「最近怒りっぽい」は性格じゃない?ホルモンバランスと副腎疲労の関係とは|医師が解説
そのイライラ、不安、極度の疲労感は、ホルモンの乱れや体の不調が原因かもしれません。医師が解説します。
「最近怒りっぽい」は性格じゃない?ホルモンバランスと副腎疲労の関係
「最近ちょっとしたことでイライラして、怒りっぽい」というときに、「年齢のせい」、「性格の問題」と片づけていませんか。
実はその「怒りっぽさ」には、ホルモンバランスの乱れや副腎疲労といった体の不調が関係している可能性があります。
副腎は腎臓の上にのっている小さな臓器で、「ストレスホルモン」として知られるコルチゾールや、血圧を調整するアルドステロンなどを分泌しています。
特に、コルチゾールは、ストレスに対抗するために必要不可欠なホルモンであり、日々のストレスにさらされると分泌量が増加します。
副腎が慢性的なストレスによって酷使され、ホルモンの分泌が追いつかなくなる状態を「副腎疲労」と呼びます。
- 朝なかなか起きられない
- 夕方になると極端に疲れる
- 感情の起伏が激しく怒りっぽくなる
- 集中力が低下する
などの症状が出現することがあります。
これらの症状はすべて、ホルモンバランスの乱れが影響している可能性があります。
女性は、更年期や月経前症候群など、ライフステージごとにホルモンバランスが大きく変化します。
卵巣機能が低下すると、副腎がその代役を担おうとするため、すでにストレスで疲弊している副腎にはさらなる負荷がかかることになり、その結果として、怒りっぽさやイライラ、不安感が強くなります。
怒りっぽさや感情の不安定さが気になる場合には、以下を行うことが大事です。
☑︎十分な睡眠を得る(22時〜2時の間に深い睡眠を確保する)
☑︎高たんぱく・低糖質の食事を心がける
☑︎ゆるやかな運動(ヨガ・ウォーキングなど)を継続する
☑︎深呼吸や瞑想などでストレスケア
更年期+副腎ホルモン(コルチゾールなど)の影響
更年期(平均閉経年齢:日本では約50歳前後)になると、卵巣の機能が徐々に低下し、エストロゲンやプロゲステロンといった女性ホルモンの分泌が大きく減少します。
このホルモン変動は、以下の症状を引き起こします。
- ホットフラッシュ(のぼせ・発汗)
- 不眠
- 抑うつや不安
- イライラ・怒りっぽさ
- 倦怠感・疲れやすさなど
副腎は、腎臓の上にある小さな臓器ですが、ホルモン分泌の要とも言える存在です。
副腎から、コルチゾール(ストレス応答・血糖値維持などの役割)、アルドステロン(血圧・ナトリウム/カリウムのバランス調整の役割)、DHEA(カナ表記:デヒドロエピアンドロステロン)(エストロゲンやテストステロンの前駆体)などのホルモンが分泌されます。
更年期に卵巣からの女性ホルモンの分泌が減ってくると、副腎がその不足分を部分的に補う役割を担い始めます。
特にDHEAという副腎ホルモンは、体内でエストロゲンやテストステロンに変換される重要な前駆体です。
しかし、ストレスが多い人ほど副腎はすでに疲れているといわれています。
副腎は、すでに日々の慢性ストレス(仕事・家庭・介護・人間関係)への対応のために、日々コルチゾールを放出しています。
この状態が長引くと、副腎が疲れ果ててしまい、DHEAなどの性ホルモンの生産まで手が回らなくなるのです。
つまり、更年期にありがちな「感情の不安定さ」、「怒りっぽさ」などは、卵巣だけでなく、副腎の疲労によるホルモンバランスの乱れが深く関係していると考えられます。
副腎と自律神経をいたわるために、質の良い睡眠をとって、血糖値を安定させる食事(たんぱく質、ビタミンB群)を摂取する、あるいはストレスケア(瞑想、深呼吸、趣味の時間を設けるなど)を実践することが重要です。
まとめ
「怒りっぽさ」は、単なる性格や気分の問題ではなく、体の内側のホルモン分泌と副腎の状態を映す鏡かもしれません。
最近の自分に違和感を覚えたら、「我慢する」だけでなく、体の声に耳を傾けることが大切です。
必要に応じて、医師や専門医療機関(特に、婦人科や内分泌科)に相談することもおすすめです。
更年期は「女性ホルモンが減るだけの時期」ではありません。
怒りっぽさやイライラ、不安、極度の疲労感は、あなたが弱いからではなく、ホルモンの乱れが原因かもしれません。
「心」だけでなく「副腎とホルモン」にも目を向けることが、更年期を穏やかに乗り切るカギとなります。
今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。
- SHARE:
- X(旧twitter)
- LINE
- noteで書く





