではなく、“全身の血管の状態”を映す鏡のような存在でもあります。
まず、緑内障は「視神経」がじわじわとダメージを受けていく病気です。
原因の一つに「眼圧の上昇」がありますが、最近では眼圧が正常でも進行するケース(正常眼圧緑内障)も多く、日本人ではこのタイプが特に多いことが分かっています。
つまり、眼圧だけでなく、目の奥にある細い血管の循環が悪くなっていることが影響しているのです。
一方、網膜症は糖尿病や高血圧が原因で、網膜の毛細血管が傷つき、出血や浮腫を起こす病気です。
糖尿病網膜症、高血圧性網膜症、動脈硬化性網膜症など、背景にある全身疾患によってタイプが異なります。
これらはいずれも、体の中で「血管がもろくなっている」「血流が悪くなっている」ことを意味します。
つまり、目の血管が変化しているということは、全身の血管も同じように老化や障害を受けているサインである可能性が高いのです。
内障・網膜症・目の血管変化 — 目から見た全身血管状態
実は、目の奥の「網膜」は全身で唯一、血管の状態を直接観察できる場所です。
脳や心臓の血管を覗くことはできませんが、眼底検査では顕微鏡のように血管の太さや走り方、出血の有無まで見ることができます。
これは、医学的に非常に貴重な情報です。
たとえば、眼底の血管が細くなっていたり、蛇行していたりすると、高血圧や動脈硬化が進んでいるサインと考えられます。
つまり、緑内障を単なる“目の病気”として放置するのではなく、「全身の血管の健康状態を示すバロメーター」として捉えることが大切なのです。
最近では、OCT(光干渉断層計)という機器で、網膜の厚みや血流を精密に測定できるようになりました。
これにより、緑内障や網膜症の早期発見はもちろん、全身の血管トラブルを“目から先読み”できる時代になりつつあります。
さらに、研究では、網膜の血管構造が脳の血管構造と非常に似ていることが分かっています。
つまり、網膜に異常がある人は、脳血流が低下していたり、小さな脳梗塞が隠れていたりするケースもあるのです。
実際、アルツハイマー病や認知症のリスクを、網膜画像から予測しようという研究も進んでいます。
まとめ
目の病気と聞くと、「老化だから仕方ない」「視力の問題」と思いがちですが、実はその奥に全身の血管トラブルが潜んでいることが少なくありません。
緑内障は視神経の血流障害、網膜症は毛細血管の障害——いずれも“血管の弱り”が根本にあります。
つまり、目の健康を守るということは、同時に脳や心臓、腎臓といった重要臓器の健康を守ることにもつながるのです。
「目は口ほどに物を言う」といいますが、医学的には「目は血管ほどに体を語る」と言ってもいいでしょう。
眼科の定期検査で「血管が細いですね」「出血がありますね」と言われたら、それは“全身からのSOSサイン”かもしれません。
大切なのは、目だけを診るのではなく、全身の血管の健康を意識すること。
塩分や脂質を控え、血糖コントロールを整え、適度な運動を心がける——そんな基本的な生活習慣の積み重ねが、結果的に目の病気の進行を防ぐ一番の治療になります。
そして、眼科と内科が連携して血管の状態を総合的にチェックすることが、これからの医療のスタンダードになっていくでしょう。
「目の奥を見ることは、体の中を見ること」。
そのことを知っているだけでも、あなたの健康との向き合い方が、きっと少し変わるはずです。
今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。
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