【カフェインレスコーヒーでもカフェイン入りのコーヒーと同じ効果がある可能性!?】研究結果が示唆

コーヒーは覚醒感や集中力の向上などをもたらすことで広く知られている。これらは一般にカフェインによるものとされるが、香りや味、コーヒーへの期待感など、他の要素も関係している可能性があると指摘する研究者もいる。特に、コーヒーを習慣的に飲む人は条件反射を形成しやすく、カフェインの有無にかかわらず、コーヒーを飲むという行為自体が生理的な変化を引き起こすことがある。そこで研究者たちは、カフェインの効果と、コーヒーを飲むという行為に伴う心理的・生理的な影響を切り分けることを目的とした対照実験を行った。

カフェインの有無への反応の違い

実験には、日常的にコーヒーを飲んでいる健康な大学生20名（男性10名、女性10名）が参加した。普段は1日に1～3杯のコーヒーを飲んでおり、実験の少なくとも8時間前からカフェインを摂取していなかった。参加者は無作為に、カフェイン入りコーヒーを飲むグループとカフェインレスコーヒーを飲むグループに分けられた。どちらの飲み物もカフェインレスの豆を使用し、カフェイン入りグループのコーヒーには後からカフェイン粉末が加えられた。これにより、見た目や味が同じになるよう調整され、全員が通常のコーヒーだと信じられるよう工夫されていた。参加者はコーヒーの摂取前後に、心拍数と血圧の測定、暗算テストと聴覚的注意課題、脳波（EEG）による脳活動の記録などの評価を受けた。

結果、摂取後の生理的変化は、両グループでほぼ同様であった。いずれの飲料を摂取した後も心拍数は低下し、血圧は上昇したが、カフェイン入りグループとカフェインレスグループの間に有意な差は見られなかった。「ここに差が出ると考えられていました。こうした反応は、儀式的な要素では説明しにくいからです。」と、研究の著者で、スロベニアにあるノヴォ・メスト大学情報学部の研究助手マテヤ・レサール氏は述べた。認知機能もカフェインの有無による影響はほとんど見られず、暗算課題では、どちらのコーヒーを飲んだ後も正解率と回答数に有意な変化はなかった。

一方で、聴覚の注意力を測るテストでは、両グループともわずかながら反応速度の向上が見られた。ただし、その変化が統計的に有意だったのはカフェイン入りグループのみだった。これはカフェインが処理速度を高める可能性を示しているが、カフェインレスグループでもわずかに反応が速くなっていたことから、参加者の「カフェインを摂取した」という期待感によって起こるプラセボ効果の可能性もある。脳波のデータによると、コーヒー摂取後の注意力の計測テストにおいて、認知に関係する特定の脳波の増加が見られた。ただし、その増え方が統計的に有意だったのはカフェイン入りグループのみとなった。

これらの結果を総合すると、少し入り組んだ仕組みが見えてくる。カフェインは脳の活動や反応時間に測定可能な影響を与えた一方で、従来カフェインによるものとされてきた多くの生理的・心理的な反応は、プラセボ（カフェインレスコーヒー）グループにも見られた。これは、日常的にコーヒーを飲んでいる人が、カフェインという成分だけでなくコーヒーを飲むという習慣やその状況にも反応している可能性を示している。「この結果は、普段からコーヒーを飲んでいる人は、カフェインの有無に関係なく条件反射のような反応を示す可能性があることを示しています。」「つまり、カフェインの効果を経験し、コーヒーを飲むことでそれを感じられると期待するようになると、カフェインが入っていないコーヒーでもほぼ同じ効果が現れるということです。」とレサール氏は説明する。「コーヒーを正確に再現した刺激は、本物のコーヒーと非常によく似た認知的・生理的反応を引き起こすことができる。」と著者らは結論づけている。

今後の研究

今回の研究は参加者が20名と少なく、微細な効果を検出する統計的な力に限界があった。研究者たちは今後、より多様な人々を対象にし、コーヒーを普段から飲む人と飲まない人を比較したり、別のタイプのプラセボを使うなどして、今回の知見をより詳しく検証する予定だ。また、さらに高度な技術を用いて、心理的な期待がコーヒーに対する脳の反応にどのように影響するのかについても、明らかにしていきたいと考えている。

出典

https://www.psypost.org/new-research-shows-decaf-coffee-can-mimic-caffeines-effects-in-habitual-drinkers/

https://www.sciencealert.com/your-coffee-may-not-even-need-caffeine-to-wake-you-up