不眠症改善に効果が高いのは低強度の運動「ヨガ・太極拳・ウォーキング・ジョギング」研究結果が示唆

新しい研究によると、ヨガ、太極拳、ウォーキング、ジョギングは不眠症の改善に特に効果的である可能性が示された。

睡眠とヨガ、太極拳、ウォーキング、ジョギング

研究者は、不眠症に対する運動の効果を調べた22件の臨床試験（総参加者数1,300人以上）を分析した。これらには、7種類の運動（ ヨガ、太極拳、ウォーキングまたはジョギング、有酸素運動と筋力トレーニングの組み合わせ、筋力トレーニングのみ、有酸素運動とセラピーの組み合わせ、多様な有酸素運動の組み合わせ）と睡眠の改善に関する調査が含まれていた。分析結果によると、ヨガは総睡眠時間に大きな影響を与え、不眠症の人の睡眠時間を約2時間延長した。また、入眠後の覚醒時間を約1時間短縮し、入眠までの時間を約30分短縮した。

穏やかな動き、瞑想、呼吸法が組み込まれた太極拳は、睡眠の質のスコアに顕著な改善が見られた。総睡眠時間を50分以上延長し、入眠後の覚醒時間を30分以上短縮し、入眠までの時間を約25分短縮した。今回の分析において、太極拳は他の運動と比べて特に目立った効果を示した。実践が3ヶ月未満の人でも、すべての睡眠指標で有意な改善が見られ、その効果は1～2年の長期追跡調査でも安定して維持されていた。ウォーキングとジョギングは不眠症の症状を軽減する可能性、太極拳は睡眠の質を向上させる可能性が示された。

この分析では、すべての運動の種類のうち、「筋力トレーニングのみ」を行うことは睡眠に効果がないように見えたが、著者たちはこの結果がこれまでの研究結果と矛盾していると述べている。今回の分析対象となった研究は、その多くにおいて運動強度や持続時間などの重要な詳細が記載されていなかった。そのため、著者らは、今回の結果を裏付けるためには、より質の高い大規模な研究の必要性を訴えつつ、今回の結果について、「不眠症を有する人の睡眠の改善に運動療法が有効であることを示す包括的な証拠を提供している。」と述べている。

どうしてこれらの運動が睡眠に寄与するのか

「適度な有酸素運動は、徐波睡眠の時間を増加させることがわかっています。」「この睡眠は、脳と体を回復させる時間となります。」と、セントルイス大学医学部の睡眠医学専門医シャリーニ・パルトゥ医学博士は説明する。呼吸、マインドフルネス、リラクゼーションに重点を置くヨガや太極拳は、良質な睡眠を妨げることが多い不安や抑うつ症状の緩和に特に有効である可能性があると、研究者らは述べる。また、ウォーキングやジョギングは、過剰なエネルギーを消費し、コルチゾールなどのストレスホルモンを減らし、気分を全般的に改善し、睡眠ホルモンであるメラトニンの産生を促進することで、より良い休息につながる可能性があると述べている。

認知行動療法と睡眠

今回の研究では、不眠症の現在利用できる最も効果的な治療法は認知行動療法であり、睡眠にまつわる否定的な思考や行動を変えるのに役立つことが認められた。慢性不眠症には薬物療法も有効であるとも述べているが、これは副作用を伴う可能性もある。パルトゥ医学博士は、認知行動療法に運動を組み合わせることで効果が高まる可能性があると言う。カリフォルニア州のライフスタイル・スリープ・クリニックの最高医療責任者ミシェル・ジョネリス医師は、夜に眠れないことに対して深刻な不安を抱える人は、訓練を受けた医療従事者を通じてこの治療を受けるよう推奨し、「深刻な不安がないが睡眠障害を経験している人にとっては、運動を行うだけでも良いスタートとなります。」と述べている。

不眠症に効果的な運動のチョイス

睡眠の課題の種類によって、より効果的な運動の形が異なる可能性があると、研究の筆頭著者で北京中医薬大学の研究者ブ・ジジュン氏は言う。「総睡眠時間が不足している人や入眠に困難を感じる人にとっては、ヨガや太極拳が適しているかもしれません。」と述べ、日中に疲労感や集中力の低下、気分が沈む傾向がある人には、ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動を推奨している。また、「自分に寛容になりましょう。どんな運動でも睡眠には有益です。」と、エモリー大学の睡眠学者アン・E・ロジャース博士は助言している。

出典

https://www.everydayhealth.com/sleep/these-low-key-exercises-could-help-you-sleep-better/

https://www.independent.co.uk/news/health/china-people-walking-cbt-evidence-b2789722.html

https://abcnews.go.com/Health/gentle-exercise-yoga-tai-chi-walking-people-sleep/story?id=123679569