断捨離は単なる片づけではない。断捨離提唱者やましたひでこが語る、手放すことで訪れる変化とは

 断捨離は単なる片づけではない。断捨離提唱者やましたひでこが語る、手放すことで訪れる変化とは
Akiko Oosaki

体を神殿ととらえるヨガ哲学は、「住まいを整える」という日常生活にも落とし込むことができます。本特集では、ヨガを通して暮らしと心を整える方法を一緒に考えていきましょう。まずは断捨離の第一人者で断捨離ヨガの指導者でもあるやましたひでこ先生に、ヨガに通じる断捨離の奥義と手放すことで訪れる変化を伺いました。

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体に呼吸を巡らすように空間にも新陳代謝を

断捨離を提唱し実践してきたやましたひでこ先生のご自宅は、余計な物が一切見当たらず、清々しい氣の交流が感じられる断捨離の表現ともいえる空間。先生の人生を変えた断捨離の原点は、大学時代に出合ったヨガでした。当時、大学での人間関係に疲れて家にこもっていたという先生。ヨガなら人と関わらずに体を動かせると思い、たまたま手にしたカルチャーセンターの広告で目に留まった沖ヨガの教室に通うことに。また、道場での沖正弘先生による直接指導は「躍動感に満ちた感動体験だった」と当時を振り返ります。

「興味深かったのは、ヨガでは心の在り様をカウンセリングせずに、心の状態が表れる体にアプローチし、心を立て直していくという作法。たとえば気分が落ち込むと人は自然と前かがみになりますが、胸を張ってハート・チャクラを開くことで元気になり、体が整うと心のとらわれがなくなることを学びました。ヨガで体の緊張が取れると他者を拒絶していた心もほぐれ、無邪気で好奇心旺盛な自分の一面に気づき、それを表に出せたら人間関係が劇的に良くなったんです」

卒業後、23歳で結婚したやました先生。「若かったですし同居だったこともあり、家の中はとにかく物が多かった。そんな家に息苦しさを覚え、ヨガの行法哲学『断行・捨行・離行』に着想を得て取り組み始めたのが断捨離です。役に立ったのは『人が病気になるのは栄養やカロリー不足のせいではない。それらが過多になり、うまく排出されなかった残留エネルギーが原因』という沖先生の教え。体は心の容れ物で、住空間は人間の容れ物。どちらも空間と考えれば家にも同じことがいえる、ならば不要な物は手放そう。閉塞空間を深呼吸したくなる呼吸空間にしようと思いました。断捨離は空間に呼吸を取り戻す『空間のヨガ』なのです」

生活ヨガと呼ばれる沖ヨガもしかり、ヨガは本来スタジオで練習して難しいポーズを達成するのがゴールではなく、より良く生きるための知恵を生活で実践してこそ意味があります。ヨガを通じた断捨離への目覚めは、師から学んだヨガのあるべき姿を体現した瞬間でもありました。

改めて自分の家の中を見渡してみると、買った当時は高価だったから、思い出の品だから……と、理由をつけて使わないのに捨てられない物であふれていませんか。不要な物を捨てられないまま新たに物を買い込む悪循環が片づかない最大の理由。ならばきちんと収納すればよいかというと、断捨離と収納術はまったく別物だと言います。

また、家財を極力減らして生活する、ミニマリズムとも混同されがちですがそれも違います。断捨離は単なる片づけや最小限化ではなく、『要・適・快』と『不要・不適・不快』を見極めてそれを入れ替えて最適化すること。いらない物を手放して空間に余白をつくり、新陳代謝を生む作業、それが断捨離なのです。

暮らしと体、心が整う断捨離とヨガ①
photo by  Akiko Oosaki

断捨離ヨガで感覚を磨き手放し上手に

断捨離ヨガは、断捨離の考え方をベースにやました先生が考案したヨガメソッド。自分と物の関係を見直す作業である断捨離に対して、断捨離ヨガは自分と自分の体との関係を問い直す行為だと言います。 
「断捨離ヨガは美しいポーズを追求する必要はなく、柔軟性も問わないので誰でも行えます。大切なのは体と命に適度な刺激を与え、今日は肩甲骨まわりが硬い、腿裏が張っているという体に対する気づきを促すこと。そして体に流れる命のエネルギーを感じながら動き、そのエネルギーが体全体に広がる心地よさを味わってください。多くの人は体の声、すなわち命の声を聞くのが苦手でヨガにかぎらず日常生活でも無理をしてしまいますが、断捨離ヨガを続けていくと感覚が研ぎ澄まされていき、気づく力が高まります。そうなると日常生活でも要・不要を見極められるようになって、断捨離が進むという人は多いですよ」

教えてくれたのは…やましたひでこ先生
断捨離の提唱者、断捨離ヨガ指導者。一般財団法人「断捨離」代表。断捨離に関する書籍は国内累計600万部を超える。講演やメディア出演、セミナー経験も多くオンラインによる断捨離ヨガの指導も好評。

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photos by Akiko Oosaki
hair&make-up by Kyoko Suzuki
text by Ai Kitabayashi
yoga Journal日本版Vol.78掲載

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ヨガジャーナル日本版編集部

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