(6)ケアマネ選びには相性も。連絡が取れなくなったおふたりめ
親の老いに向き合うというのは、ある日突然はじまるものです。わたしの場合、それは父の“夜間の徘徊”というかたちでやってきました。これまでは京都での暮らしや移住生活のことを書いていましたが、その裏では東京にいる父の認知症が進行し、家族で介護体制をどう整えるかに奔走していました。介護というと、大変そう、重たそう…そんなイメージがあるかもしれません。でも、わたしにとっては、家族とのつながりを見つめ直し、人の優しさに心動かされることが増えた、そんな時間でもありました。 この連載では、認知症介護の体験を通して、わたしが出会った「幸せの秘密」を、少しずつ綴っていきたいと思います。
2024年の夏至を過ぎた頃、父の介護認定結果が出たわけですが、初めにお願いした男性ケアマネジャーは、父の妄想による攻撃で秋分にチェンジ。次の女性のケアマネジャーは、前任者の失敗を踏まえて、にこやかに父を立ててくれる方でしたが、父の易怒性は、秋分から冬至にかけてがピークでもあり、ここでまた、ケアマネジャーが利用者である父よりも、介護者である母に気持ちを傾けてしまう事態が起こっていきました。
父が易怒性を発揮するなかで、母がケアマネジャーに助けを求めるのは自然なことではあるのですが、担当になった女性ケアマネジャーは母とは話すものの、攻撃性の激しい父本人との関わりは明らかに避けているし、家族であるわたしからの問い合わせにもひと月以上、返信がないという事態が起こっていきました。
それが冬至から年明けにかけてのこと。9月以降、毎月のように上京し、介護体制づくりに翻弄する日々。京都に戻ってからも、頻繁に父の易怒性が発揮され、母からも連日、ヘルプコールが入るなかで、とうとう、わたしが感染症でダウン。クリスマスから3週間ほど、寝たり起きたりを続けていたのもあり、ふたりめの女性ケアマネジャーと、意思の疎通ができなくなってしまったのです。
この頃、もの忘れ外来の医師には「精神科への転院」を勧められていましたが、「近隣にどんな精神科があるのか」と女性ケアマネジャーに伺っても、ショートメールで「このあたりでは◯◯病院と××病院と△△病院ですので、問い合わせてください」と返ってくるのみ。もちろん、ケアマネジャーにすべてをお願いしようとは思っていませんが、介護プランについて、専門的なアドバイスがないのは悩みの種でした。
そこで、先ほどお話ししたスピリチュアルな所長さんの登場です。状況を相談したところ、彼女自身、43人くらいもの利用者さんをもっていたにも関わらず、父を担当してくださることになったのです。

結果、スピリチュアルな所長さんは、天使のように、父とも向き合ってくださいましたし、わたしたちへの連絡も頻繁でした。一番大変なときにピンチヒッターを買って出て、中継ぎ役を果たしてくださったふたりめの女性ケアマネジャーにも、今となっては感謝しかないのですが、やはり利用者本人との相性はもちろんのこと、家族との相性もありますね。全員が介護経験のない、いわば介護初心者ばかりのわが家ではケアマネジャーに求める素質が〝選択肢を挙げて、説明をしてくださる〟だったのだと思います。
「精神科や施設」を勧められるにしても、わたしたちは、「父にとって、よい施設がどこか」を知りたい。それを理解してくださったのがスピリチュアルな所長さんでした。お引き受けいただくとなって、初回にお会いしたときのこと。A5のノート1枚に、今後の道筋をプランAからCくらいまで書いてくださいました。精神科についても、「◯◯病院には認知症病棟もあって、そこで投薬治療をして、穏やかになってもらう方針です」と言うように、詳しく教えてくださる。なかでも、「要介護3以上になったら、社会福祉法人の介護福祉施設(特別養護老人ホーム)に入れるのですが、昔、料亭だった場所に建てられた××という特養は、周囲に自然もあるし、スタッフもすごくいいので、自分の親だったら入れたい」と勧めてくださったことは、わたしたちの希望になりました。暗中模索で動いているので、見通しが生まれることが大切なのですね。
→【記事の続き】(7) いくら感謝しても仕切れないケアマネさんへの思い…… はこちらから
文/Saya
東京生まれ。1994年、早稲田大学卒業後、編集プロダクションや出版社勤務を経て、30代初めに独立。2008年、20代で出会った占星術を活かし、『エル・デジタル』で星占いの連載をスタート。現在は、京都を拠点に執筆と畑、お茶ときものの日々。セラピューティックエナジーキネシオロジー、蘭のフラワーエッセンスのプラクティショナーとしても活動中。著書に『わたしの風に乗る目覚めのレッスン〜風の時代のレジリエンス』(説話社)他。
ホームページ sayanote.com
Instagram @sayastrology
写真/野口さとこ
北海道小樽市生まれ。大学在学中にフジフォトサロン新人賞部門賞を受賞し、個展・グループ展をはじめ、出版、広告撮影などに携わる。ライフワークのひとつである“日本文化・土着における色彩” をテーマとした「地蔵が見た夢」の発表と出版を機に、アートフォトして注目され、ART KYOTOやTOKYO PHOTOなどアートフェアでも公開される。活動拠点である京都を中心にキラク写真教室を主宰。京都芸術大学非常勤講師。
ホームページ satokonoguchi.com
Instagram @satoko.nog
- SHARE:
- X(旧twitter)
- LINE
- noteで書く





