人生に片をつけるために欠かせないものとは?断捨離提唱者やましたひでこが語る、向き合うべき重要事項
片付けと聞くと、「散らかっているモノ」を想像する人が多いと思います。もちろん、モノは片付けないといけませんが、自分の人生に対して片をつけるために向き合わなければならないのは、モノだけではありません。
『暮らしも心も調う 大人の断捨離手帖』(著者/やましたひでこ Gakken・刊)より抜粋してご紹介します。
片づけと人間関係
本当の意味で、自分の人生に「片をつける」ために欠かせないものは?と聞かれたら、私は「人間関係」の片づけだと答えます。
人間関係もいろいろですが、ずっと尾を引くかのように人生に色濃く影響していくのは、自分と親との関係なのかもしれません。なぜなら、私たちは親の価値観を無意識のうちに受け継いでいるからです。親の視点で、他者を判断している可能性が大いにあります。
ある断捨離実践者の方の経験談をお話し
離婚して4年が経過しているのに、かつての夫が使っていた洋服ダンスが大いに幅を利かせている部屋で暮らしている女性がいました。実は、彼女はその洋服ダンスが部屋に鎮座しているというおかしな状態に、断捨離を始めるまで気づいていなかったのです。離婚騒動の後、あらかた片づけて処分したはずなのに、なぜ洋服ダンスだけが取り残されていたのか?
彼女はあることに思い当たったのです。それは自分の実家の両親のこと。
彼女の両親は、4年前の娘の離婚を、未だ親戚にも近所にも隠し続けていたのです。娘の離婚は恥ずべき行為であって、世間に知られてはいけないと思っていたのでしょうか。
彼女はこんな両親の態度に胸がこたえていたはず。なぜなら、自分は両親の期待を裏切った娘になり果てたのだから。
元夫の洋服ダンスが残ってしまっていたのは、その存在感あるタンスが夫代わりとなり、あたかも結婚生活が継続しているかのようなフリをさせてくれるから。離婚したことのカモフラージュになっていたのです。それはすなわち、親の失望と親を失望させてしまった自分自身の後ろめたさ、心の傷のカモフラージュ。自分でも無意識無自覚なカモフラージュだったのです。
それに気づけた彼女は、ただちに元夫の大きな洋服ダンスを断捨離。離婚は自分がより幸せになるために選択・決断したもの。親に憚るものではなく、人生をより自分らしく生きていくための選択と意識を切り替えられ、本当の意味で人生に「片がついた」ときでした。
モノを片づけて、人生に片をつけていく。人生に片をつけて、モノを片づけていく。どちらが先でも、どちらが後でもない、同時進行のスパイラルアップの世界。
この先、私はどう生きたいのか
モノとの関係を問う際の問いかけは「今の私にとって、必要か不要か」です。この「要・不要」の線引きが、実はこれからの「人生のビジョン」と大きく関係していることに、私たちは多分無自覚です。「今の私に必要かどうか」を基準にモノとの関係を見直すことは、究極的には「この先、私がどう生きたいのか」を考えることと同じ。これから先、どう生きるかの見通しがなければ、何を残してよいかわかりませんよね。だからこそ、ビジョンが重要です。未来を決めるのは、「これから先、どう生きるか。どんな人でありたいか」という意思です。片づけとは「片をつける」ということです。それは人生に片をつける、方向性を見出すということでもあります。「今の私」は、過去ではなく、未来から逆算して、あなたが決めるのです。
著者/やましたひでこ
断捨離提唱者、ミリオンセラー作家、一般財団法人「断捨離®︎」代表。学生時代に出逢ったヨガの行法哲学「断行・捨行・離行」に着想を得た「断捨離」を日常の「片づけ」に落とし込み応用提唱。誰もが実践可能な「自己探訪メソッド」を構築。断捨離は人生を有機的に機能させる「行動哲学」と位置づけ、空間を新陳代謝させながら新たな思考と行動を促すその提案は700万部ミリオンセラー。アジア各国、ヨーロッパ各国において20言語以上に翻訳されている。
AUTHOR
ヨガジャーナルオンライン編集部
ストレスフルな現代人に「ヨガ的な解決」を提案するライフスタイル&ニュースメディア。"心地よい"自己や他者、社会とつながることをヨガの本質と捉え、自分らしさを見つけるための心身メンテナンスなどウェルビーイングを実現するための情報を発信。
- SHARE:
- X(旧twitter)
- LINE
- noteで書く