〈50代で歯を失う人が増加中?〉親からの遺伝で「歯が悪い」 というのはホント?歯科医が解説
昔から、なんとなく虫歯になりやすかったり、歯のトラブルが絶えないのは、遺伝なので仕方ないと思っていませんか? 親が総入れ歯だから、子供の自分もそうなるに違いない。この真実について、歯科総合医療を行なっている、くろさき歯科の院長、黒崎俊一先生に教えていただきました。
歯の遺伝の要素は、30%しかありません
80歳まで20本の歯を保ちましょうという、歯の健康スローガン「8020」。じつはこの目標、すでに達成されています。年をとったら、歯を失うのが当たり前ではなく、残っているのが普通の時代。これを踏まえて、黒崎先生に歯の遺伝について伺うと……
「親が総入れ歯だったから、自分もそうなるわけではありません。歯は遺伝の要素が3割、環境の要素が7割を占めているんです。たとえ親御さんが総入れ歯でも、ご自身がちゃんとお手入れをしていれば、そうならないのが現在は普通になっています」(黒崎先生)
自分の歯のコンディションが悪いのは、遺伝というより、毎日のお手入れ方法や食事内容など、残念ながら自分のせい。これからは、もう言い訳できません。
では「私、歯が悪いから」とは、どう言う意味か?
多くの人が口にする「私、歯が悪いから」。このセリフの中には、虫歯がある・なりやすい、実は抜けてる歯がある、など自分の歯のコンディションの悪さを比喩している場合が多いもの。
「一本一本の歯の大きさや歯並びなどの遺伝的要素と、虫歯や歯周病トラブルの起こしやすさとは、別物として考えた方がいいです。細菌がかかわる虫歯や歯周病は、進行すると歯を失ってしまいます。虫歯は1本づつですが、歯周病は加速度的に一度に何本も失ってしまうので」(黒崎先生)
歯が悪い=失う原因の多くは、遺伝ではなく細菌が絡む感染症でした。今以上に歯を悪くしないために、その1つである歯周病について、黒崎先生により詳しく教えていただきます。
問題のない歯が抜けてしまうのが、歯周病
「世界中で患者さんの多い感染症と言われている歯周病は、歯茎の下の骨(歯槽骨)が溶けていく感染症です。実際、患者様の中には、歯自体はなんともないのに、それを支える歯ぐきが下がって、抜けてしまったと言う方が多くいらっしゃいます」(黒崎先生)
虫歯だったら、その歯が抜けてしまえば終わりです。しかし、歯周病は1本だけでは、終わらない。歯槽骨が全体的に溶けてしまったら、土台のぐらついた問題のない歯が、何本も抜けてしまうという危険性を持っています。
では、歯周病で歯を失わないために、どうしたらいいのでしょうか?
対症療法と根本治療、2つを行うことが大事
「まずは、歯周病の進行をチェックして、歯周ポケットに溜まったプラークや歯石を除去するなど、対症療法を行います。同時に、血液検査により、歯周病菌に負けてしまっている体の免疫力を高める栄養アドバイスなどを実施。当院では、歯周病を引き起こす原因そのものを改善していく、根本治療を行っていきます」(黒崎先生)
このような歯周病の根本治療を受けたいなら、歯周病のスペシャリストとなる、歯周病学会の認定医や専門医が在籍するクリニックがベスト。
「歯周病は、かなり進行しても、痛みなどの症状がでません。もし今、ハミガキした際、血が出るようならそれはもう、歯周病重度レベル。これ以上進行させないために、早めに専門の歯科医がいるクリニックへ」(黒崎先生)
加齢していくと免疫力が低下し、何もしなければ口内環境はますます悪化していきます。「私、歯が悪いから」と言い続けていくうちに、本当に何本もの歯を失ってしまうかもしれません。そうならないために、まずは専門医のいる歯科クリニックで、今の自分の歯の状態をチェックしてもらいましょう。
お話を伺ったのは…黒崎俊一先生
医療法人社団アーユス理事長 くろさき歯科院長。昭和62年3月日本大学歯学部卒業。平成4年3月日本大学大学院歯学部補綴専攻卒業・平成8年11月より医療法人社団アーユスくろさき歯科勤務。
<保有資格・所属団体>
日本補綴学会認定専門医/日本歯科審美学会/日本矯正学会/日本大学歯学部兼任講師/さいたま市歯科医師会/さいたま市南浦和小学校学校医
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