オシャレな部屋の収納術をマネしても失敗する理由。片づけのプロが教える「できる片づけ」の見つけ方

オシャレな部屋の収納術をマネしても失敗する理由。片づけのプロが教える「できる片づけ」の見つけ方
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「整理・収納・片づけ」には明確な違いがあり、SNSで見かける素敵な収納術をマネしても失敗するのには理由があります。『がんばらない片づけ 「ムリなくキレイが続く」収納のヒント』(三笠書房)著者の下村志保美さんに、片づけの本質について伺いました。大切なのは「思考の整理」から始めること。他人の方法をマネるよりも、自分の生活スタイルに合った「できる片づけ」を見つけることが成功への近道だといいます。

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整理・収納・片づけの違いを理解することから始めよう

——整理・収納・片づけはそれぞれどのような違いがあるのでしょうか。

整理は物の要・不要やよく使う・使っていないを分ける作業です。

収納は、整理で分けた物を使いやすい場所に収めていきます。

片づけは、使った物を収納に戻す作業です。

単発の作業としてとらえるのではなく、「暮らしを整えるプロセス」と考えていただくとイメージしやすいと思います。一番土台となるのが整理ですが、整理にも「思考の整理」と「物・動線・部屋・仕組の整理」があります。

——土台である「思考の整理」がしっかりしていないと、収納や片づけもうまくいかないということでしょうか。

そうですね。思考の整理ができることで、なぜ片づけるのか、どういう部屋にしたいのかという“ゴール”が見えてきます。目標が定まれば、日々の習慣である片づけや掃除が楽になります。

ちなみに時間がかかる順番で並べると、思考の整理→物・動線・部屋・仕組の整理→収納→整頓(見た目を整えること)→片づけ→掃除です。それくらい思考の整理はポイントになってきます。

オシャレな人のマネをしても失敗する理由

——本書では、SNSや雑誌で得た情報をもとに片づけをすると失敗しやすいことが指摘されています。なぜでしょうか?

オシャレで片づいた部屋の発信をしている人と、住んでいる家・家族構成・ライフスタイル・ライフステージ……と色々違いがあります。だからやり方だけマネしても失敗することが多いのです。

ファッション誌で見て素敵だと思った服を実際に着てみたら、サイズやデザインが自分のイメージとは合わなかったという経験をしたことがありませんか?それと同じで、発信者とは色々な状況が異なるのに、収納用品だけ同じグッズを使っても、うまくいくはずがないのです。

基本的に、SNSで美しい部屋の発信をしている人は、“片づけが得意な人”が多いです。たとえば常にソファーの上に洗濯物が山積みになっている人が、いきなり毎日きちんと衣類を畳んでタンスの中に入れるというのは、かなりハードルが高いことだと思います。

きちんとしまうのが苦手なのであれば、とりあえず引き出しに入れればいい仕組みにするなど、ハードルを下げることが必要になってきます。「したい片づけ」よりも「できる片づけ」を目指すことが成功の近道です。

——SNSで見る片づけ術の中で、「素敵だけれど、面倒だな」と感じることがあります。

見るだけで面倒だと思うのでしたら、ご自身で実際に続けていくのは難しいですよね。「面倒センサー」を一つの手がかりにするのもいいと思います。

色々な方の片づけ情報を見る中で、プロの私でも「これはちょっと大変だな」と思う方法は少なくありません。「バズっているから」とすぐに取り入れるのではなく、自分に合うかどうかを見極める冷静さは必要です。

もちろん最初から100%自分に合う方法にたどり着くのは難しいですから、人のマネをするのはいいと思います。ただ、使いにくさを感じたら、1か月など期間を決めてその方法を諦める勇気も大切です。

一発逆転や必殺技を狙うと失敗しますから、試行錯誤を繰り返すものだと思っておいた方がいいでしょう。

——ある程度の失敗はするものなのですね。

SNS関連でいいますと、「片づけたい!」と思ったときは、テンションが上がっていて、誰かの素敵なお部屋の写真のマネをしたくなっていることが多いんです。

でも冷静にイメージしていただきたいのが、疲れている日でも、体調が悪い日でも、その状態が維持できるか。たとえば、綺麗に整えられた引き出しの仕切りに、靴下を一足ずつ収めていくことが、残業続きの毎日でもできるか?と、自分に問いかけてほしいです。

私自身、かつてSNSのマネをして購入した収納グッズを結果的には大量に捨てることになって罪悪感に襲われましたし、私のお客様にも片づけの最後に収納グッズを手放す方はとても多いです。もったいないのですが、「あんな痛みはもう二度と味わいたくない」と次への教訓にはなりますよね。

自分にとっての片づけのゴールを見つける方法

——漠然と「綺麗で過ごしやすい部屋にしたい」と思っている人も少なくないと思うのですが、具体的に自分のゴールを見つけるためにはどういう方法があるのでしょうか?

片づけた先に何を求めるか、どんな場所で誰とどんな時間を過ごしたいのか。または「どうなったら、片づいてると思えますか?」と考えていただいています。

たとえば私の自宅は物が少ないのですが、その写真を見たお客様は「あんな部屋にしたいです」とおっしゃいます。でも改めて「この部屋とまったく同じでいいのですか?」とお伺いすると、「ソファーは欲しいです」「テーブルの上にリモコンは置いておきたいです」とご自身がしたい暮らしの具体的なビジョンが出てきます。

そんなときにオススメのアクションがあります。キッチンカウンターの上など、一部分だけでいいので、“自分の理想の部屋の状態”を一時的に作って“写真を撮ってみる”と、何をすべきかが見えてきます。

——部屋の広さに対して物が多く、生活しづらさを感じているのに、物を減らすのにも抵抗があると感じている場合に、どんな対策がとれますか?

前提として、どんな暮らしがしたいのかを考えていただきたいです。たとえば本が大好きで、多少は生活動線が悪くても、たくさんの本に囲まれて暮らしたいという人もいれば、絶対に物が少ない空間で暮らしたいという人もいるでしょう。意外と自分にとっての優先順位が決まってなくて悩んでいる人は多いです。

どうしても必要な物が多いのであれば、都会ではなく郊外に住めば、同じ家賃でより広い家に住めます。でも何かしらの理由で都会に住んでいるのであれば、その人にとっては、広い家よりも、都会に住むことの優先順位が高いということですよね。

中には都会に住みながら、トランクルームを利用している方もいます。コストをかけてまで持っていたい物なのか、それはご自身の人生そのものと向き合うきっかけになるはずですよ。

※後編に続きます。

 

『がんばらない片づけ 「ムリなくキレイが続く」収納のヒント』(三笠書房)
『がんばらない片づけ 「ムリなくキレイが続く」収納のヒント』(三笠書房)

【プロフィール】
下村志保美(しもむら・しほみ)

時間×片づけコンサルタント、ファイナンシャル・プランナー、家計アドバイザー。
1968年愛媛県生まれ。英語講師や投資顧問会社での勤務後、夫の転勤に伴い中東カタールで生活。当時は国際情勢が安定しない中、本当に必要なモノだけで暮らす生活を実践。
帰国後、友人宅の整理・収納方法をアドバイスしたことをきっかけに、2014年に片づけのプロとして起業。
「空間・心・時間」の3つを“整える”ことで忙しい女性をサポートする「PRECIOUS DAYS」を主宰。

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