ナイアシンって何?体内で様々な栄養素の代謝を支えているナイアシンの働きとは|管理栄養士が解説
糖質、脂質、たんぱく質からのエネルギー産生に必要なビタミンであるナイアシン。体内で欠乏することで、皮膚炎や消化器系の症状などを引き起こすと言われています。この記事では、そんなエネルギー代謝に重要なナイアシンの体内での働きや、欠乏した際のリスク、多く含まれている食材などについて解説していきます。
ナイアシンってどんな栄養素?
ナイアシンは、水溶性ビタミンであるビタミンB群の一種で、「ニコチン酸」と「ニコチンアミド」という2種類の化合物の総称です。
体内では「ピリジンヌクレオチド(NAD、NADPなど)」に変換され、酵素の働きを助ける補酵素として機能します。そのため、糖質・脂質・タンパク質といった主要な栄養素からエネルギーを生み出す代謝に欠かせません。
さらに、ナイアシンは数多くの酵素反応を支えているため、皮膚や粘膜の健康維持にも関与しています。また、食事から摂取できるだけでなく、必須アミノ酸のひとつ「トリプトファン」から体内で合成されることも知られています。
ナイアシンの不足や過剰摂取による影響
ナイアシンが不足すると「ペラグラ」と呼ばれる欠乏症を起こすことがあります。ペラグラでは、以下のような症状が現れる可能性があります。
- 発疹などの皮膚症状
- 下痢などの消化器症状
- 精神・神経症状(いらいら、不眠、記憶障害など)
特に、アルコール依存症の方はアルコール代謝の影響でナイアシンが不足しやすく、リスクが高いとされています。また、妊娠期・授乳期の女性は胎児や乳児の発育に伴い代謝が活発になるため、通常より多めのナイアシンが必要です。
一方で、ナイアシンは水溶性ビタミンであるため、通常の食事では過剰症はほとんど起こりません。ただし、サプリメントで大量に摂取すると血管拡張による皮膚の紅潮(ナイアシンフラッシュ)や肝機能障害などが生じる場合があります。
ナイアシンの摂取目標量
ナイアシンの必要量は「ナイアシン当量(mgNE/日)」で示されます。これは食品中のナイアシンに加え、体内でトリプトファンから合成される分も考慮した数値です。
推定平均必要量・推奨量・耐容上限量(mgNE/日)
| 年齢 | 男性 推定平均必要量 | 男性 推奨量 | 男性 耐容上限量 | 女性 推定平均必要量 | 女性 推奨量 | 女性 耐容上限量 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 18〜29歳 | 13 | 15 | 300 | 9 | 11 | 250 |
| 30〜49歳 | 13 | 16 | 350 | 10 | 12 | 250 |
| 50〜64歳 | 13 | 15 | 350 | 9 | 11 | 250 |
| 65〜74歳 | 11 | 14 | 300 | 9 | 11 | 250 |
| 75歳以上 | 11 | 13 | 300 | 8 | 10 | 250 |
2019年の国民健康・栄養調査では、日本人の平均摂取量は約30.7mgNE/日と報告されており、男女ともに推奨量を十分に上回っています。そのため、通常の食生活で不足することはまれです。
ナイアシンを多く含む食品
ナイアシンは、肉類・魚介類・穀類・きのこ類に多く含まれています。
主な食品とナイアシン量(100gあたり)
- たらこ(生):54.0mgNE
- かつお(春獲り・生):24.0mgNE
- かつお(秋獲り・生):23.0mgNE
- 豚レバー(生):19.0mgNE
- 鶏むね肉(皮なし・生):17.0mgNE
- えのき(生):7.4mgNE
- エリンギ(生):6.7mgNE
- 玄米(炊飯後):3.6mgNE
これらの食品を日常的に取り入れることで、効率的にナイアシンを摂取できます。
まとめ
ナイアシンはエネルギー代謝に不可欠なビタミンB群の一つで、皮膚や粘膜の健康維持にも関わります。通常の食事で不足することはほとんどありませんが、アルコール依存症や偏食、妊娠・授乳期などでは不足する可能性があります。一方で、サプリメントによる過剰摂取には注意が必要です。
肉や魚、穀類、きのこ類など、ナイアシンを豊富に含む食品をバランスよく取り入れることが大切です。
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