関節の角度を知ると足はもっと高く上がる!その方法は #パフォーマンス医学
人間の可能性について医学の立場から発信する二重作拓也ドクター。新たに提唱する「パフォーマンス医学」は、ジャンルや属性を問わず誰もが変化できる医学的背景を提示しています。読んだらきっとこう思うはず、「身体って、人間って、面白い!」。
みなさんは「足を高く上げて」と言われた時、どのようにして足を上げますか?
アスリートやダンサーではない、多くの一般の方が、自身の顔の前を方向、すなわちつい身体の正面に向かって足を上げてしまいがちです。しかし足を挙上する方向は、それがベストなのでしょうか?
ここで、人間の骨盤と足の関係を見てみましょう。
CT画像で見てみると、骨盤から真正面の方向に股関節があるのではなく、およそ斜め方向に股関節が位置しています。(ボールのような丸い骨が、股関節を形成する足側の骨、大腿骨です)股関節は、まるで“ドアの蝶番が少し外を向いている”ような構造になっています。
ですから「足を上げて」と言われた時に、まっすぐ身体の正面方向に向かって足を上げてしまうと、股関節あたりになんだか、ぶつかるような感じが生じてしまいます。この構造的な問題が、足を高く上げる運動を阻害してしまっている、というわけですね。ではどうすれば、足をより高く上げることができるのでしょうか?
足の上がる方向を体で理解してみよう
仰向けで寝てみましょう。その状態で、片方の膝を曲げてまっすぐ上半身の方に向かって脚を上げてみましょう。
そして、この角度を覚えた状態で、今度は、膝を身体の正面に対して、斜め45度くらいに外側に角度をつけて、つまり、肩の方向に向かうようにしてみると、どうでしょう?
膝が先ほどよりも高い位置にあるかと思います。
正面に向かうと、股関節がロックされたようにぶつかってしまい、それ以上は上がらないけれど、肩に向けて(右膝なら右肩、左膝なら左肩)に向かって上げていくと数センチから10センチ以上の差が出るのです。
これを立った時のキックで実験してみます。キックする時、まっすぐ脚を上げるのではなく、少し外側に向かってあげるようにしてみましょう。脚を上げるコースが体の正面から少し外側、肩に向かって挙上するだけで角度が随分と変わるのです。
これについて私自身が被験者となり、レントゲンを撮って画像上で確認してみました。
こちらのレントゲンは、膝を身体の真正面方向に向かって動かしたときの最高点を撮影した画像です。膝のいちばん上は11番目の胸椎と12番目の胸椎の間くらいの高さでした。
次に真正面ではなく、膝を外側方向に向けて動かした場合、膝の最高点は7番目の胸椎の高さまで到達しました。
このように胸椎にして4つ分の高さに差が出たのです。(あくまでひとりのケースでの結果です)
このように、解剖学的な視点で体を見てみると、「身体の構造を知っている」は、パフォーマンスにおいてかなり有利に働きます。なぜなら、体を動かす時に運動イメージが変わるからです。
格闘技でハイキックが上手な選手も、まっすぐに脚を上げるのではなく斜めに体を切って使っていたり、例えばバレリーナの方も、脚を高くあげる時に膝の角度が外を向いていたりしています。これらの動きは、構造上理に適っているということです。
練習していくうちに、「こっちに動かしたほうがいいな」と気づければいいのですが、実際、知識の無いまっさらの状態から「理に適った身体の動き」に辿りつかない人の方が圧倒的に多いのが現実です。「足が高く上がらないのは、柔軟性が足りないから」そう思い込んで、ストレッチをやるのに、一向に高さが変わらない。そういう人にたくさん会ってきました。しかし医学知識を得たり、解剖学の本や、このようなレントゲンを視ながら、「私の身体はこうなっている」を視覚情報として脳にインプットし、よりよい運動イメージを想起してもらう。この作業を丁寧に行うことで、動きとは確実に向上していきます。
私が、パフォーマンス医学という形で、医学的背景を皆さんと共有しているのは、人間の心と体についての知見のベースを引き上げることで、より多くの人たちが自身の可能性を高めることができる、と信じているからです。
「知は力なり」という言葉があります。足を高く上げる。この単純な動きひとつとっても、「知りながら実践する」のと、「知らないまま闇雲にやる」では、到達できるゴールが全く違ってきます。小さな変化が大きな違いを生むのに、知らないがゆえに成長が阻害されてしまうのは、あまりに勿体ないです。
正しく知ることで、運動イメージは変わります。ぜひともご自身の可能性にアクセスしてみてください。
動画で実践編を見てみよう!
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