【父親の精神的不調は子どもの発達に悪影響を及ぼす可能性】研究結果が示唆

父親の精神的不調と子供の発達

オーストラリアのディーキン大学が実施した新しい研究では、父親の周産期うつ病、不安、およびストレスと、子どもの発達との相関性を調査した84件の研究結果を分析した。それぞれの研究はオーストラリア、ヨーロッパ、アジア、北米と様々な地域で実施されており、数千組の父親と子供が分析対象となった。父親の精神的不調は、うつ病、不安、その両方、またはストレスの症状が見られる状態 /もしくは診断を受けている状態と定義された。父親が医療上の疾患を有していた、服薬していた、また、アルコールや他の薬物を摂取していたケースは除外された。

分析の結果、妊娠期および子供の出生後の父親の精神的不調が、子どもの社会的、感情的、認知的、言語的、身体的な発達の遅れと関連していることが明らかになった。父親の精神的不調は、子どもの他者との関わり、感情の理解、世界観の形成、コミュニケーション能力、および身体的健康状態（体重、睡眠パターン、食事習慣など）と関連している可能性があることが分かり、特に妊娠から出生後2年間において顕著だった。

研究の筆頭著者であるディーキン大学心理学部准教授デリス・ハッチンソン博士は、父親の精神的不調は、子供との関わりにおける感受性や反応性を低下させ、愛着関係の安定性を損なう可能性があるとした。「父親になる過程において、男性は精神的不調のリスクが高まる。周産期における男性の臨床的うつ病の有病率は8％、不安障害は11％、ストレス増加は6％〜9％に達する」と、研究の著者たちは報告している。

父親の精神的健康のためのサポートの必要性

父親と子供の精神的な健康は、貧困や差別等の心理社会的要因や経済的圧力によって影響を受けている可能性もあり、この研究はそういった広い背景情報が欠如しているため、父親の精神的不調と子供の発達の関連性を示すことはできても、因果関係を示すものではないと、アメリカのネブラスカ大学医学センター小児科教授アルワ・ナシール博士は指摘する。

しかし、研究の主導者でディーキン大学の臨床心理士ジェニヴィエ・ル・バス博士は「父親になったばかりの男性も、母親同様、出産前後に心理的なストレスが高まるリスクがあることがわかっています。」と述べ、「赤ちゃんを迎えることは親にとって大きな人生の転機であり、約10人に1人の父親がうつ病、不安、またはストレスの臨床的なレベルを患います。しかし、これまでの研究は、主に母親の精神の健康と子どもの発達に焦点を当てており、父親の精神状態が子供の発達に与える影響については十分な注目が払われてきませんでした。」と話し、この結果は、特に子どもの生後2年間において、父親の精神の健康状態をサポートすることの重要性を示していると述べている。

父親の健康状態の向上のために

専門家らは、周産期における医療訪問時に、両親の健康状態を検査しケアすることの重要性を訴える。臨床医、研究者、政策立案者は、既存の母親サポートシステムを活用することで、父親に特化したプログラムや政策を設計し、父親と家族の精神的な健康の改善を目指すことができるだろうと助言する。

ハッチンソン博士もまた、妊娠期間と産後のクリニック訪問時に、医師や医療従事者が父親となる男性とも対話することで、男性の精神と身体の健康状態のチェックも行うことができ、こういった定期的な診察において、男性には、父親に特化した科学的根拠に基づく健康情報の提供や専門機関への紹介を行うことも可能となると言う。「新しく父親になる人の精神の健康を優先的に考慮することで、より健康な家族関係が育まれ、子どもの発達の向上にもつながる可能性があります。」と述べている。さらに、「父親になる人は、親になるのは困難な時期であり、多くの父親がこの期間に浮き沈みを経験するということを認識するのが重要です。」と話し、なるべく早く支援を求めることが違いを生むと言い、それは弱さではなく強さだと強調する。子どもの発達においては、特定の時期だけではなく、全ての年齢と段階が重要となるため、「子どもが成長しても、自身の健康を優先するのは、決して遅すぎることはありません。」と述べている。

出典

https://seed.deakin.edu.au/2025/06/when-new-dads-struggle-their-kids-health-can-suffer/

https://edition.cnn.com/2025/06/16/health/father-mental-health-child-development-wellness