(3)だんだんわかってくる要介護認定とケアマネジャー事情

(3)だんだんわかってくる要介護認定とケアマネジャー事情
Saya
Saya
2025-09-30

親の老いに向き合うというのは、ある日突然はじまるものです。わたしの場合、それは父の“夜間の徘徊”というかたちでやってきました。これまでは京都での暮らしや移住生活のことを書いていましたが、その裏では東京にいる父の認知症が進行し、家族で介護体制をどう整えるかに奔走していました。介護というと、大変そう、重たそう…そんなイメージがあるかもしれません。でも、わたしにとっては、家族とのつながりを見つめ直し、人の優しさに心動かされることが増えた、そんな時間でもありました。 この連載では、認知症介護の体験を通して、わたしが出会った「幸せの秘密」を、少しずつ綴っていきたいと思います。

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このケアマネジャーさんは、介護初心者のわたしにもわかるように、噛んで含めるように、やさしく、ゆっくり話してくださる方でした。長年、取材をしているわたしは、少し話せば、信頼できるかどうかはわかるので、「この人よいな」とすぐに思ったものの、疑問を感じたのは、「要介護から要支援へと変わる方がいる」ということでした。

その点を確認すると、「認知症は進行性なので、よくなることはないとみなされ、要介護以上がつくことが多いんですが、介護保険制度も財政面で逼迫しているので、認知症以外で介護が必要な方は、今年になって、要介護から要支援へと変わることが増えています」ということでした。

ここで再度、解説しておくと、認知症になったら、みなさん、地域包括支援センターに行くわけですね。その後、役所の家庭訪問があり、多くの場合は家族も立ち会ったうえでの調査があります。それをもとに役所で専門家による会議があり、介護認定が下りることになるのは以前、お話ししたとおりです。その介護認定結果にもとづき、「要支援1・2」の方は地域包括支援センターの、「要介護1以上」がつくと、居宅支援介護事業所(以下、事業所)の担当になります(「要介護度」は、1から5まであります。「要支援」も「要介護」も付かない、「自立」もあります)。

自力で歩けなかった人が歩けるようになると、「要介護」がついていたものが「要支援」になることもある。それで、わたしが電話した事業所でも、抱える利用者さんがひとり減って、うちの父を受け入れる枠ができたということなんですね。

ケアマネジャーひとりが担当できる利用者数は45人未満が基準で、40人くらいが一般的だそうですが、うちの実家のあるエリアでは、ほとんどのケアマネさんが40人以上、もっているのが現実だとか。

野口さとこ

利用者さんは認知症やお年寄りの方が多いので、話が通じないこともある。家族とのやりとりも多いので、関わる人数は、その二倍も三倍もいるわけですよね。つまり、40人とは40世帯のことなのです。編集者時代、一日中、携帯電話が鳴り止まないとか、会議と打ち合わせばかりだとかの経験もあるので、ケアマネジャーというプロジェクトリーダーの大変さを想像すると、身につまされるものがありました。みなさん、ギリギリまでがんばってくださっているということが初めの電話だけでも伝わってきましたし、介護保険を1年利用した今では、さらにそのお仕事のハードさを痛感するところです。

右も左もわからない介護の世界。初心者であるわたしの質問にもていねいに答えてくださる男性ケアマネジャーに感銘し、30分ほど電話で話しただけですが、お願いすることを決めました。多くの人が頭を悩ませるケアマネジャーの選定ですが、こうして、午前中の2時間だけで決定することができたのです。もちろん、「そんなんで、決めていいの?」という方もいるでしょうが、そこは自分の直観を信じることにしました。

ただ、わたしのスピードに高齢の両親がついてこられるわけもなく、この後、問題が起こっていくことになります……。

→【記事の続き】(4)父の認知症でもっとも悩まされた母への攻撃と嫉妬妄想 はこちらから

文/Saya

東京生まれ。1994年、早稲田大学卒業後、編集プロダクションや出版社勤務を経て、30代初めに独立。2008年、20代で出会った占星術を活かし、『エル・デジタル』で星占いの連載をスタート。現在は、京都を拠点に執筆と畑、お茶ときものの日々。セラピューティックエナジーキネシオロジー、蘭のフラワーエッセンスのプラクティショナーとしても活動中。著書に『わたしの風に乗る目覚めのレッスン〜風の時代のレジリエンス』(説話社)他。
ホームページ sayanote.com
Instagram     @sayastrology

写真/野口さとこ

北海道小樽市生まれ。大学在学中にフジフォトサロン新人賞部門賞を受賞し、個展・グループ展をはじめ、出版、広告撮影などに携わる。ライフワークのひとつである“日本文化・土着における色彩” をテーマとした「地蔵が見た夢」の発表と出版を機に、アートフォトして注目され、ART KYOTOやTOKYO PHOTOなどアートフェアでも公開される。活動拠点である京都を中心にキラク写真教室を主宰。京都芸術大学非常勤講師。
ホームページ satokonoguchi.com
Instagram  @satoko.nog

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