不眠症の治療薬は本当に必要?不眠の原因と不眠を解消するための生活法|薬剤師が解説

 不眠症の治療薬は本当に必要?不眠の原因と不眠を解消するための生活法|薬剤師が解説
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人生の3分の1の時間を費やしている睡眠。快適な睡眠を得ることは、健康を維持するためにとても重要です。しかし、日本では多くの人が、不眠に悩んでいると言われています。そこで、この記事では、快適な睡眠を得る生活法について解説します。

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理想的な睡眠とは?

徹夜をして明け方、眠りに就くと、いくら睡眠時間をとっても、頭がボーっとするなどの症状が出た経験はありませんか? 実は、人の生体リズムは約25時間といわれています。ところが、日常生活は24時間で区切られていますから、その差が積み重なるとひずみとなり、疲れやストレスの原因になると考えられています。

また、近年は都市化に伴い、24時間、音や光の刺激を受ける生活環境が広まっていますので、一層、生体リズムにひずみが生じやすくなります。この積み重なった生体リズムのひずみを解消するためには、夜ふかししないことと、質の良い睡眠をとって、細胞の代謝を回復することが大変重要です。

睡眠時間は個人差がありますが、理想は、毎日、午後10時~10時半、遅くとも12時までには眠りに就き、午前3時までの「睡眠のゴールデンタイム」はぐっすり眠ること。同じ5時間睡眠でも、午後10時~午前3時まで眠るのと、午前3時~8時まで眠るのとでは、疲労回復などに大きな差が出てきます。

この時間帯に深い眠りが得られると、成長ホルモンの分泌を促進し、その名の通り、子どもの体の成長を促進させたり、大人の老化防止に効果があります。また、美容面からいうと、皮膚をつくり出す基底層の細胞分裂は午後10時~午前2時頃がもっとも活発なことが実証されています。

今まで深夜に寝ていた人がいきなり10時に布団に入っても眠れないでしょうから、1カ月単位で30分ずつでも早く寝るように心がけましょう。

不眠症
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不眠症と診断されるのはどんな場合?

ある精神科医の統計によると、不眠を訴える人の数は男女とも40代が最多で、男性では30~60歳、女性では30~70歳が全体の8割を占めています。また、不眠症は次の2つのタイプに分けられます。

①症候群性不眠

心臓疾患や心身症、ノイローゼなどの病気が原因で起こる。根本的な病気の治療が必要。

②機械性不眠

精神的緊張や興奮、慣れない環境や条件、騒音、暑さ寒さ、空腹感、コーヒーやお茶の飲みすぎなどが原因で起こる。生活を振り返って原因を明らかにし、原因を取り除くことが大切。

しかし、不眠を訴えて心療内科を訪ねる患者さんの8割以上が不眠症ではなく、自分で勝手に不眠症と信じ込んでいる、いわば「不眠恐怖症」といわれています。何らかの原因で眠れない日が続くと、「今夜もまた眠れないのでは……」という不安から、ますます不眠に陥るという悪循環を繰り返しているという状態です。

神経質な人などは、このストレスが長く続くと「①症候性不眠症」へ移行してしまうケースがあるので注意が必要です。

こういう人は逆に、「今日は眠らないぞ!」と腹を決めてしまいましょう。通常、人間が眠らないでいられるのは、せいぜい4~5日、不眠不休で働けるのは2日どまり、しかも不眠で死亡したケースは1例もありません。徹夜を覚悟で好きな本を読んだり、動画配信などを存分に観たりしてみましょう。翌日の仕事にはちょっぴり響くかもしれませんが、次の夜はぐっすり眠れるはずです。

不眠に効果のある治療薬

不眠の治療には生活習慣や環境の改善、原因となる病気の治療などを行いながら、症状に応じて薬を処方します。単に、寝つきが悪い患者さんに処方されるが「睡眠導入剤」で、自律神経のバランスを整え、筋肉を弛緩させることで安定性の高い睡眠効果が得られます。

睡眠導入剤は、現在、安全性の高い「ベンゾジアゼピン系」という薬が主流となっています。副作用が非常に少なく、ほぼ自然に近い睡眠が得られます。抗不安効果もあり、持続時間によって、超短時間作用型、短時間・中間作用型、長時間作用型などの種類に分けられます。

また、市販薬では、風邪薬や鼻炎薬に含まれるジフェンヒドラミン塩酸塩という眠くなる成分を「睡眠改善薬」に転用したものや、抑肝散(よっかんさん)や三黄瀉心湯(さんおうしゃしんとう)という漢方薬などが販売されています。一時的な不眠で心療内科を受診するほどではない場合は、市販薬の活用も有効です。

眠りを誘う食べ物は?

睡眠のためにはバランスのとれた食生活が基本です。良質のたんぱく質を中心に、植物性脂肪と糖質を適度に摂り、ビタミン類とミネラルも必ず加えましょう。

とくにビタミンB群を多く含む、牛乳や肉類、卵黄、魚介類、レバーなどを摂ると起きているときの代謝レベルを高め、それが睡眠中の代謝レベルを高めることにつながり、熟睡が期待できます。

また、カルシウムが不足すると、神経伝達に支障をきたし、イライラや不眠の原因になります。カルシウムは牛乳や小魚類、海藻類、アーモンドなどに多く含まれます。

安眠のためには、胃腸に負担をかけない夕食の摂り方もとても重要です。寝る直前に食べると、睡眠中も胃腸は消化活動にあたらなければならないため、安眠できませんから、夕食は寝床に入る3時間前までに終えるように。

消化に時間がかかる脂っぽい料理をたくさん食べると、胃がもたれるので注意してください。また、夜遅くまで起きていて、どうしてもおなかがすいたときは、消化がよくてカロリーの低い夜食を、就寝2時間前までに摂るようにします。

寝酒は睡眠の質を悪くするので、あまりおすすめできませんが、催眠効果はあるので、寝酒として飲むときは、就寝の30分~1時間前までに、ゆったりとした気分でほろ酔い程度に飲むとよいでしょう。

熟睡するための環境づくり

まず、寝室の環境を整えてください。寝室は家の中でできるだけ外の物音が聞こえない静かな部屋を選びます。騒音や光は雨戸や厚手のカーテンでシャットアウトを。寝室に家具やカレンダーなどをごちゃごちゃ置くと、寝床に入っても昼間の出来事などを思い出して、眠れなくなるので、できるだけゆったりとしたスペースにします。

寝る前の30分~1時間は快眠のための準備期間と考え、室内の明るさをダウンさせるのも効果的。好きな音楽を耳元で静かに流したり、本を読むのもリラックスできます。真っ暗だとかえって落ち着かないと天井の豆電球をつける人もいますが、明りによって睡眠は浅く、不安定になりがちです。

また、寝る前に37~39度くらいのお風呂に30分くらい入ると、心身ともにリラックスできて、自然な眠りに就くことができます。シャワーには交感神経を鎮静化させる効果があります。少し高めの水圧で、長めに浴びるとよいでしょう。

毎日、決まった時間に寝て、どんなに遅く寝ても朝は必ず決まった時間に起きる、休日はゴロ寝で過ごさないなど、体内時計のリズムを乱さないよう心がけましょう。

まとめ

快適な睡眠とは、寝床についてすぐに眠ってぐっすり熟睡し、目覚めたときにすっきりした満足感が得られる状態をいいます。不眠を訴える人は多くいますが、その8割以上が不眠症ではなく、自分で勝手に不眠症と信じ込んでいる、いわば「不眠恐怖症」といわれています。

睡眠導入剤などでの治療が必要な場合もありますが、多くは食事や運動、睡眠環境の改善などによって、良質な睡眠を得ることができます。

また、午後10時から午前3時までの睡眠のゴールデンタイムには、必ず就寝しているようにして、毎朝、決まった時間に起きる。こうして体内時計のリズムを整えることが不眠の改善につながります。

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AUTHOR

小笠原まさひろ 薬剤師

小笠原まさひろ

東京薬科大学大学院 博士課程修了(薬剤師・薬学博士) 理化学研究所、城西大学薬学部、大手製薬会社、朝日カルチャーセンターなどで勤務した後、医療分野専門の「医療ライター」として活動。ライター歴9年。病気や疾患の解説、予防・治療法、健康の維持増進、医薬品(医療用・OTC、栄養、漢方(中医学)、薬機法関連、先端医療など幅広く記事を執筆。専門的な内容でも一般の人に分かりやすく、役に立つ医療情報を生活者目線で提供することをモットーにしており、“いつもあなたの健康のそばにいる” そんな薬剤師でありたいと考えている。



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