サステナブルライフプロデューサーhaluに聞く「"持続可能"な暮らし」を無理なく続けるコツは?

サステナブルライフプロデューサーhaluに聞く「"持続可能"な暮らし」を無理なく続けるコツは?
写真提供: halu

サステナブルな暮らしを実践する上で、大切なことはなんだと思いますか?「ヴィーガンになる」「サステナブルな商品だけを選ぶ」「同じ思想の仲間と行動を共にする」など、様々な考えがあるかもしれません。今回は、サステナブルライフプロデューサーとして活躍するhaluさんに、誰にとっても“持続可能”な暮らしのコツについてお話を伺いました。

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知識を実生活に落とし込むことが大切

– haluさんが、サステナブルな暮らしに興味を持ったはじまりにはどのような経緯がありましたか。

haluさん:サステナブルな暮らしに興味を持ったというより、もともとは自分が好んで選んでいた「ロースイーツ」を通して知った価値観をライフスタイルに落とし込んでいったことが始まりです。結果的に環境に優しいものだということに気づきました。それが、サステナブルの入り口だったと思います。

現在は、『mari』というロースイーツのブランドをプロデュースしていますが、そもそも、ロースイーツに興味を持つきっかけとなったのが、高校生の頃にハマったカロリーを取らない過度なダイエットでした。思春期の女の子が抱きがちな「細い=美しい」という考え方に固執してしまったのです。その結果、体重は今よりも10キロも少なく、低体温症、生理不順になってしまいました。周りの友達からは「痩せていいな」「羨ましい」と言われるけれど、私自身は全く心が満たされておらず、本当に辛かったです。その経験から「食×美しさ」を体現できるようになりたいと思うようになったのです。

そんな中で自分がそれらを発信するためのツールとして出会ったのが、ロースイーツという分野だったんです。ロースイーツというのは、簡単に言えば、48度以下で調理し、食べ物の皮ごと食べるという「ホールフード」の考えに従っています。そのため、自然と無農薬やオーガニックの食材を口にするのはとても自然な流れでした。それから徐々に、化粧品や日用品など自然とオーガニックの商品が身の回りに増えはじめていきました。

また、私は(神奈川県三浦郡)葉山町の出身で、自然に近い環境で生まれ育ったのですが、周りにエコだったりロハスな生き方をしている人が比較的多く住んでいる環境にいたというのも、なんとなく影響していたかもしれません。

写真提供: halu
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– 気づいた時には、「すでにサステナブルなことをしていた」ということですね。ご自身が実は自然に優しいことをしているということに気づいたきっかけはなんだったのでしょうか?

haluさん:友人に勧められて参加した社会人向けセミナーに参加したことで、“サステナブル”という言葉を知りました。実は、そのセミナーは、都市計画デザインを教えている私の母校の教授が講師を担当していたんです。話の中で、デンマークのロラン島という自給率800%以上の島があることを知りました。ロラン島は世界的にもサステナブルな島として注目を集めているのですが、その話を聞いた時に、普段自分のとっている行動が健康や美のためだけでなく、実は自然にも優しいんだということにリンクしていったと思います。

– ご自身が実践していたことがサステナブルなことだということに気づいた時、何か大きな変化はありましたか?

haluさん:正直な話、最初の頃は比較的消費していたという感覚があります。知識としては持っていたけれど、実践できていたかというと、そうでもなかったと思います。

– 実践できるようになったのは、どうしてでしょうか?

haluさん:2021年に葉山で畑を借りて、『mari farm』をやり始めてから、本当の意味で意識が変わったと思います。畑をやると無駄なものがないんです。私たちの畑は、無農薬、自然栽培でやってるので、そこにあるものを生かして野菜やハーブを育てています。ですからそこには何もないですし、その他にも色々な設備が揃っているわけでもありません。ゴミ箱さえないんです。そのため、お弁当を作って持っていったり、マイボトルを2本持って行くなどして、なるべくゴミを出さないように意識しています。何もないからこそ、自分なりに考える力がついていったような気がします。

写真提供: halu
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– サステナブルな実践は、ある意味、環境を整えることが大切ということでしょうか。

haluさん:そうですね。本当の意味でのサステナブルを実践するには、実体験でやっていくしかないのかなと思います。コロナ禍の時に、サステナブルやエシカルにフォーカスした発信をしているメディアや人が増えたと思います。一方で、とても多く発信をしてはいるけれど、実生活はそうでもないという方も結構いて…。もちろん、発信して情報として得ることも大事だと思います。一方で、本当の意味で実生活に落とし込めてないと意味がない、と畑をはじめてすごく感じました。畑をやる中で、そういった無駄にしないことの大切さを身をもって実感したんです。食材を育てることがいかに大変か、また食材一つ一つがいかに愛おしい存在かというのを日々実感しています。もちろん買いすぎないことが一番大前提ですけど、他にも、野菜を買ったとしてもなるべく腐らないように、先に下処理して冷凍しておくなど、一つ一つの食材を本当に丁寧に扱えるようになったと思います。

サステナブルな暮らしを続けるコツとは?

– サステナブルな暮らしに興味がある方は、まず最初にどんなことをやるのがおすすめですか?

haluさん:ハーブやミニトマトなど、家庭菜園をはじめるのがいいのではないでしょうか。先程もお話した通り、私が本当の意味でサステナブルへの意識が変わったのは、畑をはじめたことでしたから。畑を借りることはハードルが高いかもしれませんが、都内であっても、家庭菜園であればお庭やバルコニーでできると思います。種から芽が出て、それに水あげて増やして、実ができて、切って食べて、余った種をまた植えて…という流れを間近で目撃できるので、循環を理解するという点において一番良いのではないでしょうか。サステナブルな商品を選ぶことも大切ですが、それ以上にその根底にある考え方や感性を育むことこそが、本質的に大切だと思います。

写真提供: halu
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– haluさんが感じるサステナブルな暮らしのメリットとは何だと思いますか?

haluさん:メリットという言葉で考えたことがなかったので、難しいですね(笑)。単純に言うと、心地良さを感じられるということでしょうか。「ガイア理論」ではないですが、“自分も地球の一部なんだ”ということが理解できるのかもしれません。抽象的になってしまいますが、地球という人間のような体があった時に、自分がその中だったとしたら、悪い細胞になりたくないですよね。その中で“自分がちゃんと循環できている”という感覚を持つ。その結果として、体も心も軽くなり健康体でいられるのではないか、そんな気がします。

– 自然環境にとってなるべく優しくできているということは、結局自分の心身にとっても良いということかもしれませんね。例えば、無農薬の食材は、体にも優しいですし。そういった優しい暮らしを選択できるといいですよね。

haluさん:そうですね。ただし、無理して頑張るよりも、一つ一つを丁寧に、徐々に増やしていく方が大事なのかなと考えます。例えば、ヨガも同じくで、最初はやる気があって毎日のように通っていたのに、急に通わなくなることがあると思うんです。けれど、それよりも、月1回でもいいから、地道に通い続けていく方が必ず成果につながると思うんです。

– おっしゃる通りですね。haluさんは、サステナブルな暮らしを続けるコツをどう考えられますか?

haluさん:今はサステナブルを売りにした商品もたくさんあります。それももちろん大切なことですが、一方で私は、「サステナブルだからいい」という理由だけではなく、シンプルに「ときめいたから」という気持ちも大切にするようにしています。どんなにサステナブルな商品であっても、自分がときめきを感じられなければ、結局は長く使い続けられないこともあると思うんです。逆に、たとえ直接的にはサステナブルではない商品だったとしても、自分が心から好きで、ときめいて選んだものを何十年も大切に使い続けることができたら、それは結果としてとてもサステナブルな行為なのではないでしょうか。サステナブルかどうかだけでなく、「自分が本当に素敵だと思える感性」と「それを長く愛用し続けられるか」という目線のほうが私にとっては大事だと感じています。そのためにも衝動買いはできるだけ避けて、いつもじっくり数日考えたうえで「やっぱり欲しい!」と思えた時だけ購入するようにしています。

– 自分の感性も大切にしながら、楽しんで続けていくことが大切ということですね。

haluさん:そうですね。私が高校生の時に陥ったダイエットもそうだったのですが、自分があまり楽しめてないのに、それを続けていると、おそらくしんどくなってくると思います。先程もお話した通り、私は、「これがやりたいから」ということをやり、それが楽しいから続けられているのだと思います。

写真提供: halu
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– 逆に、サステナブルな暮らしをする上で、気をつけるポイントは何だと思いますか?

haluさん:あまりストイックにならないことだと思います。他の言い方をすると、「一つのことを信じすぎない」。善悪をつけるようになってしまうと、自分の信じているものと反対の物事に対して嫌な気持ちになってしまうと思うのです。そうなると、生きづらくなってしまうことが出てくるかもしれません。もちろんそういう世界線はあってもいいとは思います。けれど、私の場合は、自分でできることはやるけれど、例えば外食の時は気にしないようにする。そうやって、“いい塩梅”を意識しています。全部がサステナブルだから良くて、そうじゃないから悪いという感覚でいると、ネガティブな感覚がずっとあると思うんです。ただ、自分の軸は持って、選ぶときはちゃんと選ぶことを意識しています。そうすれば、サステナブルな生き方というのはとてもポジティブなものになると思います。

– 「◯◯しすぎない」ということですね。

haluさん:はい。結局、使いすぎたり買いすぎたりすることで環境が悪くなってる気がするのです。分かりやすく例えると、色々な食品に使われるようになったパームオイルのために、ヤシの木のプランテーションを作ろうと森林伐採をするようになりました。最近ではパームオイルは環境に良くないという認識が広まりつつありますが、それ以外のオイルも、需要過多になったら同じことが起きると思います。になると思います。“一神教”は言い過ぎかもしれませんが、一つのものを信じすぎない方がいいのではないかと私は常に意識しています。いろんなものがあって、それをまんべんなく使う、まんべんなく取る、そういったと思想を持ってないと、善悪で物事を決めつけ兼ねなくなってしまうと思うのです。そうなってしまうと体にも悪いですし、人間関係にも影響が出てしまうのではないでしょうか。

日本はポテンシャルしかない国

– そもそも日本は、もともとサステナブルな要素を多く持った国です。歴史や文化、精神性を活かしていけば、よりサステナブルになっていくのかもしれませんよね。

haluさん:そうですよね。おそらく江戸時代頃は、今より圧倒的にサステナブルな生き方をしていたのだと思います。明治時代に西洋の文化がたくさん入ってきて以降、西洋推しになっていますが、海外のいいところを真似てうまく融合していくのも日本の強み。どちらが良くてどちらが悪いというわけではなく、“いいとこ取り”をして、それを日本の新しい文化のような形で消化していく。そうすれば、すごく良い未来があるんじゃないかと思います。実は、今後の目標として、日本の文化や精神性を海外に発信していきたいと考えているんです。

– それは面白い!そういった発信をしていきたいと思った背景は?

haluさん:そもそも私の軸は“食”なので、器や調理器具を通して日本の伝統工芸に触れる機会がこれまでにたくさんありました。そうした中で、日本の職人技が世代を超えて受け継がれ、持続可能な社会への力になっていると感じています。また、日本の精神性にも感銘を受けています。先程の話にもつながるのですが、実は日本は多神教。神社(神道)もありお寺(仏教)もあるけれど、クリスマスもお祝いしますよね。ある側面から見たら適当に見えるかもしれませんが、ある側面から見たら結局それが平和的な生き方になっているのかなと私は感じているんです。そういったことをもっと海外に発信したいなと思っています。

– 先程、haluさんがおっしゃられていた、まんべんなくというところにもつながっていますね。

haluさん:日本って本当にポテンシャルしかない国だなと思っています。海外の方から見ると「日本は綺麗」と言われると思うのですが、それは日本人からしてみたらわりと当たり前。道端にポイ捨てをしないのは日本人にとって普通のことですよね(笑)。おそらく日本人の当たり前の部分が、他の国の方からしてみると、だいぶ善良な人と認識されるのではないでしょうか。そういったことを考えても、日本のポテンシャルがもともと高すぎて、そこに気づけてなくて、ちょっと自分たちを卑下するみたいな部分があるのかなと。サステナブルという言葉も、今はその言い方の方が伝わりやすいためその言葉を使っていますが、実は日本語で伝えたいと思っているんです。日本語自体がすごく美しい言葉ですからね。

【プロフィール】halu /サスティナブルライフプロデューサー

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学生時代から、エシカルな暮らしやオーガニックの食品に関心を持ち、地元葉山でのウェルネスな体験型ツアーの企画や、企業のリブランディングプロジェクトに携わる。また、食にまつわる資格を複数保有し、ヴィーガンスイーツのプロデュースなど、多方面で活躍。

Instagram:@haluchn@mari_wa_jp / @mari_farm_hayama
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